卑弥呼=天照大神の文献学的に決定的な証拠!? [ゲノム解析で古代史]
前回の続きです。
以下は、自分のための備忘録です。
○天照大神のヨミは、「ひみこ」ということになります。

出所 天照大神はなぜ日本神話の最高神なのか?|小名木善行
つまり、邪馬台国の女王「卑弥呼」とまったく同じなのです。
○邪馬台のヨミは、現地音だと「やまと」です。
○邪馬台国と比定される「山門」には、「大和」と多くの似た地名があります。
しかも、ヤマトから見た位置関係もほぼ一致
→卑弥呼の死後に、邪馬台国は東遷して大和(朝廷)になった。

出所 九州と近畿の地名が一致?邪馬台国東遷説と神武東征【筑後山門】:第2回
○魏志倭人伝を素直に読めば、邪馬台国は北部九州となります。
当時は距離を10倍にしていたようです。
→邪馬台国をめぐる1000年の謎を解く 「邪馬台国の全解決」 中国「正史」がすべてを解いていた (著者 孫栄健) を読む
○炭素14法では、箸墓古墳の実年代は邪馬台国と合いません。
→箸墓古墳の実年代:歴博の炭素14年代測定による240~260年は根拠の間違いが明らかに
以下は、自分のための備忘録です。
○天照大神のヨミは、「ひみこ」ということになります。
出所 天照大神はなぜ日本神話の最高神なのか?|小名木善行
つまり、邪馬台国の女王「卑弥呼」とまったく同じなのです。
○邪馬台のヨミは、現地音だと「やまと」です。
○邪馬台国と比定される「山門」には、「大和」と多くの似た地名があります。
しかも、ヤマトから見た位置関係もほぼ一致
→卑弥呼の死後に、邪馬台国は東遷して大和(朝廷)になった。

出所 九州と近畿の地名が一致?邪馬台国東遷説と神武東征【筑後山門】:第2回
○魏志倭人伝を素直に読めば、邪馬台国は北部九州となります。
当時は距離を10倍にしていたようです。
→邪馬台国をめぐる1000年の謎を解く 「邪馬台国の全解決」 中国「正史」がすべてを解いていた (著者 孫栄健) を読む
○炭素14法では、箸墓古墳の実年代は邪馬台国と合いません。
→箸墓古墳の実年代:歴博の炭素14年代測定による240~260年は根拠の間違いが明らかに
2023-09-23 17:47
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国立歴史民俗博物館研究報告 2022 (第237集) 【追記あり】 [ゲノム解析で古代史]
国立歴史民俗博物館研究報告書 2022(第237集)を入手しました。
(一般には販売せず、ミュージアムショップのみの取り扱い)

この報告書には、次の論文が収録されています。
藤尾慎一郎・篠田謙一・坂本稔・瀧上舞
考古学データとDNA分析からみた弥生人の成立と展開
(2021年11月26日受付、2022年5月23日審査終了)
実は、この論文には、韓国加徳島獐項遺跡から見つかった人骨のゲノム解析の詳しい結果が書かれているのです。やった!

ちなみに、私の以前の2つの記事
○6300年前の朝鮮半島に「縄文人」が住んでいた!?【追記あり】
○6300年前の朝鮮半島に「縄文人」が住んでいた!?【訂正】
では、肝心の結果が書かれてないので苦労しました
。
自分のための備忘録として、ポイントだけ書き留めておくことにします。
篠田謙一氏らは、4体の人骨の調査を行い、うち2号と8号のDNAの解析に成功しました。結果は次のとおりです。
○ミトコンドリアハプログループ D4系統
→それぞれD4b1とD4aの祖型(東アジア集団で普遍的)
○Y染色体ハプログループ 不明(おそらく2体とも女性)
○核ゲノム解析 現代日本人や弥生人とほぼ同じ(以前の2つの記事でも既出)
○年代 約6300年前(出土人骨2体を炭素14法で分析した結果による)
→ただし、韓国の発掘報告書(2014年)に書いてある、人骨に伴った炭を炭素14法で分析した結果とは1700年違う。
(韓国の発掘報告書では8000年前らしいので、8000年-6300年=1700年という意味か?)
○人骨の人類学的調査の結果(山田康弘氏による) 縄文人とは違う
→長頭傾向、直線的ではない眉上隆起、頭部形態、大腿骨に柱状構造が見られない
○墓壙(墓穴) 弥生中期前半の九州北部の甕棺墓に見られるような列状配置
○黒曜石 遺跡からは、佐賀県の黒曜石も発見
○食性分析(瀧上氏) 海洋資源に大きく依存した生活[稲作はあまりない?]
→2号の炭素同位体比が47%台、8号が74%台。弥生時代の甕棺に葬られている炭素同位体比である20%台に比べてかなり重いため、海洋資源に大きく依存した生活[稲作はあまりない]。
(「炭素同位体比」の意味が不明。↓「炭素・窒素同位体比」なのでは?)

出所 国立歴史民俗博物館研究報告書(第219集)
実データ→放射性炭素で海水大循環を調べる
見れば分かるとおり、炭素14法で分析した年代を無視すれば、人骨、DNA、墓壙は九州北部の弥生人そっくりとなります。
ただ、常識的に考えると、炭素14法で測定した6300年前という値は、どうみても2000年前にはなりそうもありません…。[最大限繰り下げても1000年程度]
炭素14の半減期は5730年です。いくら海産物を食べていたとしても、炭素14の摂取が半分になるとは考えにくいので。
参考1→箸墓古墳の実年代:歴博の炭素14年代測定による240~260年は根拠の間違いが明らかに
参考2→昌原三東洞甕棺墓(日本では弥生時代)
さて、この加徳島獐項遺跡に一番近い甕棺の遺跡は、「昌原三東洞甕棺墓」です。こちらは、原三国時代ということなので、日本では弥生時代となります。
ということなので、炭素14法の「6300年前」という結果がミスという可能性が高いとしか考えられません…。

