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新型コロナは沈静化しつつある!?【5月17日・国民全員のPCR検査は有害!?】 [新型コロナ]

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前回の記事の続きです。

池田信夫氏によると、経済学者を中心として「54兆円で国民全員にPCR検査しろ」という提言が出ているそうです。

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あまりにもバカバカしいので、面白い冗談かと思っていたのですが、どうやら関係者は真剣のようですね。

サイトを見たら、なんと私も知っている超有名な経済学者もメンバーになっていました。
まさかこの提言が実現することはないと思いますが、万が一本当のことになっても困るので、ごく簡単な解説を書いておきましょう。

はっきり言って、この提言は有害です!
何兆円、何十兆円も費やして大混乱を引き起こすことは間違いないですが、加えて(極論ですが)国民の命を危険にさらす可能性さえあります。

経済学者は数字に詳しい人が多いと信じていたのですが、あまりにもナイーブで実務を知らない人が多いのには驚きました。

池田信夫氏は、紳士的に「PCR検査で病気は治らない」と書いています。
しかし、くり返しますが、国民全員にPCR検査をするのは明らかに有害です!

すぐに考えつくのは、

・PCR検査でコロナは治らないので、54兆円はドブに捨てるようなもの
・多くのリソースがPCR検査に投入されるので、医療崩壊が起こる
・事務手続きが特別定額給付金(10万円)と同じぐらい混乱する

これらは間接的に引き起こされる問題です。

しかし、私は直接的な被害の方が大きいと考えます。
なぜなら、現状で国民全員にPCR検査をした場合には、ある程度「陽性」と「陰性」を取り違える可能性が否定できないからです。

取り急ぎ試算すると、

☆本当は「陽性」の人の30%が、検査では「陰性」と判定される

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☆検査で「陽性」と判定された人の50%は、本当は「陰性」である

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このまま「54兆円で国民全員にPCR検査」なんかしたら、大混乱するだけではなく、有害であることは火を見るより明らかでしょう!

具体的な数字で説明しましょう。

最近でこそ多くの人に知られるようになりましたが、PCR検査の精度(感度)は70%程度とされています。
つまり、本当に陽性である人の30%が陰性、つまり「偽陰性」と判定されるのです。
この30%の人は、当然自粛なんかしないでしょうから、あちこちでウイルスをばらまくことになります。
もっとも、空港検疫のデータを見ると、感染者のほとんどが無症状なので、現実にはあまり影響はないかもしれません。

さて、問題はこの次です。

「偽陰性」があるのですから、当然「偽陽性」もあります。
では、検査で陽性と判定された人の何%が本当は陰性なのでしょう。

この計算は単純にはいきませんが、推測することはできます。

現在、PCR検査で陽性とされている人は1万人ほどです。
少なすぎると思う人もあるので、気前よく10倍の10万人だと仮定します。

10万人というのは、1億2,500万人の日本人の約0.1%です。
では、この場合のPCR検査の精度(特異度)はどうなるでしょう?
実は、確たるデータはありません!
99%という人もいるし、99.9%という人、いや100%だという人もいます。
ただ、国民全員を検査するといった大量のデータの場合、人的ミスは防げないので「ゼロ」はあり得ません。
残念なことですが、これは保健所のデータに少なからず訂正があったことで明らかです。
#保健所と医療関係者の方は本当にお疲れ様でした。

仮に、中間値を取って99.9%としましょう。
この場合、本当は陰性なのだけれど、検査で陽性と判定される「疑陽性」は0.1%(!)で、本当の陽性の人数と同じか多くなります。

以上の結果を整理すると、

・本当は「陽性」の人の30%が、検査では「陰性」と判定される
・検査で「陽性」と判定された人の50%は、本当は「陰性」である

となります。実際には、PCR検査で陽性なのは1万人程度でしょうから、

☆検査で「陽性」と判定された人の90%は、本当は「陰性」である

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が、一番ありそうな結果となります。ということは、

54兆円と膨大な手間をかけて、陽性と判定された人の9割が、本当は陰性!?

発起人は実際に試算してみたのですかね?
少々信じられない結果になったので、誰かチェックをお願いします…[たらーっ(汗)]

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新型コロナは沈静化しつつある!?【5月14日・西浦氏が自説を全面撤回!?のおまけ】《追記あり》 [新型コロナ]

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前回の記事の続きです。

いくつか質問をいただいたので、代表的なものに回答しておきます。

1. 西浦氏は自説を撤回していないのではないか
2. 「42万人死亡」は何も対策しない場合で、実測値と違うのは当然

まず、最初の質問から行きます。

【1. 西浦氏は自説を撤回していないのではないか】

次は、42万人死亡を避けるために「8割削減」が必要だと主張していたときの様子です。
このときは、明確にR0=2.5としています。

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もし、自信があるなら、今回もR0=2.5で「42万人死亡」と堂々と主張すればいいはず。
あるいは、R0の数値を下げるなら、たとえばR0=1.7として、変更した理由を説明すればいいのです。
しかし、今回のRtの計算方法では、まったく具体的な数値を出しませんでした。
つまり、実質的に自説を撤回したということです。

さらに面白いのは、Rtの実測値のグラフです。

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出所:プレゼン資料

なんと、3月末からのCの部分は、ずっとRt<1なのです(青い曲線)。
もちろん、「42万人死亡説」を発表した4月3日もそうです。

これを、新型コロナクラスター対策専門家の4月15日のツイート「社会全体で8割の接触減が必要である理由」と比べてみます。

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どう見ても、新規感染者数のピーク=このグラフの①=実測値のグラフの3月27日、です。
素直に解釈すると、3月27日までは何の対策もなく、翌日から突如8割減になったということになります。

ご存じのとおり、西浦氏の「42万人死亡説」の公表は4月3日、緊急事態宣言は4月7日です。
その何日も前に、突然降って湧いたように8割の接触減が起きたことになります。
タイムマシンがあるわけもなし、こんなことを素直に信じる人はいないでしょう。
自説を撤回するつもりがないなら、あまりにもバカバカしいこんなミスを公表するはずもありません。

つまり、西浦氏の説明は、結果的に自説を撤回することも想定していたということです。
ただ、メンツもあるので、そのままストレートには言わなかったのでしょう。

本当のところはわかりませんが…。

ぶっちゃけた話、それでも「西浦氏は自説を撤回していない」と主張している人は、よっぽどデータ分析のセンスがないか、ポジショントークか、あるいはその両方だと思いますよ。[パンチ]

次に行きます。

2. 「42万人死亡」は何も対策しない場合で、実測値と違うのは当然

基本的に、上に書いたことの繰り返しです。
しつこいようですが、西浦氏の「42万人死亡説」の公表は4月3日、緊急事態宣言は4月7日です。
それまでは何も対策はしていないはずですが、実測値を見ると「3月28日から8割減になった」ことになります。
4月3日現在の死亡者は69人なので、どう頑張っても1万倍近くの42万人には届きそうもありません。

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出所:東洋経済 新型コロナウイルス国内感染の情報

現実のデータを見ると、まったくバカバカしい話と言うしかないのです。

ですから、たとえば、234uvwさんのツイート

このプレゼンはRtの数理的推定に関するレビュー。
・R0を撤回という説明は無い
・SIRモデルは使っていない
・数理的説明が目的で、自粛やクラスター対策の効果はレビューの対象外(Rtの変化点 3/25の外出自粛要請は記述)
・流入は取込済

は、的外れな指摘ということになります。
おそらく、ポジショントークなんでしょうね。
いくらなんでも、こんな単純なことがわからないはずがない…。

そもそも、「Rtの数理的推定」に具体的な数字がないのなら、結果が当たっていないことを告白しているようなものです。
シミュレーションのモデルだけ公表して、肝心の結果は計算してないので出せません、というのならしゃれにもなりません。

