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新型コロナは沈静化しつつある!?【5月6日・西浦氏の致命的なミス・おまけ】 [新型コロナ]

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5月2日5月5日の記事のおまけです。

厚労省クラスター対策班のメンバーである西浦博氏は、4月3日に突如「42万人死亡説」を発表して、日本国内に大きな驚きと反響を巻き起こしました。
このまま何の対策も取らなければ、日本国内の死亡者数は最大42万人にも達するというのです。

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出所:新型コロナクラスター対策専門家のツイッター

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出所:時事通信 4月3日付
新型コロナ、厳格な外出制限を 接触8割減で急速に減少―北大教授が試算

そして、安倍首相は彼の提言に耳を傾け、4月7日に「非常事態宣言」を発出しました。

しかし、現実の5月5日までの死亡者は、累計で600人程度に過ぎません。
いくら強力な対策を取ったとしても、まさか42万人が600人になるはずがありません! なにしろ、数字が3桁も違うのです。

不可解なことに、彼が使ったバックデータと数理モデルは未だに非公開となっています。何の根拠もなく一方的に「42万人死亡説」を流されても困りますよね。
ただ、グラフと数式で判断する限り、彼が使ったのは一般的なSIRモデルと思われます。

池田信夫氏は、100年前のSIRモデル自体がおかしいのではないか疑問を呈しています。

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出所:池田信夫氏のツイート

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出所:池田信夫氏のツイート

面白そうな話なので、簡単な論考を書いてみました。ご興味とお時間のある方はどうぞ。

ます、SIRモデルについてさらっとシンプルに説明します。このモデルは、感染者数が指数関数的に増加するという数学的な理論がベースです。

現在の定説では、新型コロナは感染者1人が2.5人にうつすとされています。
この理論によると、時間とともに感染者数は1人→2.5人→2.5×2.5=6.25人…と指数関数的に増大していきます。
つまり、たった1人の感染者が、あっという間に何千人、そして何万人にもふくれあがり、重症者や死亡者が続出することになります。
これが、新型コロナウイルスが恐れられている最大の理由です。

・池田信夫氏による解説はこちら
・もう少し理論的で厳密な解説はこちら
・シミュレーションをしたいかたはこちら

ただ、現実の数字とここまで乖離しているのなら、理論が間違っているに決まっています!

そこで、私自身の備忘録として、その理由を書いておくことにします。

残念ながら、ここからの解説は高校の数Ⅲ程度の知識が必要となります。
お好みでない方は、この部分は読み飛ばして次の結論に進んでください。

《解説開始》

SIRモデルの大前提は

1. 「連続かつ微分可能」な確率密度関数
2. 感染の感受性は人や環境によって変わらないという「斉一性」
3. 感染者が外部と流入・流出しないという「閉鎖系」

です。

1.ですが、現実の離散的なデータを近似しているため、感染者数が極端に減った場合には、モデルの計算値から大きく外れる可能性があります。真面目にやるなら、量子力学のように、離散的なデータを扱えるように改良する必要がありますが、私はギブアップです…[たらーっ(汗)]

2.については、誰もが同じ条件かつ一定の確率で感染するはずはありません。新型コロナは、性別、年齢、血液型などで感染率が違うことは、実証データで確認されているからです。

3.ですが、今回のように、感染源が大量の帰国者と推定されるケースでは、モデルを修正しないと使えません。ただし、入国制限で外部からの流入をシャットアウトした後なら成り立つはずです。

この中で、一番影響がありそうなのは2.です。

《解説終了》

結論としては、やはり2.の斉一性が問題の核心のようです。

そうしたら、あっさり解答が見つかりました。新型コロナは全員には感染しないらしいのです。次は専門家会議の尾身茂副座長のインタビュー記事からの抜粋です。

インフルエンザとの違い「クラスター」とは

ここに感染した人が5人いたとします。このウイルスは不思議なことに、5人全員感染したんだけれど、そのうち4人は、濃厚接触の方がいても感染させないんです。人に感染させるのは、5人のうちの1人だけ。これがインフルエンザの場合は、5人が感染すると、それぞれが1人とか、2人いかないくらいの人に感染させるんですけど、今回のコロナは、5人のうち4人は、自分は感染しても近くにいる人にうつさない。

ただ、そのうちの1人が例えば飲み会とか、ライブハウスなど、私どもが挙げた3つの条件、腕が届く距離に長くいたり、複数の人がいるところ、換気の悪い密閉空間に行くと、そこでいわゆる集団感染、つまり、クラスター感染が起きます。そして、またそこで感染した5人のうちの1人が次にまたどこかに行って集団感染を起こす――こういうクラスター(集団)を介して感染が広がるという特徴があります。

インフルエンザの場合は感染した1人ひとりが少しずつ広げるんですけど、コロナウイルスの場合は他の人にうつすのは5人のうち1人だけ。でも、その人が1人どころか何人もの人に広げてしまう。そういう理由があるので、対策の要諦は、このクラスター感染の連鎖をどこで断ち切るかということだと思います。

この文章は「へ~、そうなんだ」と軽く読み飛ばしていたのですが、実は極めて重要と思われる情報が含まれています。

尾身氏によると、インフルエンザは誰もが同じ確率で感染する可能性がある、つまりSIRモデルが成り立つ前提が(ある程度)満たされていて、実証データの裏付けもあります。
ところが、新型コロナの感染者が他の人にうつすのは5人のうち1人だけだそうです(=多くの人に感染させる「スーパースプレッダー」が存在する)。つまりSIRモデルが成り立つ前提は必ずしも満たされていません。

奇妙なことに、スーパースプレッダーの存在は、統計的に示されているだけで、その人が普通の人の何倍何十倍のウイルスをまき散らすことが臨床的に実証されているわけではないようです。おかしいですよね?