出所 弥生時代の鉄剣・鉄刀について

出所 Google Map
閑話休題。
さて、この論文「考古学データとDNA分析からみた弥生人の成立と展開」ですが、はっきり言って論理が破綻しています。
いままでに書いたように、朝鮮半島古代人骨(渡来人)の核ゲノム解析の結果は、そのほとんどが「弥生人そっくり」です。
渡来人が縄文人と混血すると、主成分分析の結果はその中間にならないとおかしい。
しかし、実データによれば、渡来人と我々現代日本人(弥生人)のDNAはほぼ同じです。
これを論理的に考えると、渡来人が縄文人を駆逐して、現代日本人や弥生人になったはずですから、「二重構造説」は完全に否定されないとおかしい。
→「二重構造説」への疑問
ところが、現実には逆に、現代日本人のY染色体やミトコンドリアのハプログループは、その多くが縄文人由来とされます。
結局、渡来人を前提として考えると、どうやっても実データと矛盾してしまうのです。
まったく逆に、縄文・弥生人が対馬海峡を渡って朝鮮半島に移住したとすると、ほとんどすべてが事実と整合的です。
○朝鮮半島南部から出土する古代人のDNAは、縄文・弥生人とほぼ同じ。
○朝鮮半島南部の前方後円墳は、日本より時期的に後
○朝鮮半島南部の水田稲作の開始時期は、日本より少し遅れる
などなど…。
余談ですが、Wikipediaの朝鮮民族によると、韓国人(朝鮮民族)のHLAを系統発生的に分析した結果、日本人と山東省の漢民族に最も密接な関連があったとのこと。
→Anthropological analysis of Koreans using HLA class II diversity among East Asians
土井ヶ浜遺跡(出土した人(骨)は山東省から渡来)でわかるとおり、このルートは縄文時代から使われていたはずです。
HLAは感染症と密接に関係しているので、山東省から(水田稲作で)結核などの感染症が持ち込まれたことと関連しているのではないでしょうか…。
それから、朝鮮半島古代人のDNAですが、Y染色体ではO2が最大グループなので、箕子朝鮮、楽浪郡、帯方郡から中原の漢人のハプログループO2が流入したとすると、ほぼすべてのデータに辻褄が合ってきます。
なお、既出の記事のように、ミトコンドリアのハプログループは、中国大陸より日本に似ているので、男性は主に中国大陸から、女性は縄文・弥生人が多いと考えられます。
ただし、白村江の敗戦後、縄文系のY染色体ハプログループ(D1a2)は排除されたはずです。
しかし、なぜ専門家は「二重構造説」や「渡来人」が実データをまったく説明できないのに、これだけこだわるのでしょうか?
さっぱりわかりません。
【追記】
歴博のメンバーが、↑のような単純なことを理解できないはずはありません。
半島南部古代人のゲノム解析の結果は、ほとんどすべて一致しています。
考えるまでもなく、「二重構造説」は(少なくとも理論的には)完全に破綻していることは明らかです。
この論文は2021年11月26日受付だから、既に2年近くが経過していますが、その後の状況に変化は見られません。「血液型と性格」と同じで、もはやのメンツの問題なのかな?
ちなみに、血液型については、心理学者は個人的に信じている人も多いようですが、商売上「公式」には信じていないふりをしないといけません(苦笑)。少なくとも現役のときには…。
長谷川さんのように、もはや現役じゃなければ本音を言ってもいいんでしょうかね。
(一般には販売せず、ミュージアムショップのみの取り扱い)
この報告書には、次の論文が収録されています。
藤尾慎一郎・篠田謙一・坂本稔・瀧上舞
考古学データとDNA分析からみた弥生人の成立と展開
(2021年11月26日受付、2022年5月23日審査終了)
実は、この論文には、韓国加徳島獐項遺跡から見つかった人骨のゲノム解析の詳しい結果が書かれているのです。やった!

