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新型コロナは沈静化しつつある!?【5月13日・西浦氏が自説を全面撤回!?】 [新型コロナ]

virus_corona.png

前回の記事の続きです。

4月3日にクラスター対策班のメンバーの西浦氏から「42万人死亡説」が発表され、それを受けて4月7日に安倍首相が「緊急事態宣言」を発出し、5月7日に5月末まで延長されました。
しかし、新規感染者が激減したため、早くも明日5月14日には大多数の府県で解除される見込みです(ただし、東京・大阪・北海道などはそのままの見込み)。

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出所:東洋経済 新型コロナウイルス国内感染の状況

それは、現在の死亡者は約600人だからです。いくらなんでも3桁は違いすぎ!

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おっかしぃ~なぁと思っている人も少なくないでしょう。

西浦氏はいくつか致命的な計算ミスをしていますが、内容は中学生でもわかるような単純なものです。
そのうち誰もわかるようになるはず…と思っていたら、タイミングよくそういう機会が訪れました。
意外なことに、ほとんど気が付いている人がいないようなので、私自身の備忘録として簡単に解説しておきます。

それは、ニコニコ動画での西浦氏自身の説明です。

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出所:茂木耕作[気象Youtuber]さんのツイート
プレゼン資料

動画を見ればわかりますが、西浦氏は自説をほぼ全面撤回しています。
事実上の「謝罪会見」と言ってもいいのかも知れません。
とても正直なので、かなり好感度がアップしました。[わーい(嬉しい顔)]

具体的には、

1. R0=2.5ではない
2. 専門会家会議は3月の大量の感染した帰国者に気づかず被害が拡大
3. 死亡者数の予測はSIRモデルを使用
4. 自粛やクラスター対策は効果なし

ついでに、私のシミュレーションは妥当とのこと。[るんるん]

もちろん、他の人の手前、ストレートにそうは言えないでしょうから、私が代わりに解説しておきます。

では、順を追って説明します。

【1. R0=2.5ではない】

西浦氏の「42万人死亡説」は、R0=2.5が前提でした。

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出所:新型コロナクラスター対策専門家のツイッター

しかし、ニコ動の説明では、次のように「確率的ゆらぎ=>精密な推定が困難」として実質的に撤回しています。
corona134.JPG
その後にも、R0=2.5という説明はありません。

【2. 専門会家会議は3月の大量の感染した帰国者に気づかず被害が拡大】

この点も、さらっとグラフで示しています。
corona135-1.jpg
実際には、ウイルス=RNAの分析により、ヨーロッパから大量に感染者が流入したことは確実です。

【3. 死亡者数の予測はSIRモデルを使用】

厳密さを重視して積分で説明していますが、感染者が指数関数的に増加するということですから、次にあるように、要するにSIRモデルということです。
corona136.JPG
【4. 自粛やクラスター対策は効果なし】

このグラフを見て、思わず爆笑してしまったのですが、さすがに説明はしていませんでしたね…。

corona137.JPG

では、もう少しわかりやすく説明しましょう。

下の日本全体のグラフ(説明を追記しての再掲)を見てください。
青の曲線がRt(実効再生産数)となります。青の点線は値が1のラインを示しているので、実際の値がこの点線の下になるようにコントロールできればいいことになります。

corona138-3.jpg

この数字が大幅に下がったのは、A:1月末の数日、B:2月下旬から3月上旬にかけて、そして C:3月末から現在までの3回です。

では、これらの時期に人との接触が何割も減ったのでしょうか?

志村けんさんが亡くなったのは3月29日で、小池都知事が都民に自粛をお願いしたのは3月25日です。
ですから、この数値が3月末から大きく下げたのは当然のことで、不思議でもなんでもありません。
ただし、東京都のデータでは、この時期には数値の低下の根拠になるほど自粛している様子(8割減)は見られないようです。

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出所:東京都 新型コロナウイルス感染症対策サイト

緊急事態宣言は4月7日ですが、Rtの数値はほとんど変化せず、影響があったかどうかは不明です。

次のグラフは、通りすがりさん紹介のApple社提供の移動傾向です。
本格的に自粛が始まったのは、やはり3月下旬からであることがわかります。

corona122.JPG

もし、「自粛」でRtが下がったとするなら、Aの1月末と2月下旬の数値の低下は説明できません。また、この数値に4月7日の緊急事態宣言の影響が見られないこともおかしいのです。
つまり、現実のデータを見る限り、クラスター対策班や自粛の効果はなかったことになります。
※クラスター対策班発足の2月25日には、既にRtが1未満に低下