従来の発想を逆転すれば、これらの事実は理論的に矛盾なく説明できます。

新型コロナは、性別、年齢、血液型などで感染率が違うことが実証データで確認されています。それなら、確率的にたまたま感染しやすい人のグループや環境ができることもあるはずで、そこに「感染者」がいたとしたら、その人は確実に「スーパースプレッダー」になるでしょう。
現に、高齢者が集中する病院や施設での大量感染がニュースになっていますが、これがスーパースプレッダーのせいだという人はいないでしょう。

抽象的な表現だとわかりにくいかもしれないので、たとえ話で説明します。

仮に、ビーカーに水を入れて、一滴のインクをたらしたとします。もちろん、水が人間でインクが新型コロナです。SIRモデルは、このインクはビーカー内の水の全体に均一に拡散するというモデルです。しかし、実際には、そういう状態になるのには非常に時間がかかります。また、水とインクならいいのですが、水と油なら、いくらビーカーをかき回してもそんなことは起きません。この場合は、SIRモデルは成り立ちません。

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出所:ハリオサイエンスのツイート

ブラタモリを見ている人なら、土地の浸食を考えてみてください。土地が人間で風雨が新型コロナです。土地が均一に浸食されるなんてことは極めて例外で、最初にできた小さな凸凹が時間ともに拡大していきます。固い岩盤は、時間がたってもなかなか浸食されません。

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出所:Wikipedia

では、現実には、今回の新型コロナで「感染の感受性は人や環境によって変わらない」という条件は満たされているのでしょうか? そんなことは考えるまでもなく明らかでしょう。単純なSIRモデルが成り立つはずはありません。

ブラタモリで楽しげに地層を観察するタモリよろしく、現実には「固い岩盤=ウイルスに感染しない人」が一定の割合で存在するはずです。だから、最終的に全員が感染するとか、抗体ができるとか、集団免疫が成立するなんてことはないのでしょう。

こう考えると、新型コロナの感染者数が指数関数的に拡大して、最終的には人口の60%が感染する…といったことは、どう考えても起こりようがないことになります。そしてまた、これは実証データとも一致します。

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出所:新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言(2020年5月1日)

繰り返しになりますが、新型コロナは、性別、年齢、血液型などで感染率が違うことは、実証データで確認済です。その感染に対する「感受性」が人によって極端に違うと仮定すると、現実のデータがうまく説明できます。現象をシミュレーションやデータでうまく検証できればいいのですが。

さて、ここからは、本当に余談です。

聞くところによると、西浦氏は「日本に1人しかいない疫学の数理モデルの専門家」だそうです。海外経験も長いので、英語も堪能なようですし、有名なオープンアクセスジャーナルであるBMJのEditor in Chiefも務めています。いやぁ、本当にすごい。

ただ、それでも専門家会議のグラフの数値が二転三転するのは、どうしても腑に落ちません。→下のグラフの単位に注目してください。

【4月3日のグラフ】

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出所:時事通信 4月3日付
新型コロナ、厳格な外出制限を 接触8割減で急速に減少―北大教授が試算

しかし、4月22日の提言では、ピークがいつのまにか6000人→500人に変更されています。どうしたんでしょうか?

【4月22日のグラフ】

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さらに、上の4月22日のグラフには致命的な間違いがあります。
数値を読み取ると、対策なしだと5日で感染者が5倍になるとあります。緊急事態宣言は4/7→効果が出るのは2週間後の4/21。その間は対策なしだから、4/21の感染者は4/7の300人の100倍で「3万人」にならないとおかしい。
しかし、実際の数は300人だから、なんと1/100。
これはひどい!

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また、西浦氏の採用している(らしい?)SIRモデルでシミュレーションしてみましたが、いくらパラメーターをいじっても、現実のデータとは合いません。どんなパラメーターを使ったんでしょうか?

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それだけではなく、根拠となるバックデータと数理モデルも、4月3日の「42万人死亡説」の発表から1ヶ月たって現在でも非公表です。

と思ったら、5月1日の提言では、なんとグラフから具体的な数値が消滅してしまいました。いくらなんでもこれははひどい!

【5月1日のグラフ】

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【5月4日】

さらに驚いたのは、最新の5月4日の提言からは、なんとグラフ自体が消滅! こんなことは言いたくないのですが、もう無茶苦茶です。

あまりにも不思議だったので、ふと思いついて単独著者の論文を読んでみました。なるほど、いままでの状況が非常によく理解出来たので報告しておきます。お暇な方は、ぜひ一読されることをおすすめします。[たらーっ(汗)]

最後になりますが、昨日5月5日の拙ブログのアクセスランキングは、なんとSS-BLOGの1位になりました。池田信夫氏のツイートでのご紹介に深く感謝いたします。いつもありがとうございます。

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