ちなみに、私の以前の2つの記事
○6300年前の朝鮮半島に「縄文人」が住んでいた!?【追記あり】
○6300年前の朝鮮半島に「縄文人」が住んでいた!?【訂正】
では、肝心の結果が書かれてないので苦労しました
![[もうやだ~(悲しい顔)]](https://blog.ss-blog.jp/_images_e/143.gif)
自分のための備忘録として、ポイントだけ書き留めておくことにします。
篠田謙一氏らは、4体の人骨の調査を行い、うち2号と8号のDNAの解析に成功しました。結果は次のとおりです。
○ミトコンドリアハプログループ D4系統
→それぞれD4b1とD4aの祖型(東アジア集団で普遍的)
○Y染色体ハプログループ 不明(おそらく2体とも女性)
○核ゲノム解析 現代日本人や弥生人とほぼ同じ(以前の2つの記事でも既出)
○年代 約6300年前(出土人骨2体を炭素14法で分析した結果による)
→ただし、韓国の発掘報告書(2014年)に書いてある、人骨に伴った炭を炭素14法で分析した結果とは1700年違う。
(韓国の発掘報告書では8000年前らしいので、8000年-6300年=1700年という意味か?)
○人骨の人類学的調査の結果(山田康弘氏による) 縄文人とは違う
→長頭傾向、直線的ではない眉上隆起、頭部形態、大腿骨に柱状構造が見られない
○墓壙(墓穴) 弥生中期前半の九州北部の甕棺墓に見られるような列状配置
○黒曜石 遺跡からは、佐賀県の黒曜石も発見
○食性分析(瀧上氏) 海洋資源に大きく依存した生活[稲作はあまりない?]
→2号の炭素同位体比が47%台、8号が74%台。弥生時代の甕棺に葬られている炭素同位体比である20%台に比べてかなり重いため、海洋資源に大きく依存した生活[稲作はあまりない]。
(「炭素同位体比」の意味が不明。↓「炭素・窒素同位体比」なのでは?)
出所 国立歴史民俗博物館研究報告書(第219集)
実データ→放射性炭素で海水大循環を調べる
見れば分かるとおり、炭素14法で分析した年代を無視すれば、人骨、DNA、墓壙は九州北部の弥生人そっくりとなります。
ただ、常識的に考えると、炭素14法で測定した6300年前という値は、どうみても2000年前にはなりそうもありません…。[最大限繰り下げても1000年程度]
炭素14の半減期は5730年です。いくら海産物を食べていたとしても、炭素14の摂取が半分になるとは考えにくいので。
参考1→箸墓古墳の実年代:歴博の炭素14年代測定による240~260年は根拠の間違いが明らかに
参考2→昌原三東洞甕棺墓(日本では弥生時代)
さて、この加徳島獐項遺跡に一番近い甕棺の遺跡は、「昌原三東洞甕棺墓」です。こちらは、原三国時代ということなので、日本では弥生時代となります。
ということなので、炭素14法の「6300年前」という結果がミスという可能性が高いとしか考えられません…。
出所 弥生時代の鉄剣・鉄刀について
出所 Google Map
閑話休題。
さて、この論文「考古学データとDNA分析からみた弥生人の成立と展開」ですが、はっきり言って論理が破綻しています。
いままでに書いたように、朝鮮半島古代人骨(渡来人)の核ゲノム解析の結果は、そのほとんどが「弥生人そっくり」です。
渡来人が縄文人と混血すると、主成分分析の結果はその中間にならないとおかしい。
しかし、実データによれば、渡来人と我々現代日本人(弥生人)のDNAはほぼ同じです。
これを論理的に考えると、渡来人が縄文人を駆逐して、現代日本人や弥生人になったはずですから、「二重構造説」は完全に否定されないとおかしい。
→「二重構造説」への疑問
ところが、現実には逆に、現代日本人のY染色体やミトコンドリアのハプログループは、その多くが縄文人由来とされます。
結局、渡来人を前提として考えると、どうやっても実データと矛盾してしまうのです。
まったく逆に、縄文・弥生人が対馬海峡を渡って朝鮮半島に移住したとすると、ほとんどすべてが事実と整合的です。
○朝鮮半島南部から出土する古代人のDNAは、縄文・弥生人とほぼ同じ。
○朝鮮半島南部の前方後円墳は、日本より時期的に後
○朝鮮半島南部の水田稲作の開始時期は、日本より少し遅れる
などなど…。
余談ですが、Wikipediaの朝鮮民族によると、韓国人(朝鮮民族)のHLAを系統発生的に分析した結果、日本人と山東省の漢民族に最も密接な関連があったとのこと。
→Anthropological analysis of Koreans using HLA class II diversity among East Asians
土井ヶ浜遺跡(出土した人(骨)は山東省から渡来)でわかるとおり、このルートは縄文時代から使われていたはずです。
HLAは感染症と密接に関係しているので、山東省から(水田稲作で)結核などの感染症が持ち込まれたことと関連しているのではないでしょうか…。
それから、朝鮮半島古代人のDNAですが、Y染色体ではO2が最大グループなので、箕子朝鮮、楽浪郡、帯方郡から中原の漢人のハプログループO2が流入したとすると、ほぼすべてのデータに辻褄が合ってきます。
なお、既出の記事のように、ミトコンドリアのハプログループは、中国大陸より日本に似ているので、男性は主に中国大陸から、女性は縄文・弥生人が多いと考えられます。
ただし、白村江の敗戦後、縄文系のY染色体ハプログループ(D1a2)は排除されたはずです。
しかし、なぜ専門家は「二重構造説」や「渡来人」が実データをまったく説明できないのに、これだけこだわるのでしょうか?
さっぱりわかりません。
【追記】
歴博のメンバーが、↑のような単純なことを理解できないはずはありません。
半島南部古代人のゲノム解析の結果は、ほとんどすべて一致しています。
考えるまでもなく、「二重構造説」は(少なくとも理論的には)完全に破綻していることは明らかです。
この論文は2021年11月26日受付だから、既に2年近くが経過していますが、その後の状況に変化は見られません。「血液型と性格」と同じで、もはやのメンツの問題なのかな?
ちなみに、血液型については、心理学者は個人的に信じている人も多いようですが、商売上「公式」には信じていないふりをしないといけません(苦笑)。少なくとも現役のときには…。
長谷川さんのように、もはや現役じゃなければ本音を言ってもいいんでしょうかね。
2023-09-23 14:45
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朝鮮半島南部には弥生人がいた [ゲノム解析で古代史]
去年の論文ですが、百済人(韓国・群山)のゲノム解析の結果です。
Don-Nyeong Lee, Chae Lin Jeon, Jiwon Kang, Marta Burri, Johannes Krause, Eun Jin Woo, Choongwon Jeong
Genomic detection of a secondary family burial in a single jar coffin in early Medieval Korea
Amerian Journal of Biological Anthropology
Volume179, Issue4, December 2022, Pages 585-597
https://doi.org/10.1002/ajpa.24650
見れば分かるとおり、核ゲノム解析の結果は、現代日本人(=弥生人)とほぼ同じです。しかも、現代韓国人(ウルサン)より似ているのです。

