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朝鮮半島南部には弥生人がいた【追記あり】 [ゲノム解析で古代史]

去年の論文ですが、百済人(韓国・群山)のゲノム解析の結果です。

Don-Nyeong Lee, Chae Lin Jeon, Jiwon Kang, Marta Burri, Johannes Krause, Eun Jin Woo, Choongwon Jeong
Genomic detection of a secondary family burial in a single jar coffin in early Medieval Korea
Amerian Journal of Biological Anthropology
Volume179, Issue4, December 2022, Pages 585-597
https://doi.org/10.1002/ajpa.24650

見れば分かるとおり、核ゲノム解析の結果は、現代日本人(=弥生人)とほぼ同じです。しかも、現代韓国人(ウルサン)より似ているのです。

ajpa24650-fig-0003-m.jpg

なお、この論文には、Y染色体とミトコンドリアのハプログループも掲載されています。

BMC1.JPG

Y染色体のQ1aは3人で、日本には極めて少ない(コンマ以下)のですが、ゼロではありません。日本よりは、韓国や中国東北部に多いようですが、多くても数パーセントです。

O1b2a2a1a (O-CTS7620)は1人で、現代の日本に多いグループ(約30%)で、韓国では日本よりやや少なくなっています(約30%)。

ミトコンドリアはD4とB5なので、基本的に日本にも存在するグループです。

よって、Y染色体とミトコンドリアだけで判断するとちょっと迷います。

ただ、最初に書いたように、核ゲノム解析の結果が決定的なので、このグループはほぼ間違いなく「弥生人」でしょうね。

これで、朝鮮半島南部で発見された古代人骨は、ほぼすべてが弥生人ということになります。

そういえば、最近は渡来人が水田稲作を伝えたという話は、ネットではあまり聞かなくなった気がします…。こんな感じで、ゲノム解析の結果が続々発表されているからかな?

なお、現代韓国人は紅山文化と弥生人・縄文人の混血という話もありましたが、これはY染色体で否定されます。というのは、紅山文化の遺跡から発見された人骨は、多くはハプログループNだからです。

Y Chromosome analysis of prehistoric human populations in the West Liao River Valley, Northeast China.
Cui, Y., Li, H., Ning, C. et al.
BMC Evol Biol 13, 216 (2013).
https://doi.org/10.1186/1471-2148-13-216

ハプログループNは、古代の半島人ではあまり見かけませんし、現代韓国人でもせいぜい数%ですから、少なくともメインではありません。

Y染色体ハプログループの分布 (東アジア)

現代韓国人で多いのは、元々は中国の中原(黄河中流の長安・洛陽あたり)に多かったO2です。たぶん、ここの人々が中国全土、そして朝鮮半島にまで広まった可能性が高い。

→日本語の意外な歴史
パズルの最後の1ピースを探し求めて、注目される山東省のDNAのデータ

韓国高霊池山洞44号墳出土人骨のミトコンドリアDNA分析

→ Y-chromosome-based genetic pattern in East Asia affected by Neolithic transition
Shao-Qing Wen, Xin-Zhu Tong, Hui Li
https://doi.org/10.1016/j.quaint.2016.03.027

以上のことから、現代韓国人は、弥生人(縄文人)と中国人の混血であるという結論になります。

細かいことを言うと、女性由来のミトコンドリアは韓国は日本とさほど変わらず、男性由来のY染色体が多少違うということになります。

一方、中国本土に対してはこの逆で、女性由来のミトコンドリアは結構違いますが、男性由来のY染色体はそこまで変わらないということになります。

とここまで書いたら、時間になってしまいました。
卑弥呼=天照大神の文献学的に決定的な証拠?を見つけたはずなのですが、これは次回に。

【2023.10.4追記】

韓国の土壌は基本的に花崗岩が風化したものなので、日本と同じ酸性土壌です。
骨はアルカリ性のカルシウムからできているため、化学反応により短期間で溶けてなくなってしまいます。
だから、縄文人などの古代日本列島人の骨では、ゲノム解析が極めて困難なのです。

そんなことで、日本最古のゲノム解析の結果は、核DNAでは6300年前ものはなかったのではないかと思います(ミトコンドリアなら古いのもあります)。

また、炭素14法はコンタミネーション(汚染)に弱いので、地下水の浸透などで誤った結果が出てしまいます。地下水は何千何万年前のものが多く、炭素が含まれている場合は測定すると、見かけ上年代が古く出るからです(実例もあります)。

現場の情報がないのでなんと言えませんが、6300年前という結果はコンタミネーションによる可能性もあるのでは?

【2023.10.5追記】

韓国には、Y染色体のハプログループD(日本独自)が極端に少ないのですが、たぶん日本が白村江で負けたときに一掃されたのだと思います。

このことは、朝鮮半島古代人Yの染色体では、白村江以前はO1b2は今よりもずっと少なかったことを意味します。つまり、当時の朝鮮半島では、当時の日本よりO1b2はずっと少なかったはず。やはり、O1b2は日本列島が発祥の地である可能性が高い。

対して、ミトコンドリアのハプログループは日本とあまり変わらないので、白村江敗戦後でも、女性は現地で生き延びたということを意味します。


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