コンサルタント会社だったら、間違いなく倒産します。
科学ジャーナリストは超文系だから、こんな無茶苦茶な説明でも納得してしまう…というのも悪い冗談でしょう。

ということで、私は事実上の「謝罪会見」だと思っています。

ただ、現実と3桁も違う「42万人死亡説」について、彼ら彼女らが誰一人として質問しなかったことは、不可解な謎として残ります。
ひょっとして、事前のシナリオどおりだったのかも…。

最後になりますが、池田信夫さんの紹介のおかげで、本日のPVが3万を突破して過去最高を大幅に更新しました。
大変ありがとうございました。

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【お知らせ】
わかりやすくするため、初出の文章を微修正しました。
なお、ランキングは当然ながら1位、最終的なPVは39,643回でした。
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そうしたら、なんと翌日15日にも1位になりました。さすがにこれには驚きました。
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【2020.5.16 23:00追記】
驚いたことに、「1. 西浦氏は自説を撤回していないのではないか」には、彼はニコ生の講演でRtや42万人について話さなかったので、「全面撤回」と言えないのではないかと指摘がありました。全面撤回と書くのは「フェイク、デマ」だというのです。
いやぁ、実にいろんな人がいるものです。
こうなったら、誰にもわかるように露骨に書いておきましょう。[ちっ(怒った顔)]

数理モデルのプロが、厚労省の事務室で地上波テレビに出演し「Rt=2.5だと42万人死亡」と公言した。しかし、その後の講演では数字を隠し、グラフをこっそり「700人」に訂正して、この訂正について何も説明しなかった。それを事実上の「全面撤回」だと指摘したら、「フェイク、デマ」だと怒られた。

まさか、こんな慣習がある業界は一般的ではないでしょう。[たらーっ(汗)]

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新型コロナは沈静化しつつある!?【5月13日・西浦氏が自説を全面撤回!?】 [新型コロナ]

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前回の記事の続きです。

4月3日にクラスター対策班のメンバーの西浦氏から「42万人死亡説」が発表され、それを受けて4月7日に安倍首相が「緊急事態宣言」を発出し、5月7日に5月末まで延長されました。
しかし、新規感染者が激減したため、早くも明日5月14日には大多数の府県で解除される見込みです(ただし、東京・大阪・北海道などはそのままの見込み)。

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出所:東洋経済 新型コロナウイルス国内感染の状況

それは、現在の死亡者は約600人だからです。いくらなんでも3桁は違いすぎ!

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おっかしぃ~なぁと思っている人も少なくないでしょう。

西浦氏はいくつか致命的な計算ミスをしていますが、内容は中学生でもわかるような単純なものです。
そのうち誰もわかるようになるはず…と思っていたら、タイミングよくそういう機会が訪れました。
意外なことに、ほとんど気が付いている人がいないようなので、私自身の備忘録として簡単に解説しておきます。

それは、ニコニコ動画での西浦氏自身の説明です。

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出所:茂木耕作[気象Youtuber]さんのツイート
プレゼン資料

動画を見ればわかりますが、西浦氏は自説をほぼ全面撤回しています。
事実上の「謝罪会見」と言ってもいいのかも知れません。
とても正直なので、かなり好感度がアップしました。[わーい(嬉しい顔)]

具体的には、

1. R0=2.5ではない
2. 専門会家会議は3月の大量の感染した帰国者に気づかず被害が拡大
3. 死亡者数の予測はSIRモデルを使用
4. 自粛やクラスター対策は効果なし

ついでに、私のシミュレーションは妥当とのこと。[るんるん]

もちろん、他の人の手前、ストレートにそうは言えないでしょうから、私が代わりに解説しておきます。

では、順を追って説明します。

【1. R0=2.5ではない】

西浦氏の「42万人死亡説」は、R0=2.5が前提でした。

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出所:新型コロナクラスター対策専門家のツイッター

しかし、ニコ動の説明では、次のように「確率的ゆらぎ=>精密な推定が困難」として実質的に撤回しています。
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その後にも、R0=2.5という説明はありません。

【2. 専門会家会議は3月の大量の感染した帰国者に気づかず被害が拡大】

この点も、さらっとグラフで示しています。
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実際には、ウイルス=RNAの分析により、ヨーロッパから大量に感染者が流入したことは確実です。

【3. 死亡者数の予測はSIRモデルを使用】

厳密さを重視して積分で説明していますが、感染者が指数関数的に増加するということですから、次にあるように、要するにSIRモデルということです。
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【4. 自粛やクラスター対策は効果なし】

このグラフを見て、思わず爆笑してしまったのですが、さすがに説明はしていませんでしたね…。

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では、もう少しわかりやすく説明しましょう。

下の日本全体のグラフ(説明を追記しての再掲)を見てください。
青の曲線がRt(実効再生産数)となります。青の点線は値が1のラインを示しているので、実際の値がこの点線の下になるようにコントロールできればいいことになります。

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この数字が大幅に下がったのは、A:1月末の数日、B:2月下旬から3月上旬にかけて、そして C:3月末から現在までの3回です。

では、これらの時期に人との接触が何割も減ったのでしょうか?

志村けんさんが亡くなったのは3月29日で、小池都知事が都民に自粛をお願いしたのは3月25日です。
ですから、この数値が3月末から大きく下げたのは当然のことで、不思議でもなんでもありません。
ただし、東京都のデータでは、この時期には数値の低下の根拠になるほど自粛している様子(8割減)は見られないようです。

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出所:東京都 新型コロナウイルス感染症対策サイト

緊急事態宣言は4月7日ですが、Rtの数値はほとんど変化せず、影響があったかどうかは不明です。

次のグラフは、通りすがりさん紹介のApple社提供の移動傾向です。
本格的に自粛が始まったのは、やはり3月下旬からであることがわかります。

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もし、「自粛」でRtが下がったとするなら、Aの1月末と2月下旬の数値の低下は説明できません。また、この数値に4月7日の緊急事態宣言の影響が見られないこともおかしいのです。
つまり、現実のデータを見る限り、クラスター対策班や自粛の効果はなかったことになります。
※クラスター対策班発足の2月25日には、既にRtが1未満に低下

なお、3月のRtの低下は入国制限のためです。ここでは、池田信夫氏の解説を紹介します。

SIRモデルは閉鎖系なので、今回のように海外からの帰国者が感染源になる場合には使えない。少数の感染源から指数関数で増えたのではなく、感染源になる帰国者が増え、帰国制限された3月末で増加が止まった。緊急事態宣言は最初から無意味だった。

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出所:池田信夫氏のツイート

繰り返しになりますが、Rt(実効再生産数)が増大した時期には、①2月の第一波は中国(武漢)からの帰国者、②3月のより強力な第二波はヨーロッパからの帰国者であることは、ウイルスの種類の調査により明らかです。

《日本全体のグラフの再掲》
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これらの結果から判断できるのは、もともと新型コロナのRtは1より小さく、何もしなくとも感染は終息するということです。

【私のシミュレーションは妥当】

余談ですが、私のシミュレーションではRt=0.8で一定としたのですが、Cの3月下旬以降の数値はこのことを裏付けています。なお、2次感染は5日後としたのですが、西浦氏の実測値では4.8日。これは、実測値のRtが0.8よりやや小さいことと一致します。
なぜなら、2次感染までの期間が短くなると、より短期間で感染者が増えるため、Rtを小さくしないといけないからです。修正後のRtは0.75ほどなので、ほぼ実測値と一致します。

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参考までに、佐藤彰洋氏の推測だと、ヨーロッパからの帰国人感染者は2,500人。R=0.8だと、1人が5人(0.8+0.8^2+0.8^3…)に感染させることになるので、累計の感染者数は感染源2,500人+感染者2,500人×5=1万5,000人。現実の数字にぴったり一致します。逆説的な言い方になりますが、シンプルなSIRモデルは意外に当たるようです。

つまり、私のシミュレーションはまあ妥当だったということになります。[るんるん]

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これでハッピーエンドになるといいのですが。[手(チョキ)]