なお、この論文には、Y染色体とミトコンドリアのハプログループも掲載されています。

Y染色体のQ1aは3人で、日本には極めて少ない(コンマ以下)のですが、ゼロではありません。日本よりは、韓国や中国東北部に多いようですが、多くても数パーセントです。
O1b2a2a1a (O-CTS7620)は1人で、現代の日本に多いグループ(約30%)で、韓国では日本よりやや少なくなっています(約30%)。
ミトコンドリアはD4とB5なので、基本的に日本にも存在するグループです。
よって、Y染色体とミトコンドリアだけで判断するとちょっと迷います。
ただ、最初に書いたように、核ゲノム解析の結果が決定的なので、このグループはほぼ間違いなく「弥生人」でしょうね。
これで、朝鮮半島南部で発見された古代人骨は、ほぼすべてが弥生人ということになります。
そういえば、最近は渡来人が水田稲作を伝えたという話は、ネットではあまり聞かなくなった気がします…。こんな感じで、ゲノム解析の結果が続々発表されているからかな?
なお、現代韓国人は紅山文化と弥生人・縄文人の混血という話もありましたが、これはY染色体で否定されます。というのは、紅山文化の遺跡から発見された人骨は、多くはハプログループNだからです。
Y Chromosome analysis of prehistoric human populations in the West Liao River Valley, Northeast China.
Cui, Y., Li, H., Ning, C. et al.
BMC Evol Biol 13, 216 (2013).
https://doi.org/10.1186/1471-2148-13-216
ハプログループNは、古代の半島人ではあまり見かけませんし、現代韓国人でもせいぜい数%ですから、少なくともメインではありません。
→Y染色体ハプログループの分布 (東アジア)
現代韓国人で多いのは、元々は中国の中原(黄河中流の長安・洛陽あたり)に多かったO2です。たぶん、ここの人々が中国全土、そして朝鮮半島にまで広まった可能性が高い。
→日本語の意外な歴史
パズルの最後の1ピースを探し求めて、注目される山東省のDNAのデータ
→ 韓国高霊池山洞44号墳出土人骨のミトコンドリアDNA分析
→ Y-chromosome-based genetic pattern in East Asia affected by Neolithic transition
Shao-Qing Wen, Xin-Zhu Tong, Hui Li
https://doi.org/10.1016/j.quaint.2016.03.027
以上のことから、現代韓国人は、弥生人(縄文人)と中国人の混血であるという結論になります。
細かいことを言うと、女性由来のミトコンドリアは韓国は日本とさほど変わらず、男性由来のY染色体が多少違うということになります。
一方、中国本土に対してはこの逆で、女性由来のミトコンドリアは結構違いますが、男性由来のY染色体はそこまで変わらないということになります。
とここまで書いたら、時間になってしまいました。
卑弥呼=天照大神の文献学的に決定的な証拠?を見つけたはずなのですが、これは次回に。
Don-Nyeong Lee, Chae Lin Jeon, Jiwon Kang, Marta Burri, Johannes Krause, Eun Jin Woo, Choongwon Jeong
Genomic detection of a secondary family burial in a single jar coffin in early Medieval Korea
Amerian Journal of Biological Anthropology
Volume179, Issue4, December 2022, Pages 585-597
https://doi.org/10.1002/ajpa.24650
見れば分かるとおり、核ゲノム解析の結果は、現代日本人(=弥生人)とほぼ同じです。しかも、現代韓国人(ウルサン)より似ているのです。

なお、この論文には、Y染色体とミトコンドリアのハプログループも掲載されています。
Y染色体のQ1aは3人で、日本には極めて少ない(コンマ以下)のですが、ゼロではありません。日本よりは、韓国や中国東北部に多いようですが、多くても数パーセントです。
O1b2a2a1a (O-CTS7620)は1人で、現代の日本に多いグループ(約30%)で、韓国では日本よりやや少なくなっています(約30%)。
ミトコンドリアはD4とB5なので、基本的に日本にも存在するグループです。
よって、Y染色体とミトコンドリアだけで判断するとちょっと迷います。
ただ、最初に書いたように、核ゲノム解析の結果が決定的なので、このグループはほぼ間違いなく「弥生人」でしょうね。
これで、朝鮮半島南部で発見された古代人骨は、ほぼすべてが弥生人ということになります。
そういえば、最近は渡来人が水田稲作を伝えたという話は、ネットではあまり聞かなくなった気がします…。こんな感じで、ゲノム解析の結果が続々発表されているからかな?
なお、現代韓国人は紅山文化と弥生人・縄文人の混血という話もありましたが、これはY染色体で否定されます。というのは、紅山文化の遺跡から発見された人骨は、多くはハプログループNだからです。
Y Chromosome analysis of prehistoric human populations in the West Liao River Valley, Northeast China.
Cui, Y., Li, H., Ning, C. et al.
BMC Evol Biol 13, 216 (2013).
https://doi.org/10.1186/1471-2148-13-216
ハプログループNは、古代の半島人ではあまり見かけませんし、現代韓国人でもせいぜい数%ですから、少なくともメインではありません。
→Y染色体ハプログループの分布 (東アジア)
現代韓国人で多いのは、元々は中国の中原(黄河中流の長安・洛陽あたり)に多かったO2です。たぶん、ここの人々が中国全土、そして朝鮮半島にまで広まった可能性が高い。
→日本語の意外な歴史
パズルの最後の1ピースを探し求めて、注目される山東省のDNAのデータ
→ 韓国高霊池山洞44号墳出土人骨のミトコンドリアDNA分析
→ Y-chromosome-based genetic pattern in East Asia affected by Neolithic transition
Shao-Qing Wen, Xin-Zhu Tong, Hui Li
https://doi.org/10.1016/j.quaint.2016.03.027
以上のことから、現代韓国人は、弥生人(縄文人)と中国人の混血であるという結論になります。
細かいことを言うと、女性由来のミトコンドリアは韓国は日本とさほど変わらず、男性由来のY染色体が多少違うということになります。
一方、中国本土に対してはこの逆で、女性由来のミトコンドリアは結構違いますが、男性由来のY染色体はそこまで変わらないということになります。
とここまで書いたら、時間になってしまいました。
卑弥呼=天照大神の文献学的に決定的な証拠?を見つけたはずなのですが、これは次回に。
2023-09-20 23:37
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アイヌのミトコンドリア・ハプログループ [ゲノム解析で古代史]
自分のための備忘録です。
縄文人に多いY染色体のハプログループDは、本土の日本人よりアイヌや沖縄に多いのです。
しかし…アイヌに多いとされる、ミトコンドリアのハプログループYは本土や沖縄の日本人にはほとんど見られません。

出所 https://twitter.com/studying_Ainu/status/1362309943664156674
これは、学術研究でも確かめられています。
形態と遺伝子から解明する近世アイヌ集団の起源と成立史
研究代表者 篠田 謙一
また、このアイヌに多いとされるミトコンドリアのハプログループYは、縄文人にも見られません。
なお、血液型から見ても、アイヌはO型が多い点でオホーツク人と共通しています。
縄文人に多いY染色体のハプログループDは、本土の日本人よりアイヌや沖縄に多いのです。
だから、アイヌは現代日本人より縄文人に近いという話もしばしば聞きます。#barakanbeat 沖縄とアイヌのことで思い出したこのグラフ。東アジアのY染色体ハプログループ(Yせんしょくたいハプログループ)とは、父系で遺伝するY染色体のハプログループ)を示すものです。 pic.twitter.com/geWDZn8fr6
— Peter Barakan (@pbarakan) July 12, 2020
しかし…アイヌに多いとされる、ミトコンドリアのハプログループYは本土や沖縄の日本人にはほとんど見られません。