なお、3月のRtの低下は入国制限のためです。ここでは、池田信夫氏の解説を紹介します。

SIRモデルは閉鎖系なので、今回のように海外からの帰国者が感染源になる場合には使えない。少数の感染源から指数関数で増えたのではなく、感染源になる帰国者が増え、帰国制限された3月末で増加が止まった。緊急事態宣言は最初から無意味だった。

corona118.JPG
出所:池田信夫氏のツイート

繰り返しになりますが、Rt(実効再生産数)が増大した時期には、①2月の第一波は中国(武漢)からの帰国者、②3月のより強力な第二波はヨーロッパからの帰国者であることは、ウイルスの種類の調査により明らかです。

《日本全体のグラフの再掲》
corona138-3.jpg

これらの結果から判断できるのは、もともと新型コロナのRtは1より小さく、何もしなくとも感染は終息するということです。

【私のシミュレーションは妥当】

余談ですが、私のシミュレーションではRt=0.8で一定としたのですが、Cの3月下旬以降の数値はこのことを裏付けています。なお、2次感染は5日後としたのですが、西浦氏の実測値では4.8日。これは、実測値のRtが0.8よりやや小さいことと一致します。
なぜなら、2次感染までの期間が短くなると、より短期間で感染者が増えるため、Rtを小さくしないといけないからです。修正後のRtは0.75ほどなので、ほぼ実測値と一致します。

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参考までに、佐藤彰洋氏の推測だと、ヨーロッパからの帰国人感染者は2,500人。R=0.8だと、1人が5人(0.8+0.8^2+0.8^3…)に感染させることになるので、累計の感染者数は感染源2,500人+感染者2,500人×5=1万5,000人。現実の数字にぴったり一致します。逆説的な言い方になりますが、シンプルなSIRモデルは意外に当たるようです。

つまり、私のシミュレーションはまあ妥当だったということになります。[るんるん]

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これでハッピーエンドになるといいのですが。[手(チョキ)]

【お知らせ】
初出の画像・文章を微修正し、Entire Japanのグラフに入国制限日を追記しました。
補足説明はこちらです。

コメント(16) 

コメント 16

Gくん

拝読いたしました。2月上旬の中国武漢由来の第一波(グラフ①)、3月中旬からの第二波(グラフ②)から、入国制限に効果があったは、明白です。
自粛の効果は、限定的・自然収束に取り込まれるのでしょうか。これで傾向は、わかりました。第三波(その程度は小さいとは予測します)来襲に備えて、経験則ができたと思います。
by Gくん (2020-05-14 10:25) 

ABOFAN

コメントありがとうございます。次回は別のパターンかもしれないので、情報収集と分析能力の強化が必要ですね。
by ABOFAN (2020-05-14 12:23) 

Aくん

1. R0=2.5ではない
というのは自粛などの対策をしなかった場合の話では無いのでしょうか?西村さんの話はてっきり「何もしなければこれくらいの人数が死にますよ」という話であって、自粛などの効果が入っている現実との差異があることには何ら不思議は無いような気がするのですが...
by Aくん (2020-05-14 19:16) 

ABOFAN

42万人が死亡すると西浦氏が発表した4/3時点で、既にRt<1でしたよ。Entire Japanのグラフを見てみてください。
by ABOFAN (2020-05-14 20:24) 

sarkov28

私は西浦氏の諸々の説明には幾つか疑義があり、ABOFAN 様の説明には注目すべきものもあると思いますが、一方でわからない点があります。
ご指摘のように、3月末以降の Rt は 0.8 程度だったと思います。
ABOFAN 様は、Rt が 0.8 だったことは Apple 社による移動傾向データに示されている自粛と関係がないとお考えのようですが、なぜそのようにお考えになるのでしょうか。
私は、Rt = 0.8 は、複数の要因の帰結であり、自粛による接触機会の減少が Rt 低下に寄与した可能性は否定できないと思います。
by sarkov28 (2020-05-14 22:41) 