【お知らせ】
初出の画像・文章を微修正し、Entire Japanのグラフに入国制限日を追記しました。
補足説明はこちらです。

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新型コロナは沈静化しつつある!?【図解・中学生でもわかる西浦氏の致命的なミス】 [新型コロナ]

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前回の記事の続きです。

4月3日にクラスター対策班のメンバーの西浦氏から「42万人死亡説」が発表され、それを受けて安倍首相が「緊急事態宣言」を発出しました。
しかし、新規感染者は激減し、目に見えるほど患者が減り始めています。

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出所:東洋経済 新型コロナウイルス国内感染の状況

現実の死亡者は約600人。いくらなんでも3桁は違いすぎです!
あれぇ、おっかしぃ~なぁと思っている人も少なくないでしょう。

実は、西浦氏はいくつか致命的な計算ミスをしていますが、内容は中学生でもわかるような単純なものです。
そのうち誰もわかるようになるはずで、緊急事態宣言もまもなく撤回されると思っていました。
しかし、現実はどうやらそうなっていません。

そこで、一見すると遠回りのようですが、「中学生でもわかる西浦氏の計算ミス」を図解で説明してみることにしました。
意外とこっちの方が早道なのかもしれません。
まぁ、そのうち誰かが、ず~っとわかりやすく説明することでしょう。

さて、西浦氏の計算ミスは少なくないのですが、致命的なものは次の2点に絞られます。

【致命的なミス1】

×全員が感染する可能性がある
現実の感染者は全体の2%
→違いは50倍!(説明はこちら

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【致命的なミス2】

×1人の感染者は2.5人に感染させる
1人の感染者は0.8人に感染させる
→感染は自然に終息する!(説明はこちら

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まあ、上の2つのイラストを見ればわかかるとおりで、絶対に42万人が死亡するはずはありません!
これが現実に起こったことです。

【想定外のミス】

余談ですが、最初は誰も気が付かなかった想定外のミスもあります。
今回の最大の感染源は、3月にヨーロッパからの帰国者による第2波です。最終的な入国制限日である3月下旬までに、推定2000~3000人の感染者が羽田、成田、関空を中心として帰国しました。
SIRモデルは「閉鎖系」を想定しているので、外部から感染者が大量に流入するという「開放系」では修正しないと使えません。
説明はこちら

結局、不適切なモデルをそのままに使ったのでトンデモな結果になった、という…。
当然といえは当然のことが起こったのです。

【ミスの理由】

では、なぜ西浦氏はここまで間違えたのでしょうか?
それは、彼の執筆した論文を読めばわかります。
とりあえず、オンラインで簡単に入手できるものを2つ見つけました。

1. 西浦博・稲葉寿 感染症流行の予測:感染症数理モデルにおける定量的課題
2. Hiroshi Nishimura Early Detection of Nosocomial Outbreaks Caused by Rare Pathogens: A Case Study Employing Score Prediction Interval

1ですが、こちらは致命的なミス1にあるように、感染可能者の比率S=1で、「全員が感染する可能性がある」となっています。

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2は英語なので、ちょっと読むのがおっくうかもしれません。
しかし、統計がわかる人なら、教科書に書いてあるようなことをわざわざ論文に書くなよ!と苦笑してしまうことでしょう。

少々専門的ですが、典型的なのは、

数が非常に少ないデータセットに正規分布を適用するのは厳密には適切ではありません。
it is strictly not appropriate to apply normal distribution to the datasets with very small counts.

です。

厳密もなにも、適切でないに決まっているじゃん!
過去に適切ではないことをやらかした人がいるんでしょうかね…。制限速度が60キロの道路で、警察に60キロ以上出していいかと聞くようなものです(苦笑)。
実際にやっている人がいるとしても、それをそのまま正直に論文に書く人はいないでしょう…。

ということで、感染症の数理モデルは日が当たらない分野のようです。
率直な感想としては、全体的に相当レベルが低いとしか言いようがありません。
いまどき、1927年のモデルを何も修正せずに使っている業界ってあるのかな?

専門家会議でこんな凡ミスをチェックできなかったのは、医師は統計が苦手ということもあるようです。
理由については、医学部で数学を勉強しないのが諸悪の根源だという、アゴラの八幡氏の記事をお読みください。

まさに、泰山雷同してなんとやら…という感じですね。[バッド(下向き矢印)]

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新型コロナは沈静化しつつある!?【5月9日・残された謎】 [新型コロナ]

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前回の記事の続きです。

幸いなことに、池田信夫氏などによる「3月末ピークアウト説」の正しさが証明されつつあります。
新規感染者は激減し、目に見えるほど患者が減り始めました。

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出所:東洋経済 新型コロナウイルス国内感染の状況

政府は出口戦略を5月31日まで延長しましたが、実質的には問題の少ない県からどんどん解除されつつあります。

SmartNewsによると、5月8日の感染者は89人でした。
NHKの夜7時のトップニュースで、毎日報告してた人数を言わなくなったのが象徴的です。
ちなみに、トップニュースは給付金、つまり出口戦略についてでした。
連休中に完全に「空気」が変わったようです。

さて、記憶が薄れないうちに、残された謎について書いておきます。

【謎4】抗体を持っている割合は?

本当は、5月1日に抗体検査の結果が公開されるはずでした。
しかし、5月9日 11:00現在までには何の発表もないようです。
もっとも、推測自体は割と簡単です。

結果ですが、抗体を持っている人が230万人で人口比2%、致死率は0.03%となりました。
オーソドックスなSIRモデルでは、全員が感染するという前提になっているので、これだけ違うと予測が外れるのは当然というべきでしょう。

余談ですが、ヨーロッパからの第2波による被害は、3月末からだとすると全体の約9割です。
早めに入国制限をして、感染を第1波だけに抑え込めれば、被害はほぼ1/10(感染者1000人、死者60人)だったことになります。

備忘録として計算結果を書いておきます。

【計算結果】

現在公表されているのは、東京都神戸市の結果です。

抗体を持っている人数は、

《東京都》
・事例1…111人中9人が陽性(8.1%)
・事例2…202人中12人が陽性(5.9%)
○加重平均だと313人中22人が陽性(7.0%)
→人口1395万人×7.0%=97.7万人

《神戸市》
・事例…1000人中33人が陽性(3.3%)
○性別と年齢を補正後…2.7%が陽性
→人口152万人×2.7%=4.1万人

感染者との割合は、

《東京都》
→抗体保持者97.7万人÷感染者4800人=200倍

《神戸市》
→抗体保持者4.1万人÷感染者270人=150倍

となります。

東京都と神戸市の傾向はぼ同じなので、再現性があるようです。
ただ、東京都の事例は、医療関係者が含まれているので高めに出ているかもしれません。
そこで、神戸市の比率150倍を採用し、日本全体の感染者を推計してみると、

○抗体を持っている人
→感染者1万5000人×150倍=230万人

○人口比と致死率
→人口比230万人÷1億2600万人=2%
→致死率600人÷230万人=0.03%

【参考】

抗体を持っている人が230万人で人口比2%、致死率は0.03%なら、発表すると相当な騒ぎになりそう…。
そのほかに、現場が混乱するという懸念もあったようです。
確かに、PCR検査騒ぎの二の舞にもなりかねませんね。

日経メディカル 2020.5.2
現状の新型コロナ抗体検査は社会混乱招くだけ

R(実効再生産数)は、実データに基づく推定値は0.8です。
つまり、感染は何もしなくとも自然に終息することになります。
もっとも、1人の感染者からは5人の2次感染者が発生してしまうのですが(0.8+0.8×0.8…)。

【謎5】専門家会議は役割を果たしたのか?