出所 https://twitter.com/studying_Ainu/status/1362309943664156674
これは、学術研究でも確かめられています。
形態と遺伝子から解明する近世アイヌ集団の起源と成立史
研究代表者 篠田 謙一
近世アイヌ人骨122体を対象としてDNAを抽出し、ミトコンドリアDNAの解析を行った。最終的に100体からDNA情報を取得し、アイヌ集団の成立の歴史の解明を試みた。解析の結果は、北海道のアイヌ集団は在来の縄文人の集団にオホーツク文化人を経由したシベリア集団の遺伝子が流入して構成されたというシナリオを支持した。また同時に行った頭蓋形態小変異の研究でも、アイヌは北海道の祖先集団に由来するものの、オホーツク人との間の遺伝的な交流を持っていた可能性が示された。出所 https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22370088/
また、このアイヌに多いとされるミトコンドリアのハプログループYは、縄文人にも見られません。
なお、血液型から見ても、アイヌはO型が多い点でオホーツク人と共通しています。
2023-09-10 09:17
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北朝鮮のタバコの吸い殻によるY染色体ハプログループの推定 [ゲノム解析で古代史]
自分のための備忘録です。
北朝鮮のタバコの吸殻からY染色体のハプログループを推定した研究があります。
Jeong, KS., Shin, H., Lee, SJ. et al. Genetic characteristics of Y-chromosome short tandem repeat haplotypes from cigarette butt samples presumed to be smoked by North Korean men. Genes Genom 40, 819–824 (2018). https://doi.org/10.1007/s13258-018-0701-5
結論として、"For the 16 Y-filer loci and eight minimal loci, respectively 90.9 and 82.6% of the matched haplotypes were estimated to belong to haplogroup O, representing the Southeast and East Asian type."とあり、ハプログループOが82.6%または90.9%との推定です。
また、"Despite the separation between North and South Korea for 70 years, they can still be considered a single genetic population, based on Y-STR haplotypes."ともあり、「70年もの間、南北朝鮮が分離していたにもかかわらず、Y-STRハプロタイプに基づくと、両者は依然として単一の遺伝的集団とみなすことができる。」とのこと。
なお、元のソースが不明ですが、このサイトによると、ハプログループOは83%となっています。

↓は、古代の西遼河(旧・満州)のY染色体の分析です。
Cui, Y., Li, H., Ning, C. et al. Y Chromosome analysis of prehistoric human populations in the West Liao River Valley, Northeast China. BMC Evol Biol 13, 216 (2013). https://doi.org/10.1186/1471-2148-13-216
結論として、ハプログループNが62.5%で、現在中国で主流のO3は21.9%で、弥生人・現代日本人に多いO1b2は見つかりませんでした。

紅山文化は日本の縄文人と交流があったとされますが、縄文人で主流のD1a2aは見つかりませんでした。
別の論文、
Melinda A. Yang et al. ,Ancient DNA indicates human population shifts and admixture in northern and southern China.Science369,282-288(2020).DOI:10.1126/science.aba0909
では、古代中国のDNAの主成分分析を行いました。
日本人は、黄河下流の人々に近いのですが、別のグループのようです。
下の図のCを見ると、伊川津の縄文人と現代日本・韓国人は極めて近く、やはり縄文人がそのまま弥生人になったと考えるのが一番素直なようです。

なお、伊川津の縄文人2体については、ミトコンドリアのハプログループはどちらもM7a1aですが、親子ではないとのことです。
Complete mitochondrial genome sequencing reveals double-buried Jomon individuals excavated from the Ikawazu shell-mound site were not in a mother–child relationship
Anthropological Science 2022
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ase/advpub/0/advpub_220129/_pdf/-char/ja
北朝鮮のタバコの吸殻からY染色体のハプログループを推定した研究があります。
Jeong, KS., Shin, H., Lee, SJ. et al. Genetic characteristics of Y-chromosome short tandem repeat haplotypes from cigarette butt samples presumed to be smoked by North Korean men. Genes Genom 40, 819–824 (2018). https://doi.org/10.1007/s13258-018-0701-5
結論として、"For the 16 Y-filer loci and eight minimal loci, respectively 90.9 and 82.6% of the matched haplotypes were estimated to belong to haplogroup O, representing the Southeast and East Asian type."とあり、ハプログループOが82.6%または90.9%との推定です。
また、"Despite the separation between North and South Korea for 70 years, they can still be considered a single genetic population, based on Y-STR haplotypes."ともあり、「70年もの間、南北朝鮮が分離していたにもかかわらず、Y-STRハプロタイプに基づくと、両者は依然として単一の遺伝的集団とみなすことができる。」とのこと。
なお、元のソースが不明ですが、このサイトによると、ハプログループOは83%となっています。
↓は、古代の西遼河(旧・満州)のY染色体の分析です。
Cui, Y., Li, H., Ning, C. et al. Y Chromosome analysis of prehistoric human populations in the West Liao River Valley, Northeast China. BMC Evol Biol 13, 216 (2013). https://doi.org/10.1186/1471-2148-13-216
結論として、ハプログループNが62.5%で、現在中国で主流のO3は21.9%で、弥生人・現代日本人に多いO1b2は見つかりませんでした。
紅山文化は日本の縄文人と交流があったとされますが、縄文人で主流のD1a2aは見つかりませんでした。
別の論文、
Melinda A. Yang et al. ,Ancient DNA indicates human population shifts and admixture in northern and southern China.Science369,282-288(2020).DOI:10.1126/science.aba0909
では、古代中国のDNAの主成分分析を行いました。
日本人は、黄河下流の人々に近いのですが、別のグループのようです。
下の図のCを見ると、伊川津の縄文人と現代日本・韓国人は極めて近く、やはり縄文人がそのまま弥生人になったと考えるのが一番素直なようです。

なお、伊川津の縄文人2体については、ミトコンドリアのハプログループはどちらもM7a1aですが、親子ではないとのことです。
Complete mitochondrial genome sequencing reveals double-buried Jomon individuals excavated from the Ikawazu shell-mound site were not in a mother–child relationship
Anthropological Science 2022
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ase/advpub/0/advpub_220129/_pdf/-char/ja
2023-09-10 08:16
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ミトコンドリア・ハプログループD4a1は本当に渡来系なのか?【続々】 [ゲノム解析で古代史]
前回の続きです。これまた、自分のための備忘録となります。
その後、篠田謙一氏が2016年3月19日にJICAで講演したスライドを見つけました。
DNAから見た日本人の起源―日本人成立の経緯―
国立科学博物館人類研究部 篠田 謙一
そうしたら、なんとその後の2019年の自著↓の記述を否定していたのです!