ABOFAN

拙ブログをご覧いただき、ありがとうございます。
>Rt が 0.8 だったことは Apple 社による移動傾向データに示されている自粛と関係がない
→Cの3月末以外は特に対策もされてなさそうなのに、Aの1月末とBの2月中旬もR(実効再生産数)は1未満にまで下がっていきます。
https://abofan.blog.ss-blog.jp/2020-05-05
よろしくお願いします。
by ABOFAN (2020-05-14 23:25) 

津留崎潔

結局のところRt<1だったという事ですね。
私は東京都民で中央線沿線の実行再生産数のグラフを参考値として眺めていますが、3月下旬から値がさがり始め、4月の中旬には概ね1以下で推移しています。グラフのCとほぼ同じ動きと思います。そしてBの時期も同様だったとすれば自粛前の満員電車の状態でもRt<1だったと考えられます。であれば驚きで、自粛の意味は無い(限りなく薄い)と仮定出来ると思います。
この秋冬にむけて、まず実行再生産数のモデルの再構築が課題ではないでしょうか。西浦教授には全てを開示してもらいたいですね。
by 津留崎潔 (2020-05-15 00:52) 

ABOFAN

生データは保健所しかないらしいので、都が集計する気になれば、結果は簡単に(現実の作業はともかく)出るはずです。
他のデータとの整合性はあるので、ほぼ間違いないと思っています。
by ABOFAN (2020-05-15 08:05) 

さっつん

記事を拝見いたしました。責任どうこうではなく、今後の対策として今回の結果を検討していくのはとても重要なことなんですね。大変勉強になりました。ありがとうございます。
ただ、何点か教えていただきたいところがあります。
①AでのRt低下について
春節でのインバウンド客が帰国するころに当たっていると思います。中国人感染者のカウントがされなかった場合、そもそも見かけ上Rtが上がっていたという可能性はありますか?
②BでのRt低下について
居酒屋・風俗は2月は閑散期であり、さらに2月16日には政府より不要不急の外出を控える要請がありました。そのため出勤停止など明らかな自粛はないまでも、緩やかな自粛状態だったとは考えられませんか?
(発表されている限りでは、2・3月(海外からの感染者が流入する前)は感染者の発生は居酒屋・風俗などいわゆる3密の状況がほとんどでした。それを考えるとクラスター対策に意味がないというのは腑に落ちないところがあります。)
こうしたデータ解析については全くの素人ですので頓珍漢な質問でしたら申し訳ありません。ただ自分の好奇心からの質問ですので、お時間があればご回答いただけるとありがたいです。

by さっつん (2020-05-15 09:54) 

arai

「自粛に意味がない」という主張について、根拠に自粛期間でなかった時にRtが同程度に低かったことを挙げていますが、逆に人との接触を劇的に減らした自粛にRtへの寄与がないというのは不自然だと思うのですが、いかがお考えでしょうか。特にポイントAについては、コロナを疑う医師が比較的少なかったことや、サンプル数が少なくRtの信頼性が低いことから、根拠として挙げるのは妥当でないと思います。
自分の考えとしては、検査体制や基準の変化、や年度末の送別会等複雑であるため、Rtのみで自粛の効果の有無を結論づけることはできないと思っております。
by arai (2020-05-15 13:22) 

ABOFAN

さっつんさん

ありがとうございます。
①AでのRt低下について
申し訳ありませんが、データがないのでわかりません。ただ、たぶんそうだとは思います。
②BでのRt低下について
私が知る限り「緩やかな自粛状態」というエビデンスはありません。 クラスター対策に意味がないのは、2/25のクラスター対策班設置「前」にRtが低下し、その後はほとんど変化がないことから明らかです。
よろしければ次の記事もどうぞ。
新型コロナは沈静化しつつある!?【5月4日・クラスター対策は実行不可能だった?】《追記あり》 https://abofan.blog.ss-blog.jp/2020-05-04

by ABOFAN (2020-05-15 20:04) 