残念ですが、本来の「医学的な見地から助言等を行う」という役割を果たしたとは言えません。

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出所:新型コロナクラスター対策専門家のツイッター

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出所:時事通信 4月3日付
新型コロナ、厳格な外出制限を 接触8割減で急速に減少―北大教授が試算

何もしないと「42万人が死亡する」という西浦氏の予測は論外として、データで検証してみると、「自粛」「8割削減」「クラスター対策」は、どれも効果はなかったようです。

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出所:ちきりんさんのつぶやき

結果論になりますが、早めに入国制限をして、感染を第1波だけに抑え込めれば、被害はほぼ1/10(感染者1000人、死者60人)になり、これが最も効果的である可能性が高いことになりました。

ふと思い出して、池田氏の「失敗の法則」を読み直したのですが、福島第一原発、豊洲市場…と、同じパターンを繰り返しているのは残念です。

失敗の法則 日本人はなぜ同じ間違いを繰り返すのか

失敗の法則 日本人はなぜ同じ間違いを繰り返すのか

  • 作者: 池田 信夫
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2017/07/14
  • メディア: 単行本

「将軍たちは一つ前の戦争を戦う」、つまり昔の感染症で有効だった数理モデルや対策は、残念なことに役に立たなかったことになります。

専門家なら、データを緻密に分析・検証し、斬新で効果的な対策を立て、すぐに実行できる能力があるはずなのですが、今回もそういったことは起こりませんでした。
驚異的に少ない日本の死亡者は、BCG接種の効果なのではないか言われていますが、国内の専門家が検証する動きは見られません。これは決して例外ではなく、糖質制限でも同じことが起きています(余談ですが、血液型と性格も同じ)。

また、多くの人が気づいているように、厚労省の統計は、ネットやマスコミの1日遅れでした。
生データが一番早く入手できるのは、言うまでもなく国などの行政機関なはずですが、なぜ遅かったのでしょう?
それは、保健所の生データと厚労省とのやりとりが、ネットではなく電話やFAXだったからです!
いまどき…と思うんですが、現場からの要望で状況が改善されることはありませんでした(予算要求が削られた?)。

ラッキーなことに、「外圧」で、具体的には現場の医師のツイッター→河野防衛大臣→予算化というプロセスをたどり、" target="_blank">あっという間に10億円情報システムが開発されることになりました。

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出所:ツイッター

しかし、よかったと喜ぶ人ばかりではなく、私のようにがっかりした人も多いと思います。

以上のことは、日本の多くの組織において、過去の成功体験を自己否定することが、極めて難しいことを示しています。
こういう厳しい現実を見せつけられると、本当になんとかならないかと悩んでしまいますね。

とはいっても、先が見えてきたことは確かなので、気を取り直して頑張っていきますか。[るんるん]

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新型コロナは沈静化しつつある!?【5月6日・西浦氏の致命的なミス・おまけ】 [新型コロナ]

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5月2日5月5日の記事のおまけです。

厚労省クラスター対策班のメンバーである西浦博氏は、4月3日に突如「42万人死亡説」を発表して、日本国内に大きな驚きと反響を巻き起こしました。
このまま何の対策も取らなければ、日本国内の死亡者数は最大42万人にも達するというのです。

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出所:新型コロナクラスター対策専門家のツイッター

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出所:時事通信 4月3日付
新型コロナ、厳格な外出制限を 接触8割減で急速に減少―北大教授が試算

そして、安倍首相は彼の提言に耳を傾け、4月7日に「非常事態宣言」を発出しました。

しかし、現実の5月5日までの死亡者は、累計で600人程度に過ぎません。
いくら強力な対策を取ったとしても、まさか42万人が600人になるはずがありません! なにしろ、数字が3桁も違うのです。

不可解なことに、彼が使ったバックデータと数理モデルは未だに非公開となっています。何の根拠もなく一方的に「42万人死亡説」を流されても困りますよね。
ただ、グラフと数式で判断する限り、彼が使ったのは一般的なSIRモデルと思われます。

池田信夫氏は、100年前のSIRモデル自体がおかしいのではないか疑問を呈しています。

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出所:池田信夫氏のツイート

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出所:池田信夫氏のツイート

面白そうな話なので、簡単な論考を書いてみました。ご興味とお時間のある方はどうぞ。

ます、SIRモデルについてさらっとシンプルに説明します。このモデルは、感染者数が指数関数的に増加するという数学的な理論がベースです。

現在の定説では、新型コロナは感染者1人が2.5人にうつすとされています。
この理論によると、時間とともに感染者数は1人→2.5人→2.5×2.5=6.25人…と指数関数的に増大していきます。
つまり、たった1人の感染者が、あっという間に何千人、そして何万人にもふくれあがり、重症者や死亡者が続出することになります。
これが、新型コロナウイルスが恐れられている最大の理由です。

・池田信夫氏による解説はこちら
・もう少し理論的で厳密な解説はこちら
・シミュレーションをしたいかたはこちら

ただ、現実の数字とここまで乖離しているのなら、理論が間違っているに決まっています!

そこで、私自身の備忘録として、その理由を書いておくことにします。

残念ながら、ここからの解説は高校の数Ⅲ程度の知識が必要となります。
お好みでない方は、この部分は読み飛ばして次の結論に進んでください。

《解説開始》

SIRモデルの大前提は

1. 「連続かつ微分可能」な確率密度関数
2. 感染の感受性は人や環境によって変わらないという「斉一性」
3. 感染者が外部と流入・流出しないという「閉鎖系」

です。

1.ですが、現実の離散的なデータを近似しているため、感染者数が極端に減った場合には、モデルの計算値から大きく外れる可能性があります。真面目にやるなら、量子力学のように、離散的なデータを扱えるように改良する必要がありますが、私はギブアップです…[たらーっ(汗)]

2.については、誰もが同じ条件かつ一定の確率で感染するはずはありません。新型コロナは、性別、年齢、血液型などで感染率が違うことは、実証データで確認されているからです。

3.ですが、今回のように、感染源が大量の帰国者と推定されるケースでは、モデルを修正しないと使えません。ただし、入国制限で外部からの流入をシャットアウトした後なら成り立つはずです。

この中で、一番影響がありそうなのは2.です。

《解説終了》

結論としては、やはり2.の斉一性が問題の核心のようです。

そうしたら、あっさり解答が見つかりました。新型コロナは全員には感染しないらしいのです。次は専門家会議の尾身茂副座長のインタビュー記事からの抜粋です。

インフルエンザとの違い「クラスター」とは

ここに感染した人が5人いたとします。このウイルスは不思議なことに、5人全員感染したんだけれど、そのうち4人は、濃厚接触の方がいても感染させないんです。人に感染させるのは、5人のうちの1人だけ。これがインフルエンザの場合は、5人が感染すると、それぞれが1人とか、2人いかないくらいの人に感染させるんですけど、今回のコロナは、5人のうち4人は、自分は感染しても近くにいる人にうつさない。

ただ、そのうちの1人が例えば飲み会とか、ライブハウスなど、私どもが挙げた3つの条件、腕が届く距離に長くいたり、複数の人がいるところ、換気の悪い密閉空間に行くと、そこでいわゆる集団感染、つまり、クラスター感染が起きます。そして、またそこで感染した5人のうちの1人が次にまたどこかに行って集団感染を起こす――こういうクラスター(集団)を介して感染が広がるという特徴があります。

インフルエンザの場合は感染した1人ひとりが少しずつ広げるんですけど、コロナウイルスの場合は他の人にうつすのは5人のうち1人だけ。でも、その人が1人どころか何人もの人に広げてしまう。そういう理由があるので、対策の要諦は、このクラスター感染の連鎖をどこで断ち切るかということだと思います。

この文章は「へ~、そうなんだ」と軽く読み飛ばしていたのですが、実は極めて重要と思われる情報が含まれています。

尾身氏によると、インフルエンザは誰もが同じ確率で感染する可能性がある、つまりSIRモデルが成り立つ前提が(ある程度)満たされていて、実証データの裏付けもあります。
ところが、新型コロナの感染者が他の人にうつすのは5人のうち1人だけだそうです(=多くの人に感染させる「スーパースプレッダー」が存在する)。つまりSIRモデルが成り立つ前提は必ずしも満たされていません。

奇妙なことに、スーパースプレッダーの存在は、統計的に示されているだけで、その人が普通の人の何倍何十倍のウイルスをまき散らすことが臨床的に実証されているわけではないようです。おかしいですよね?