1. この本には、ミトコンドリア・ハプログループDは「弥生時代になって日本に入ってきたと考える方が自然」(第5章)とありますが、講演のスライド↓には縄文人のD4が示されています。
これは、 ハプログループDは縄文時代に既に入ってきていたということ? 以前の主張を変更したとは思えないので、非常に考えにくいのですが、ひょっとしたら書き間違え?

2. 講演のスライド↓では、ハプログループD4の中心は山東省や朝鮮半島になっていますが、前回に書いたように、その比率は20%台となります。これは日本の30%台より低いので、中心は山東省ではなく日本です。


3. 山東省の斉の国から山口県下関市・土井ヶ浜遺跡に到来したとされる人々(DHxx)のハプログループD4は、主成分分析の結果によると、現在の日本人のD4のものと同じもののようです。
Diversity in matrilineages among the Jomon individuals of Japan
Fuzuki Mizuno et al.
Annals of Human Biology 2023

ただ、↑の2を考慮すると、実は山東省のD4が縄文・弥生人由来なのか、あるいは縄文・弥生人が山東省に移住したものの、何らかの理由で里帰りしたのか…。
これだけではなんとも言えないので、より詳しい分析が必要になるでしょう。
常識的に考えると、わざわざ300人も来たとなると、何らかの新技術(たとえば最新の水田稲作技術)を持ってきたか、あるいは里帰りとするのが自然だと思います。
↑でもう一つ面白いことは、縄文人(黄色)や弥生人(紫色)のミトコンドリア・ハプログループは、土井ヶ浜遺跡の人々も含め、すべて現代日本人と同じであることです。
これには、
a. そもそも、ミトコンドリア・ハプログループでは地域性を区別しにくい
b. 弥生時代までには、渡来人は無視できるぐらい少人数しか来なかった
c. 半島動乱の時代に日本に渡来した百済・新羅・漢人と同じグループだった
といった可能性が考えられます。
まぁ、なんとも言えませんが、私は個人的にbではないかと思っています。
いずれにしても、従来の「二重構造説」は相当疑わしいことになりますね
。

その後、篠田謙一氏が2016年3月19日にJICAで講演したスライドを見つけました。
DNAから見た日本人の起源―日本人成立の経緯―
国立科学博物館人類研究部 篠田 謙一
そうしたら、なんとその後の2019年の自著↓の記述を否定していたのです!

新版 日本人になった祖先たち DNAが解明する多元的構造 NHKブックス
- 作者: 篠田 謙一
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2019/03/25
- メディア: Kindle版
1. この本には、ミトコンドリア・ハプログループDは「弥生時代になって日本に入ってきたと考える方が自然」(第5章)とありますが、講演のスライド↓には縄文人のD4が示されています。
これは、 ハプログループDは縄文時代に既に入ってきていたということ? 以前の主張を変更したとは思えないので、非常に考えにくいのですが、ひょっとしたら書き間違え?
2. 講演のスライド↓では、ハプログループD4の中心は山東省や朝鮮半島になっていますが、前回に書いたように、その比率は20%台となります。これは日本の30%台より低いので、中心は山東省ではなく日本です。
3. 山東省の斉の国から山口県下関市・土井ヶ浜遺跡に到来したとされる人々(DHxx)のハプログループD4は、主成分分析の結果によると、現在の日本人のD4のものと同じもののようです。
Diversity in matrilineages among the Jomon individuals of Japan
Fuzuki Mizuno et al.
Annals of Human Biology 2023

ただ、↑の2を考慮すると、実は山東省のD4が縄文・弥生人由来なのか、あるいは縄文・弥生人が山東省に移住したものの、何らかの理由で里帰りしたのか…。
これだけではなんとも言えないので、より詳しい分析が必要になるでしょう。
常識的に考えると、わざわざ300人も来たとなると、何らかの新技術(たとえば最新の水田稲作技術)を持ってきたか、あるいは里帰りとするのが自然だと思います。
↑でもう一つ面白いことは、縄文人(黄色)や弥生人(紫色)のミトコンドリア・ハプログループは、土井ヶ浜遺跡の人々も含め、すべて現代日本人と同じであることです。
これには、
a. そもそも、ミトコンドリア・ハプログループでは地域性を区別しにくい
b. 弥生時代までには、渡来人は無視できるぐらい少人数しか来なかった
c. 半島動乱の時代に日本に渡来した百済・新羅・漢人と同じグループだった
といった可能性が考えられます。
まぁ、なんとも言えませんが、私は個人的にbではないかと思っています。
いずれにしても、従来の「二重構造説」は相当疑わしいことになりますね
![[たらーっ(汗)]](https://blog.ss-blog.jp/_images_e/163.gif)
2023-09-06 20:53
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水田稲作が伝来した経路は? [ゲノム解析で古代史]
自分のための備忘録です。
個人的に、水田稲作が伝来したのは遣唐使の北路、具体的には山東半島⇔北部九州と思っています。
さて、山口県下関市の土井ヶ浜遺跡には、弥生時代に山東半島の斉から来たとされる人骨が静かに眠っています。
https://www.doigahama.jp/
で、この人骨のミトコンドリア・ハプログループはD4b2b1なのです(赤枠↓)。
Population dynamics in the Japanese Archipelago since the Pleistocene revealed by the complete mitochondrial genome sequences
Fuzuki Mizuno et al.
Scientific Reports 2021
https://www.nature.com/articles/s41598-021-91357-2

