新型コロナは沈静化しつつある!?【5月14日・西浦氏が自説を全面撤回!?のおまけ】《追記あり》 [新型コロナ]

前回の記事の続きです。
いくつか質問をいただいたので、代表的なものに回答しておきます。
1. 西浦氏は自説を撤回していないのではないか
2. 「42万人死亡」は何も対策しない場合で、実測値と違うのは当然
まず、最初の質問から行きます。
【1. 西浦氏は自説を撤回していないのではないか】
次は、42万人死亡を避けるために「8割削減」が必要だと主張していたときの様子です。
このときは、明確にR0=2.5としています。

もし、自信があるなら、今回もR0=2.5で「42万人死亡」と堂々と主張すればいいはず。
あるいは、R0の数値を下げるなら、たとえばR0=1.7として、変更した理由を説明すればいいのです。
しかし、今回のRtの計算方法では、まったく具体的な数値を出しませんでした。
つまり、実質的に自説を撤回したということです。
さらに面白いのは、Rtの実測値のグラフです。

出所:プレゼン資料
なんと、3月末からのCの部分は、ずっとRt<1なのです(青い曲線)。
もちろん、「42万人死亡説」を発表した4月3日もそうです。
これを、新型コロナクラスター対策専門家の4月15日のツイート「社会全体で8割の接触減が必要である理由」と比べてみます。

どう見ても、新規感染者数のピーク=このグラフの①=実測値のグラフの3月27日、です。
素直に解釈すると、3月27日までは何の対策もなく、翌日から突如8割減になったということになります。
ご存じのとおり、西浦氏の「42万人死亡説」の公表は4月3日、緊急事態宣言は4月7日です。
その何日も前に、突然降って湧いたように8割の接触減が起きたことになります。
タイムマシンがあるわけもなし、こんなことを素直に信じる人はいないでしょう。
自説を撤回するつもりがないなら、あまりにもバカバカしいこんなミスを公表するはずもありません。
つまり、西浦氏の説明は、結果的に自説を撤回することも想定していたということです。
ただ、メンツもあるので、そのままストレートには言わなかったのでしょう。
本当のところはわかりませんが…。
ぶっちゃけた話、それでも「西浦氏は自説を撤回していない」と主張している人は、よっぽどデータ分析のセンスがないか、ポジショントークか、あるいはその両方だと思いますよ。
![[パンチ]](https://blog.ss-blog.jp/_images_e/153.gif)
次に行きます。
2. 「42万人死亡」は何も対策しない場合で、実測値と違うのは当然
基本的に、上に書いたことの繰り返しです。
しつこいようですが、西浦氏の「42万人死亡説」の公表は4月3日、緊急事態宣言は4月7日です。
それまでは何も対策はしていないはずですが、実測値を見ると「3月28日から8割減になった」ことになります。
4月3日現在の死亡者は69人なので、どう頑張っても1万倍近くの42万人には届きそうもありません。
出所:東洋経済 新型コロナウイルス国内感染の情報
現実のデータを見ると、まったくバカバカしい話と言うしかないのです。
ですから、たとえば、234uvwさんのツイート
このプレゼンはRtの数理的推定に関するレビュー。
・R0を撤回という説明は無い
・SIRモデルは使っていない
・数理的説明が目的で、自粛やクラスター対策の効果はレビューの対象外(Rtの変化点 3/25の外出自粛要請は記述)
・流入は取込済
は、的外れな指摘ということになります。
おそらく、ポジショントークなんでしょうね。
いくらなんでも、こんな単純なことがわからないはずがない…。
そもそも、「Rtの数理的推定」に具体的な数字がないのなら、結果が当たっていないことを告白しているようなものです。
シミュレーションのモデルだけ公表して、肝心の結果は計算してないので出せません、というのならしゃれにもなりません。
コンサルタント会社だったら、間違いなく倒産します。
科学ジャーナリストは超文系だから、こんな無茶苦茶な説明でも納得してしまう…というのも悪い冗談でしょう。
ということで、私は事実上の「謝罪会見」だと思っています。
ただ、現実と3桁も違う「42万人死亡説」について、彼ら彼女らが誰一人として質問しなかったことは、不可解な謎として残ります。
ひょっとして、事前のシナリオどおりだったのかも…。
最後になりますが、池田信夫さんの紹介のおかげで、本日のPVが3万を突破して過去最高を大幅に更新しました。
大変ありがとうございました。
【お知らせ】
わかりやすくするため、初出の文章を微修正しました。
なお、ランキングは当然ながら1位、最終的なPVは39,643回でした。
そうしたら、なんと翌日15日にも1位になりました。さすがにこれには驚きました。
【2020.5.16 23:00追記】
驚いたことに、「1. 西浦氏は自説を撤回していないのではないか」には、彼はニコ生の講演でRtや42万人について話さなかったので、「全面撤回」と言えないのではないかと指摘がありました。全面撤回と書くのは「フェイク、デマ」だというのです。
いやぁ、実にいろんな人がいるものです。
こうなったら、誰にもわかるように露骨に書いておきましょう。
![[ちっ(怒った顔)]](https://blog.ss-blog.jp/_images_e/141.gif)
数理モデルのプロが、厚労省の事務室で地上波テレビに出演し「Rt=2.5だと42万人死亡」と公言した。しかし、その後の講演では数字を隠し、グラフをこっそり「700人」に訂正して、この訂正について何も説明しなかった。それを事実上の「全面撤回」だと指摘したら、「フェイク、デマ」だと怒られた。
まさか、こんな慣習がある業界は一般的ではないでしょう。
![[たらーっ(汗)]](https://blog.ss-blog.jp/_images_e/163.gif)
2020-05-14 22:56
コメント(2)
ブログ興味深く読ませて戴きました。
私は環境学・生態学において、生態系シミュレーションを使った解析を専門としております。
5/13のニコ動での西浦氏のレクは一日遅れで見ました。数式の説明に終始し、丁寧で分かり易かったです。
ただ、ご指摘のように、重要な部分が抜けていたという印象です。
現実の現象をシミュレートする場合、最も重要なことは「実測値との照合」(バリデーション)なのですが、それがレクの中でも全く出てきませんでした。なので、現実の現象に合っているのかどうか全く分かりません。
この件、西浦氏にメールを送り回答待ちですが、お忙しいのか、ご返事が戴けていません。ご丁寧な方のようにお見受けしましたので、必ずご返事戴けるものと期待しております。
私自身は、SEIRモデル(東大大橋先生がネットにアップしているもの)を作り、実測値でバリデートした結果を4月中旬頃から自分のFBやツイッターに挙げていますが、マニアックなことなので、反響が小さいです。
重要な国の決定に関わることですので、内閣府と厚労省には4/25当たりに連絡したのですが、今までなしのつぶてです。
クラスター対策班には計算する人が西浦氏しかいないようですが、IPCCのように、複数の計算結果を出して議論すべきだったと思います。今からでも。
もしご興味ありましたら、連絡ください。計算結果をお送り致します。
tamyama@hiroshima-u.ac.jp
by 山本民次 (2020-05-15 21:36)
山本民次さん
ありがとうございます。
このまま公開して問題なかったでしょうか?
不都合であればお手数でもご連絡ください。
なお、公開されているものであれば、アドレスをお教えいただけますでしょうか。
ぜひ公開させていただきたく、どうかよろしくお願いいたします。
by ABOFAN (2020-05-15 21:48)