従来の発想を逆転すれば、これらの事実は理論的に矛盾なく説明できます。

新型コロナは、性別、年齢、血液型などで感染率が違うことが実証データで確認されています。それなら、確率的にたまたま感染しやすい人のグループや環境ができることもあるはずで、そこに「感染者」がいたとしたら、その人は確実に「スーパースプレッダー」になるでしょう。
現に、高齢者が集中する病院や施設での大量感染がニュースになっていますが、これがスーパースプレッダーのせいだという人はいないでしょう。

抽象的な表現だとわかりにくいかもしれないので、たとえ話で説明します。

仮に、ビーカーに水を入れて、一滴のインクをたらしたとします。もちろん、水が人間でインクが新型コロナです。SIRモデルは、このインクはビーカー内の水の全体に均一に拡散するというモデルです。しかし、実際には、そういう状態になるのには非常に時間がかかります。また、水とインクならいいのですが、水と油なら、いくらビーカーをかき回してもそんなことは起きません。この場合は、SIRモデルは成り立ちません。

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出所:ハリオサイエンスのツイート

ブラタモリを見ている人なら、土地の浸食を考えてみてください。土地が人間で風雨が新型コロナです。土地が均一に浸食されるなんてことは極めて例外で、最初にできた小さな凸凹が時間ともに拡大していきます。固い岩盤は、時間がたってもなかなか浸食されません。

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出所:Wikipedia

では、現実には、今回の新型コロナで「感染の感受性は人や環境によって変わらない」という条件は満たされているのでしょうか? そんなことは考えるまでもなく明らかでしょう。単純なSIRモデルが成り立つはずはありません。

ブラタモリで楽しげに地層を観察するタモリよろしく、現実には「固い岩盤=ウイルスに感染しない人」が一定の割合で存在するはずです。だから、最終的に全員が感染するとか、抗体ができるとか、集団免疫が成立するなんてことはないのでしょう。

こう考えると、新型コロナの感染者数が指数関数的に拡大して、最終的には人口の60%が感染する…といったことは、どう考えても起こりようがないことになります。そしてまた、これは実証データとも一致します。

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出所:新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言(2020年5月1日)

繰り返しになりますが、新型コロナは、性別、年齢、血液型などで感染率が違うことは、実証データで確認済です。その感染に対する「感受性」が人によって極端に違うと仮定すると、現実のデータがうまく説明できます。現象をシミュレーションやデータでうまく検証できればいいのですが。

さて、ここからは、本当に余談です。

聞くところによると、西浦氏は「日本に1人しかいない疫学の数理モデルの専門家」だそうです。海外経験も長いので、英語も堪能なようですし、有名なオープンアクセスジャーナルであるBMJのEditor in Chiefも務めています。いやぁ、本当にすごい。

ただ、それでも専門家会議のグラフの数値が二転三転するのは、どうしても腑に落ちません。→下のグラフの単位に注目してください。

【4月3日のグラフ】

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出所:時事通信 4月3日付
新型コロナ、厳格な外出制限を 接触8割減で急速に減少―北大教授が試算

しかし、4月22日の提言では、ピークがいつのまにか6000人→500人に変更されています。どうしたんでしょうか?

【4月22日のグラフ】

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さらに、上の4月22日のグラフには致命的な間違いがあります。
数値を読み取ると、対策なしだと5日で感染者が5倍になるとあります。緊急事態宣言は4/7→効果が出るのは2週間後の4/21。その間は対策なしだから、4/21の感染者は4/7の300人の100倍で「3万人」にならないとおかしい。
しかし、実際の数は300人だから、なんと1/100。
これはひどい!

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また、西浦氏の採用している(らしい?)SIRモデルでシミュレーションしてみましたが、いくらパラメーターをいじっても、現実のデータとは合いません。どんなパラメーターを使ったんでしょうか?

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それだけではなく、根拠となるバックデータと数理モデルも、4月3日の「42万人死亡説」の発表から1ヶ月たって現在でも非公表です。

と思ったら、5月1日の提言では、なんとグラフから具体的な数値が消滅してしまいました。いくらなんでもこれははひどい!

【5月1日のグラフ】

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【5月4日】

さらに驚いたのは、最新の5月4日の提言からは、なんとグラフ自体が消滅! こんなことは言いたくないのですが、もう無茶苦茶です。

あまりにも不思議だったので、ふと思いついて単独著者の論文を読んでみました。なるほど、いままでの状況が非常によく理解出来たので報告しておきます。お暇な方は、ぜひ一読されることをおすすめします。[たらーっ(汗)]

最後になりますが、昨日5月5日の拙ブログのアクセスランキングは、なんとSS-BLOGの1位になりました。池田信夫氏のツイートでのご紹介に深く感謝いたします。いつもありがとうございます。

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新型コロナは沈静化しつつある!?【5月5日・西浦氏の致命的なミス・リターンズ】《再追あり》 [新型コロナ]

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前々回「5月2日・西浦氏の致命的なミス」の続報です。

5/1の専門家会議の提言(資料)を読み直したところ、さらに致命的なミス(らしきもの?)を発見しました。

資料にある現実のデータからは「クラスター対策」や「8割削減」、そして「緊急事態宣言」の効果は読み取れないのです!

この点は、多くの人が指摘しているとおり、5/4の提言があまりにも抽象的で、あれほど強調していた「8割削減」はどうなったのという印象とも一致します。

そして、より大きな疑問は、

1. 西浦氏が4/3に唐突に「8割削減」を発表したときには、既にこれらの事実(緊急事態宣言は4/7なので除く)を知っていたのではないか
2. 西浦氏の理論(SIRモデル)は現実のデータと一致しないため、いつまでも根拠を公開しないのではないか
3. 西浦氏の4/3の説明では、そういう疑問が生じないように、あえて微分方程式とグラフを使い、実証データは使わなかったのではないか

といったことです。

いうまでもありませんが、私のような素人が公表データを分析してわかるようなことは、西浦氏のような専門家が生データを分析すれば、とっくの昔にわかっていたはずなので。

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出所:新型コロナクラスター対策専門家のツイッター

これらの発見はかなり衝撃的でした。
下手な推理小説を読むより興奮します。
もちろん、本当は私も事実ではないと信じたいのですが…。
狐につままれたような感じとは、まさにこのことです。

前置きはこのぐらいにして、順を追って説明することにします。

【謎3】R(実効再生産数)はいくらか?リターンズ

R(実効再生産数)は意外と難しいらしく、何人かから質問を受けました。
そこで、改めて説明しておきます。

細かいことは全部省略して、シンプルかつ具体的に言いましょう。
それはこういうことです。

仮に私が新型コロナウイルスに感染しているとします。
運よくすぐに治ればいいのですが、たいていは完全に回復する前に接触した誰かにうつしてしまいます。

では、平均すると、感染者1人は何人ぐらいにうつしているのでしょう?
多くの研究がされていますが、現在の定説では2.5人とされています。
この「1人が他の人にうつす倍率」、つまり2.5人÷1人=2.5がR(実効再生産数)と呼ばれる数字です。

1人が2.5人にうつすと、時間とともに1人→2.5人→2.5×2.5=6.25人…と指数関数的に感染者は増大していきます。
つまり、たった1人の感染者が、あっという間に何千人、そして何十万人にもふくれあがり、重症者や死亡者が続出することになります。
これが、新型コロナウイルスが恐れられている最大の理由です。

本家本元の新型コロナクラスター対策専門家のツイッターで再確認してみましょう。
ここでは、R(実効再生産数)はRtと表記されています。
それによると、

ある時点で、1人の感染者が全感染期間に新たに感染させる平均の人数のことを実効再生産数と言い、対策の実行状況により変動します。
実効再生産数が低下する要因に、人々が病原体に免疫を持つこと、人々の行動(手洗いやマスクなどの感染予防、接触を減らすなど)の変容があげられます。