これは、弥生時代になって急激に増えたタイプです。
前回も書いたように、長野県と神奈川県の縄文人には、このタイプが発見されています(赤枠↓)。
Diversity in matrilineages among the Jomon individuals of Japan
Fuzuki Mizuno et al.
Annals of Human Biology 2023
https://doi.org/10.1080/03014460.2023.2224060

ということは、昔から縄文人は山東省と交流があり、水田稲作もこのルートで伝来した…というのが最も自然なのではないでしょうか?
ちなみに、前回のデータでは、山東省の人々ではD4の率は20%程度で相当高いです。
もっとも、現代日本人ではもっと高い30%以上なので、弥生時代に淘汰圧で増えたのかもしれません。
だとすると、お酒に弱い遺伝子と同じパターンですね。
個人的に、水田稲作が伝来したのは遣唐使の北路、具体的には山東半島⇔北部九州と思っています。
さて、山口県下関市の土井ヶ浜遺跡には、弥生時代に山東半島の斉から来たとされる人骨が静かに眠っています。
https://www.doigahama.jp/
で、この人骨のミトコンドリア・ハプログループはD4b2b1なのです(赤枠↓)。
Population dynamics in the Japanese Archipelago since the Pleistocene revealed by the complete mitochondrial genome sequences
Fuzuki Mizuno et al.
Scientific Reports 2021
https://www.nature.com/articles/s41598-021-91357-2

これは、弥生時代になって急激に増えたタイプです。
前回も書いたように、長野県と神奈川県の縄文人には、このタイプが発見されています(赤枠↓)。
Diversity in matrilineages among the Jomon individuals of Japan
Fuzuki Mizuno et al.
Annals of Human Biology 2023
https://doi.org/10.1080/03014460.2023.2224060

ということは、昔から縄文人は山東省と交流があり、水田稲作もこのルートで伝来した…というのが最も自然なのではないでしょうか?
ちなみに、前回のデータでは、山東省の人々ではD4の率は20%程度で相当高いです。
もっとも、現代日本人ではもっと高い30%以上なので、弥生時代に淘汰圧で増えたのかもしれません。
だとすると、お酒に弱い遺伝子と同じパターンですね。
2023-09-05 22:33
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ミトコンドリア・ハプログループD4a1は本当に渡来系なのか?【続】 [ゲノム解析で古代史]
前回からの続きです。

↑第5章の最初にあるグラフ↓ですが、中国の数値(D4→黒にの背景に白字)が全部間違っている模様です
。

元の論文は、巻末の参考文献から探すと、どうやら"Phylogeographic Differentiation of Mitochondrial DNA in Han Chinese"だと思われます。
さて、このTable 4↓のD4(赤線)の中には、D4kという値がありますが、これには"D minus D5 is taken as a proxy for D4"と注釈(下の赤のアンダーライン)があり、つまりD4の値そのものです。

奇妙なことに、この値をD4の各サブクレードの合計に加えてしまっているようで、本来の値のちょうど倍になっています。例は次のとおりです。
①
・D4の値は38.2%ですが、正しくは19.1%?
②
・D4の値は35.2%ですが、正しくは17.6%?
・D5の値(青線)は6.4%ですが、5.9%が正しい?
③④
・D4の値は本来の値のちょうど倍?
また、このグラフにはサンプルサイズが書いてないのです。
元の論文では、1カ所について50人程度なので、さすがにこれでは少なすぎ?
ひょっとして、旧版からもそのまま?
また、ハプログループDは「弥生時代になって日本に入ってきたと考える方が自然」とありますが、これまた間違いのようです。というのは、縄文人にもあるから↓です(赤)。
Diversity in matrilineages among the Jomon individuals of Japan
Fuzuki Mizuno et al.
Annals of Human Biology 2023
https://doi.org/10.1080/03014460.2023.2224060

大丈夫なのかな?
なお、日本のデータについては、本人も執筆者になっている"Mitochondrial Genome Variation in Eastern Asia and the Peopling of Japan"と思われます。
サンプルサイズは1312のようです。
2004年発表ということだから、20年近く前のデータです。いくらなんでも、古すぎでは?
現在のデータを見ると、D4はこの論文の32%より少し高くなっているようです…。
本当に大丈夫なのかな?

日本人になった祖先たち DNAから解明するその多元的構造 (NHKブックス)
- 作者: 篠田 謙一
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2007/02/24
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
↑第5章の最初にあるグラフ↓ですが、中国の数値(D4→黒にの背景に白字)が全部間違っている模様です
![[たらーっ(汗)]](https://blog.ss-blog.jp/_images_e/163.gif)

元の論文は、巻末の参考文献から探すと、どうやら"Phylogeographic Differentiation of Mitochondrial DNA in Han Chinese"だと思われます。
さて、このTable 4↓のD4(赤線)の中には、D4kという値がありますが、これには"D minus D5 is taken as a proxy for D4"と注釈(下の赤のアンダーライン)があり、つまりD4の値そのものです。

奇妙なことに、この値をD4の各サブクレードの合計に加えてしまっているようで、本来の値のちょうど倍になっています。例は次のとおりです。
①
・D4の値は38.2%ですが、正しくは19.1%?
②
・D4の値は35.2%ですが、正しくは17.6%?
・D5の値(青線)は6.4%ですが、5.9%が正しい?
③④
・D4の値は本来の値のちょうど倍?
また、このグラフにはサンプルサイズが書いてないのです。
元の論文では、1カ所について50人程度なので、さすがにこれでは少なすぎ?
ひょっとして、旧版からもそのまま?
また、ハプログループDは「弥生時代になって日本に入ってきたと考える方が自然」とありますが、これまた間違いのようです。というのは、縄文人にもあるから↓です(赤)。
Diversity in matrilineages among the Jomon individuals of Japan
Fuzuki Mizuno et al.
Annals of Human Biology 2023
https://doi.org/10.1080/03014460.2023.2224060