ABOFAN

araiさん

ありがとうございます。
人との接触を劇的に減らした自粛にRtへの寄与がないというのは不自然
→海外のロックダウンで実証されています。皮肉なことに、感染源No.1の場所は自宅だったという報告もあります。
ポイントAについては、コロナを疑う医師が比較的少なかったことや、サンプル数が少なくRtの信頼性が低いことから、根拠として挙げるのは妥当でない
→サンプルサイズが小さいですが、統計的誤差(薄い青)を考慮しても、結論は変わりません。
Rtのみで自粛の効果の有無を結論づけることはできないと思っております。
→Rtに意味がないなら、上のRtの質問は意味不明ですが?

by ABOFAN (2020-05-15 20:05) 

sarkov28

ご回答、ありがとうございます。
私はもし「日本における新型コロナの Rt は、もともと 0.8 である」が正しいのなら、素晴らしいことだと考えます。
しかしもし Rt がもっと高かったら、「Rt は 0.8 なんだから、自粛は不要だ」と「誤って」考えて行動してしまうのはよくない結果を招くと思います。
一方、Rt = 0.8 が正しければ、自粛を続けることは経済の面において犯罪的な抑圧政策になります。
したがってこの件は、できる限りの議論を尽くす価値があると考えます。

さてご指摘のように1月末と2月半ばにも Rt の減少があります。
このころのコロナは、3月と異なり武漢株でした。
「武漢株の日本における Rt は 0.8 程度である」
「欧州株の Rt はもう少し大きいが、3月末からの移動減少による接触低下の寄与もあり、0.8 程度になった」
という可能性はありませんか。

by sarkov28 (2020-05-15 23:24) 

ABOFAN

グラフを素直に見る限り、Rtは種類に関係なく0.7~0.8と思われます。
正確な予測は、本来専門家会議の仕事ではないでしょうか。

by ABOFAN (2020-05-15 23:35) 

sarkov28

重ねてのご回答、ありがとうございます。
正確な予測が専門家会議の仕事であるのは、全くその通りです。我々が今論じているような論点については、間然するところがないのがあるべき姿だと思いますが、残念ながら実態がそうでないために、ABO FAN 様も一連の問題提起をされているのだと存じます。

失礼ながら私は、ABO FAN 様の「自粛やクラスター対策は効果なし」という表現は、踏み込み過ぎではないかと思います。この論点は、ABO FAN 様にとっては枝葉末節なのかも知れませんが、私は重要だと考えます。
現時点で入手可能な情報からの適切な表現は「自粛やクラスター対策は効果なかった可能性も」程度ではないでしょうか。
もし私であれば「自粛やクラスター対策は想定したほどの効果はなかった可能性も」と書くかも知れません。

ABO FAN 様のように「自粛に効果なし」と断言するには、Rt = 0.8 となっている理由の中に、自粛の効果が含まれていないことを立証しなければなりません。
しかしながら、先日からの2往復の質問とご回答を総合すると、
・1月末と2月半ばの Rt = 0.8 は、広がっていたのが武漢株であることが原因の一部かも。
・3月末からの Rt = 0.8 は、Apple 社提供のデータにある接触機会の減少が原因の一部かも。
・したがって3月末に接触機会が減少していなければ、Rt は 0.8 より大きいかも。
という可能性を排除できないのではと思います。
したがって、欧州株が国内にある状態で(あるいは海外から流入する可能性がある状態で)、自粛せずに(接触機会を減少せずに)生活した場合には、1.0 < Rt の状態、すなわち感染が拡大する状況になる可能性を排除できない、したがって「自粛は効果なし」と断言することはできないと考えます。
もちろん、将来において、「日本において自粛は効果なし」と断言できるようになる可能性は、残っていると思いますし、そうなることを望みます。
by sarkov28 (2020-05-16 15:43) 

ABOFAN

「日本において自粛は効果なし」と断言できるようになる可能性は、残っていると思います
→海外で強制的にロックダウンをしたケースでも、効果は非常に限定されます。ましてや、日本の自粛程度では目に見える効果が出るはずがない。データ的には既に結論が出ています。
もっとも、政治的には緊急事態宣言はやむを得ないでしょう。なにしろ、国民の8割が望んでいたのですからね。
状況が落ち着いてきたので、今後は粛々と事務的に手続きを進めればいいと思いますが。
ただ、これらのことを国民に納得できるように説明するのは非常に難しいので、政治家の仕事として残ります。
by ABOFAN (2020-05-16 16:12) 

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