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そこで、このRt(実効再生産数)を「8割削減」すれば、新型コロナウイルスの感染が終息するというのが専門家会議の提言です。
人との接触を8割減らせば(=2割にすれば)、1人が0.5人(=2.5人×0.2)にしかうつしません。
そうなると、感染者は1人→0.5人→0.5×0.5=0.25人…と指数関数的に減少して最終的には終息します。
細かいことを言うと、R(実効再生産数)が1より小さければ必ず終息するのですが、期間は長くかかることになります。

この本来2.5であるR(実効再生産数)を「1より小さくする」というのが大きなポイントです。

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出所:人との接触を8割減らす、10のポイント(厚労省)

ここまでは理解してもらえたでしょうか。

では、いよいよ本題に移ります。

新型コロナの感染者は、平均すると1人が2.5人にうつすということですが、現実の数字はどうでしょう。

次が5/1の専門会議でのグラフです(日付は感染日ベース)。
青の曲線がこのR(実効再生産数)となります。青の点線は値が1のラインを示しているので、実際の値がこの点線の下になるようにコントロールできればいいことになります。

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出所:新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言(2020年5月1日)

前述のとおり、理論的な最大値は2.5ですが、なぜか時期によって上がったり下がったりしています。
最近は8割削減の効果が出たのか、全国では「1より小さい0.7」にまで下がりました。
やっと新型コロナの終息が視界に入ってきたようなので、日本人全員がもう少し頑張ればなんとかなりそうです。
私も、ついさっきまでそう思っていました。

が、このグラフには見事な“トリック”が隠されているのです!

それでは、目を皿のようにして、もう一度よくこの専門家会議のグラフを見ていきましょう。

感染者1人が平均して2.5人にうつすという性質は、新型コロナウイルス固有の特性なので変わりようがありません。
ということは、このR(実効再生産数)が変わったなら、人との接触が○割変わったからだ※ということになります。

※仮に、人との接触が変わらなくとも、この数値が大きく変わるなら、一律に「8割削減」は意味がありませんが、専門家会議はそんなことは言っていません。 なぜなのかは、たとえば池田信夫氏のブログを参照してください。

グラフを見ると、この数字が2.5から大幅に下がったのは、A:1月末の数日、B:2月下旬から3月上旬にかけて、そして C:3月末から現在までの3回です。

では、これらの時期に人との接触が何割も減ったのでしょうか?

志村けんさんが亡くなったのは3/29で、小池都知事が都民に自粛をお願いしたのは3/25です。
ですから、この数値が3月末から大きく下げたのは当然のことで、不思議でもなんでもありません。
ただし、東京都のデータでは、この時期には数値の低下の根拠になるほど自粛している様子(8割減)は見られないようです。

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出所:東京都 新型コロナウイルス感染症対策サイト

不思議なことに、Aの1月末の数日とBの2月下旬から3月上旬にかけても、Cの3月末からと同じぐらい数値は低下しています。

《グラフを再掲》
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出所:新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言(2020年5月1日)

では、この時期にも人との接触が何割も減ったのでしょうか?

私も含め、はてな?と考え込む人がほとんどではないでしょうか。

もちろん、この時期には誰も自粛なんてしてないのです!
それは、東京都のデータからも裏付けられています。

では、なぜこの時期に数値がすとんと下がったのでしょう?
さらに奇妙なことに、この時期を過ぎると、急激に数値は上昇して行きます。

ひょっとして、1人が2.5人にうつすのではなく、数値が勝手に上がったり下がったりするのでしょうか?
いや、それでは現在の疫学理論=西浦博氏の理論(SIRモデル)、ひいては専門家会議の科学的根拠を全否定することにつながります。
でも、やっぱりおかしいですよね?

いえ、実は全然おかしくないのです!!

ここでは、池田信夫氏の解説を紹介します。

SIRモデルは閉鎖系なので、今回のように海外からの帰国者が感染源になる場合には使えない。少数の感染源から指数関数で増えたのではなく、感染源になる帰国者が増え、帰国制限された3月末で増加が止まった。緊急事態宣言は最初から無意味だった。

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出所:池田信夫氏のツイート

R(実効再生産数)が増大した時期には、①2月の第一波は中国(武漢)からの帰国者、②3月のより強力な第二波はヨーロッパからの帰国者であることは、ウイルスの種類の調査により明らかです。→5/2の記事を参照

このように、西浦博氏の理論(SIRモデル)には大きな疑問符が付きます。

細かいことを言うと、第一波の前の1月にも、⓪「第ゼロ波」とも呼ぶべき数値の上昇が見られます。これは中国人観光客によるものなのかもしれません。

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出所:新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言(2020年4月1日)

不思議なことに、Cの3月末以外は特に対策もされてなさそうなのに、Aの1月末とBの2月中旬もR(実効再生産数)は1未満にまで下がっていきます。

いままでは、数値が下がったのは、クラスター対策班の功績だと思われていました。
しかし、現実にクラスター対策班が設置されたのは2/25です。
このため、Aの1月末の減少、Bの2月中旬からの減少※とは直接の関係はなさそうです。
※2/25時点では既に1未満に低下

Cの3月末の減少は、感染者が多すぎてクラスター対策がほとんど不可能だったので、これまた関係ありそうもありません。→5/4の記事を参照
下のグラフの赤の部分がクラスター対策が不可能な「孤発例」で、3月下旬には実質的に対応が不可能になったことがわかります。

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出所:専門家会議 新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言(5月1日)

ですので、クラスター対策の成果を現実の数値から確認することはできないようです。

繰り返しになりますが、志村けんさんが亡くなったのは3/29で、小池都知事が都民に自粛をお願いしたのは3/25ですから、数値が下がったのはこのためかもしれません。しかし、東京都のデータでは、明確な根拠になるほど自粛している様子(8割減)は見られません。

なお、緊急事態宣言は4/7ですが、数値はほとんど変化せず、影響があったかどうかは不明です。

以上の現実のデータを分析して得られる結論は、新型コロナのR(実効再生産数)は元々1未満で、何もしなくとも終息する可能性が高いということです。

そういえば、2009年のSARSのときも、大騒ぎになった割には日本では大した被害はなかったそうです。これも、元々のR(実効再生産数)が1未満だったすると、現実のデータを矛盾なく説明できます。

余談ですが、今回の感染源のほとんどは、欧米からの帰国者だっと思われます。
だとすると、感染を防ぐのに最も効果的なのは入国制限です。
あくまで結果論ですが、欧米で感染が爆発する気配があったときに、さっさと入国を制限すれば被害は何分の1だった…のかもしれません。
帰国者の感染者は推定2000人~3000人なので、R=0.8だとすると、単純計算でこの5倍の感染者が出ることになります。[もうやだ~(悲しい顔)]→追記を参照

月並みな言葉ですが、まさに狐につままれたような感じです。
本当なんでしょうか?
また、5/4の専門家会議の提言が抽象的なのも、西浦氏が彼が使ったモデルを一向に公開しようとしないのにも、それなりの理由があることになります。
本当に本当なんでしょうか?[たらーっ(汗)]

最後になりますが、池田信夫氏にツイートされたのが大きな理由だと思いますが、お陰様で拙ブログの5/3のランキングが4位にまで上昇しました。ありがとうございます。

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参考までに、ページビューは3,967回でした。

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【お知らせ】
初出の誤字・脱字を修正し、より理解しやすくするために表現を微修正しました。

【追記 2020.5.5 14:10】→5/2の記事の追記を抜粋
池田信夫さんから質問をいただいた(大変恐縮です)ので、私のリプを書いておきます。
彼の指摘するとおり、私もR=0.8だと感染が拡大しないと思っていましたが、実際に計算すると違うようです。

[池田氏]わからないのは(佐藤彰洋氏が予想したように)3月に帰国した人から感染が広がるはずなのに、3月末でピークアウトしたことです。日本人のRが一貫して0.8というのは低すぎる。これだともともと感染はまったく拡大しなかったはず。