大丈夫なのかな?
なお、日本のデータについては、本人も執筆者になっている"Mitochondrial Genome Variation in Eastern Asia and the Peopling of Japan"と思われます。
サンプルサイズは1312のようです。
2004年発表ということだから、20年近く前のデータです。いくらなんでも、古すぎでは?
現在のデータを見ると、D4はこの論文の32%より少し高くなっているようです…。
本当に大丈夫なのかな?
2023-09-05 22:10
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ミトコンドリア・ハプログループD4a1は長生きなのか? [ゲノム解析で古代史]
前回の記事に関連して、面白い論文を見つけました。
ミトコンドリア・ハプログループD4aは長生きのマーカーだというのです。
ひょっとしたら、水田稲作に向いているのかもしれません。
Mitochondrial DNA Haplogroup D4a Is a Marker for Extreme Longevity in Japan
Erhan Bilal et al.
PLOS ONE 2008
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0002421

それなら、弥生時代になってからD4a1が急増した理由も納得です。
また、中国でも同じ結果が報告されています。
Association of Mitochondrial DNA Haplogroups with Exceptional Longevity in a Chinese Population
Xiao-yun Cai et al.
PLOS ONE 2009.
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0006423
別な論文も見つけました。
Relationship between mitochondrial haplogroup and psychophysiological responses during cold exposure in a Japanese population
TAKAYUKI NISHIMURA et al.
Anthropological Science 2011.
https://doi.org/10.1537/ase.101009
この論文によると、ハプログループD4は寒さに強いそうです。
どれが本当なのかな?
ミトコンドリア・ハプログループD4aは長生きのマーカーだというのです。
ひょっとしたら、水田稲作に向いているのかもしれません。
Mitochondrial DNA Haplogroup D4a Is a Marker for Extreme Longevity in Japan
Erhan Bilal et al.
PLOS ONE 2008
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0002421

それなら、弥生時代になってからD4a1が急増した理由も納得です。
また、中国でも同じ結果が報告されています。
Association of Mitochondrial DNA Haplogroups with Exceptional Longevity in a Chinese Population
Xiao-yun Cai et al.
PLOS ONE 2009.
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0006423
別な論文も見つけました。
Relationship between mitochondrial haplogroup and psychophysiological responses during cold exposure in a Japanese population
TAKAYUKI NISHIMURA et al.
Anthropological Science 2011.
https://doi.org/10.1537/ase.101009
この論文によると、ハプログループD4は寒さに強いそうです。
どれが本当なのかな?
2023-09-02 01:16
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ミトコンドリア・ハプログループD4a1は本当に渡来系なのか? [ゲノム解析で古代史]
前回の記事では、通説では渡来系とされているD4a1↓は、意外と現代日本人に多いと書きました。

常識的に考えると、このハプログループが朝鮮半島由来だとすると、日本人よりは割合が高いはずです。
そこで、現代日本人と現代韓国人の割合を調べることにします。
とは言っても、ハプログループD4a1に限定するのは難しいので、D4の割合を調べてみました。
日本人についてですが、このサイトによれば、篠田謙一氏『日本人になった祖先たち』に、D4は32.61%とあるのだそうです。


韓国人については、とりあえず英語版Wikipediaなどで調べてみたところ、2つのデータが見つかりました。
1. The Peopling of Korea Revealed by Analyses of Mitochondrial DNA and Y-Chromosomal Markers
Han-Jun Jin et al.
PLoS One. 2009; 4(1): e4210.
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0004210
2. Phylogeographic Analysis of Mitochondrial DNA in Northern Asian Populations
Miroslava Derenko et al.
American Journal of Human Genetics 2007
https://doi.org/10.1086/522933

→32.0% (103人を調査)
なんと、どちらも日本人の32.61%より割合が低いのです!
※1より2の方がサンプルが少ないので、2の32.0%という数字は高めに出ているかもしれません…。
1によると、半島から北に行くほど割合が低下するので、日本→朝鮮半島→中国大陸というルートの方がありそうです。
また、D4a1の発生は1万年ぐらい前と推測されていますが、当時は事実上無人だった朝鮮半島で発生するとは考えにくいです。
これらのことから、渡来系とされているD4a1は、もともとは縄文人の住んでいた日本で発生した可能性が高いと思われます。
だんだん馬鹿馬鹿しくなってきますね。
なんだかなぁ~。
常識的に考えると、このハプログループが朝鮮半島由来だとすると、日本人よりは割合が高いはずです。
そこで、現代日本人と現代韓国人の割合を調べることにします。
とは言っても、ハプログループD4a1に限定するのは難しいので、D4の割合を調べてみました。
日本人についてですが、このサイトによれば、篠田謙一氏『日本人になった祖先たち』に、D4は32.61%とあるのだそうです。

日本人になった祖先たち DNAから解明するその多元的構造 (NHKブックス)
- 作者: 篠田 謙一
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2007/02/24
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
韓国人については、とりあえず英語版Wikipediaなどで調べてみたところ、2つのデータが見つかりました。
1. The Peopling of Korea Revealed by Analyses of Mitochondrial DNA and Y-Chromosomal Markers
Han-Jun Jin et al.
PLoS One. 2009; 4(1): e4210.
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0004210
The highest (23.8%) frequency in the Korean mtDNA pool was observed for haplogroup D4, which is widespread in northern East Asia and especially in the Korean-Chinese (21.6%), and Manchurians (20.0%). In total, haplogroup D lineages including the subhaplogroups (D4, D4a, D4b, D5, and D5a) accounted for 32.4% of the Korean mtDNA pool.→23.8% (185人を調査)
2. Phylogeographic Analysis of Mitochondrial DNA in Northern Asian Populations
Miroslava Derenko et al.
American Journal of Human Genetics 2007
https://doi.org/10.1086/522933
→32.0% (103人を調査)
なんと、どちらも日本人の32.61%より割合が低いのです!
※1より2の方がサンプルが少ないので、2の32.0%という数字は高めに出ているかもしれません…。
1によると、半島から北に行くほど割合が低下するので、日本→朝鮮半島→中国大陸というルートの方がありそうです。
また、D4a1の発生は1万年ぐらい前と推測されていますが、当時は事実上無人だった朝鮮半島で発生するとは考えにくいです。
これらのことから、渡来系とされているD4a1は、もともとは縄文人の住んでいた日本で発生した可能性が高いと思われます。
だんだん馬鹿馬鹿しくなってきますね。
なんだかなぁ~。
2023-09-02 00:15
コメント(0)