[私]佐藤彰洋氏の推測だと、ヨーロッパからの帰国人感染者は2,500人。R=0.8だと、1人が5人(0.8+0.8^2+0.8^3…)に感染させることになるので、累計の感染者数は感染源2,500人+感染者2,500人×5=1万5,000人。現実の数字にぴったり一致します。あまりにも話がうますぎるので、正直不安です。[たらーっ(汗)]


【追記 2020.5.6 13:20】
コメントいただいた通りすがりさん紹介のApple社提供の移動傾向です。
本格的に自粛が始まったのは、3月下旬からであることがわかります。
ありがとうございました。

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新型コロナは沈静化しつつある!?【5月4日・クラスター対策は実行不可能だった?】《追記あり》 [新型コロナ]

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前回の記事の補足です。

クラスター対策は有効ですが、人材が不足している現状では、残念ながら実行不可能です。※2020.5.4 16:30追記

現在、政府の新型コロナ対策の中枢を担っているのは専門家会議です。
そして、中でも超有名な西浦博氏がメンバーの「クラスター対策班」でしょう。

では、改めて質問しますが、クラスターって何でしょう?
正直に白状すると、私もこの記事を書くまでは正確に理解していませんでした…。[たらーっ(汗)]

英語のクラスターは、日本語に直訳すると「集団」です。
平たく言うと、集団感染を防ぐことが最も効果的な予防策ということになります。
この集団感染を防ぐために、「3密」(密閉空間、密集場所、密接場面)を控えることや、「ソーシャルディスタンス」を守ることが求められています。
3密というキーワードは覚えやすいし、自分が何をすればいいのか直感的にわかるので、やはりネーミングは大事ですよね。

ですが…この解説は半分正しく、半分間違っているのです。

クラスターの厚生省の解説はこちらです。
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ただ、この図は正確なのですが、イマイチわかりにくいです。

そこで、もう少し簡単にわかる説明がないのか探してみました。
私のおすすめは、専門家会議の尾身茂副座長のインタビュー記事です。

なぜ今回のコロナの新型肺炎で「クラスター」という言葉を使っているかというと、こういうことです。

インフルエンザとの違い「クラスター」とは

ここに感染した人が5人いたとします。このウイルスは不思議なことに、5人全員感染したんだけれど、そのうち4人は、濃厚接触の方がいても感染させないんです。人に感染させるのは、5人のうちの1人だけ。これがインフルエンザの場合は、5人が感染すると、それぞれが1人とか、2人いかないくらいの人に感染させるんですけど、今回のコロナは、5人のうち4人は、自分は感染しても近くにいる人にうつさない。

ただ、そのうちの1人が例えば飲み会とか、ライブハウスなど、私どもが挙げた3つの条件、腕が届く距離に長くいたり、複数の人がいるところ、換気の悪い密閉空間に行くと、そこでいわゆる集団感染、つまり、クラスター感染が起きます。そして、またそこで感染した5人のうちの1人が次にまたどこかに行って集団感染を起こす――こういうクラスター(集団)を介して感染が広がるという特徴があります。

インフルエンザの場合は感染した1人ひとりが少しずつ広げるんですけど、コロナウイルスの場合は他の人にうつすのは5人のうち1人だけ。でも、その人が1人どころか何人もの人に広げてしまう。そういう理由があるので、対策の要諦は、このクラスター感染の連鎖をどこで断ち切るかということだと思います。

新型コロナもインフルエンザも風邪の一種ですが、今回は「集団感染の予防=クラスター対策」が極めて効果的ということになります。
なるほど、「8割削減」が必要なわけで、とても腑に落ちました。

ただ、この記事には少々気になる点もあります。
現実に、(相当複雑と思われる)クラスター対策を実行するのは誰かということです。
私のような素人では絶対に無理ですが、おそらく経験を積んだ専門家じゃないと無理でしょう…。
マニュアルによる対応も期待できそうもありませんし、かといって即戦力となる人材も非常に限られるのではないかと思われます。

次の3/20の朝日新聞の記事がわかりやすいです。

クラスター対策、日本に足りない指揮官 専門家会議指摘
厚生労働省は先月、クラスター対策班を組織したが、専門家会議は「対策を指揮できる専門家が少ない」と指摘。調査を担う各地の保健所では通常の業務に加えて、感染が疑われる人の電話対応や、感染拡大に備えた医療機関の受け入れ態勢の整備にも追われる。「クラスター対策に人員を割けない」とし、人材確保や保健所への予算投入などを国に要望した。

もっとも、感染が小規模に収まっているうちなら、現在の体制でも十分対応できるかもしれません。
現実に、中国からの第一波では、この作戦は大成功を収め、感染は終息に向かいました。

これで、ちきりんさんのつぶやきのように

「今がまさに正念場!」 「ここさえ乗り切れば!」 「いま我慢することが将来につながる!」 的なことを、何週間も何ヶ月も言い続けてたら、普通に信頼されなくなるよね。 政府も専門家もNHKも学校の先生も。

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なぜ、専門家がそう言わざるえなかったのか、とてもよくわかります。

本当はこれでハッピーエンドになるはずでした。

しかし、イヤなことですが、仮に感染が大規模に爆発したらどうなるでしょう?
考えるまでもなく、人材が最大のボトルネックとなるので、クラスター対策はほとんど不可能です。

残念なことに、3月にヨーロッパからの強力な第二波が襲来し、悪夢が現実のものとなりました。

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出所:私のツイート

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出所:専門家会議 新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言(5月1日)

このグラフの赤の部分がクラスター対策が不可能な「孤発例」で、3月下旬には実質的に対応が困難になったことがわかります。

では、効果的なクラスター対策が実施できない場合は、いったいどうすればいいのでしょう?
正直な人なら、この作戦は実施部隊の人数が不足しているので不可能です、と報告するかもしれません。

しかし、これでは全面的な自己否定になりますし、専門家が役に立たないことも証明してしまいます。
責任感が極めて強い人なら、「あらゆる可能な手段を使って、何がなんでもやり遂げる」と言うかもしれません。

私は、これが西浦氏の4/3に唐突に発表した「42万人死亡説」の動機でないかと思っています。
彼の動機は非常に純粋で、おそらく専門家として最大限の責任を果たそうとしたのでしょう。

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出所:時事通信 4月3日付
新型コロナ、厳格な外出制限を 接触8割減で急速に減少―北大教授が試算

そして、もう一つの謎も解けます。
多くの人が指摘しているように、42万人もが死亡するとされる数理モデルの根拠は、まだ何も示されていないのです。
例えば、池田信夫氏は、

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出所:池田信夫氏のツイート

と主張しています。

具体的な数値もグラフも出しているのに、その科学的な根拠を公開しないなんてことはあり得ません。
念のため、彼は日本でほぼ唯一の感染症の数理モデルの専門家です。
言い換えば、モデルを出せない可能性はゼロです。

しかし、強い責任感で「ありとあらゆる可能な手段を使って、何がなんでもクラスター対策をやり遂げる」と考えているとすると、この謎は氷解します。
彼が使った(と思われる)SIRモデルは、少数の感染源から感染が拡大するという「閉鎖的」な環境を想定しています。
ですから、大量の邦人帰国者を経由して、ヨーロッパから強烈な第二波が襲来するといった、現実の日本の「開放的」な環境には適用できないのです。
感染症の数理モデルの専門家が、この素人の私でもわかる単純なことが理解できないはずはないでしょう。

ただ、この数理モデルを公開してしまうと、「42万人死亡説」の根拠は簡単に崩れてしまい、究極の目的であるクラスター対策をやり遂げることが不可能になります。
そこで、42万人が死亡とする根拠はとりあえず封印し、国民を説得するためのプレゼンに最大限注力するという「賭け」に出た、ということなのではないでしょうか?
確かに、この賭けは「緊急事態宣言」という形で成功しました。

西浦氏の本心は、

この賭けは必ず成功する。
仮に部分的な成功でも効果は必ず上がる。
国民はきっと私の正しさを理解してくる…ということなのかもしれません。

以上はあくまでも私の推測ですが、こう考えると西浦氏の行動が理解出来ることは確かです。

【参考】
倉本圭造氏の記事 2020年04月26日 06:00付
3月上旬の超優秀だったコロナ対策会議に戻ってほしい

3月中旬までの成功」と「それ以降の失敗」は表裏一体で、単純に「失敗」部分だけを見て「バカだねえ」というだけでは改善できない課題がある

【追記 2020.5.4 16:30】
西浦氏は、おそらく彼のモデルを公開しないと思います。

実際に計算すると、R=2.5でも3月末のあの勢いでは増加しません(笑)。たかが1万人程度の感染で集団免疫が成立して、自然に感染者が激減するはずもありません。もう無茶苦茶で、SIRモデルは完全に破綻しているのです。データをいじってみるとわかりますよ。

数理モデルの専門家である西浦氏が、こんな単純なことがわからないはずがないです。なので、彼は絶対モデルを公開しないと信じています(笑)。

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出所:私のツイート

訂正:「実際に計算すると、R=2.5でも3月末のあの勢いでは増加しません」は必ずも正しくなく、パラメーターの設定によっては増加する場合もあります。(2020.5.5 15:00)
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新型コロナは沈静化しつつある!?【5月2日・西浦氏の致命的なミス】《追記あり》 [新型コロナ]

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本当は、前回の記事が最終版のつもりでした…。

ただ、昨日5/1の専門家会議の資料を読んだところ、あまりにも謎が多すぎるので、ここに自分のための備忘録を書いておくことにします。

【謎1】感染はなぜ3月末でピークアウトしたのか?

これは既に結論が出ています。
現在の日本で主流のウイルスは、中国・武漢由来のものではなく、欧米からもたらされたものです。
それは、欧米で感染が爆発し、3月末の入国制限措置前までに大量の邦人帰国者が持ち帰ったものなのです。
入国制限後には、ウイルスの流入が激減したので、当然ながら感染者数もピークアウトしています。[るんるん]

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出所:私のツイート

元データは、次の国立感染症研の論文です。
新型コロナウイルスSARS-CoV-2のゲノム分子疫学調査

渡航自粛が始まる3月中旬までに海外からの帰国者経由(海外旅行者、海外在留邦人)で “第2波” の流入を許し、数週間のうちに全国各地へ伝播して “渡航歴なし・リンク不明” の患者・無症状病原体保有者が増加したと推測される。

他にも、横浜市立大学データサイエンス学部佐藤彰洋教授の記事
時系列でみる感染者数の状況 3月27日版(4月6日更新)

実は、3月上旬に海外旅行をしていた帰国者が旅行中に感染し、帰国後発症する事例が2020年3月15日以降で急増している。

主に欧州へ旅行していた旅行者が現在感染拡大で閉鎖される感染リスクが極めて高かった状況で活動し、欧州各国で感染して帰国しているのである。

しかもその数は2020年3月20日以降今も衰える気配がない。

2020年2月の国際線搭乗率が約75%、2020年3月が仮に約50%と見積もると250万人程度の帰国者がこの期間最大存在していたことになる。そのうち仮に、0.1%(人口100万人あたり1000人程度の感染者割合を想定)が感染していたとしても、2500人程度が今後1~3週間で帰国後発症していくこととなる。

そして、私のブログの4月22日版の記事もどうぞ!

さて、これらの資料をベースにして簡易シミュレーションを行ったところ、ほぼ現実の数字と一致しました。

simu.JPG
注1 パラメーターは、現実とほぼ一致するよう調整
注2 日付は、次に示す専門家会議のグラフと合わせるため、「発症日」ベース(確定日ではない)

比較するために、専門家会議のグラフも示しておきます。

simu2.JPG
出所:専門家会議 新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言(5月1日)

【仮定】
①R=0.8→集団免疫あり
②感染源は、3月に欧州で感染した帰国者
③帰国者の感染率は、入国制限日直前まで指数関数的に増加
④感染5日後に、80%の確率(R=0.8)で2次感染が起こるものとする
注1 人数には3月初めの感染者数50人の「ゲタ」を履かせています
注2 R=0.8の場合、2次感染者は0.8人、3次は0.8×0.8=0.64人…となり、結局5人が感染する→現実の感染者数とほぼ一致

次は、実際に計算したExcelデータです。

corona102-1.JPG

なお、この仮定が妥当かどうかチェックするために、東京圏、大阪圏、福岡圏の感染者数累計と日本人出国者数とを比べてみました。
結果ですが、感染者数と出国者数はほぼ比例しているので、どうやら問題はなさそうです。[ひらめき]

《東京圏》
・出国者数 羽田52.3万人+成田33.8万人=86.1万人(2020年1月)
・感染者数 東京都4,317人+神奈川県1,046人+埼玉県865人+千葉県841人=7,069人(2020年5月1日)
《大阪圏》…日付は東京圏と同じ
・出国者数 関空27.1万人
・感染者数 大阪府1,639人+京都府324人+兵庫県655人=2,618人
《福岡圏》…日付は東京圏と同じ
・出国者数 福岡7.4万人
・感染者数 福岡県643人

《参考資料》
①JTB総研 アウトバウンド 日本人海外旅行動向
②東洋経済オンライン 新型コロナウイルス 国内感染の状況
③国立感染症研 First peak of COVID−19 outbreak in Japan might pass

corona101.JPG
出所:池田信夫氏のツイート

【謎2】R(実効再生産数)はいくらか?

謎1に書いたように、3月に続々と感染者が帰国してくるので、閉鎖系を想定している(単純な)SIRモデルは、そもそも成り立つはずがないのです。[がく~(落胆した顔)]
その意味で、専門家会議や国立感染症研で、「全期間」のRの値を計算しているのは奇妙です。
私のシミュレーションでは、2次感染が5日後だと仮定すると、R=0.8にすると現実の数字とほぼ一致しました。
つまり、元々R<1なので、集団免疫は初めから成立していたようです!

そういう意味で、厚労省クラスター対策班・西浦氏のSIRモデルによる「42万人死亡説」は、根本的に間違っていることになります。
統計の専門家のはずなのに、どうしてこんな単純な―しかし致命的な―ミスを見逃していたのかは謎というしかありません。

余談ですが、これで2009年にSARSが日本で爆発しなかった理由もわかります。なにしろ、はじめからR<1なのですから。

最後になりますが、これまでの説明は、我ながら話がうますぎると思うので、どこかに落とし穴があるのかもしれません…ね[たらーっ(汗)]

【お知らせ 2020.5.3 8:30】
初出時の誤字、脱字等を修正しました。
池田信夫さんのツイートで紹介されたせいか、反響の大きさに驚いています。
ありがとうございます!

【追記 2020.5.3 10:35】
池田信夫さんから質問をいただいた(大変恐縮です)ので、私のリプを書いておきます。
彼の指摘するとおり、私もR=0.8だと感染が拡大しないと思っていましたが、実際に計算すると違うようです。ただ、何回も繰り返すようですが、これではあまりにも話がうますぎるのです…[たらーっ(汗)]

[池田氏]わからないのは(佐藤彰洋氏が予想したように)3月に帰国した人から感染が広がるはずなのに、3月末でピークアウトしたことです。日本人のRが一貫して0.8というのは低すぎる。これだともともと感染はまったく拡大しなかったはず。

[私]佐藤彰洋氏の推測だと、ヨーロッパからの帰国人感染者は2,500人。R=0.8だと、1人が5人(0.8+0.8^2+0.8^3…)に感染させることになるので、累計の感染者数は感染源2,500人+感染者2,500人×5=1万5,000人。現実の数字にぴったり一致します。あまりにも話がうますぎるので、正直不安です。[たらーっ(汗)]


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出所:池田信夫氏のリプ
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