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ネアンデルタール人とデニソワ人にはcisABが多い?【訂正・追記あり】 [論文]

前回「ネアンデルタール人にはA型がいなかった?」の続きです。

そうしたら、PLOS ONEで別の論文を見つけました。

Blood groups of Neandertals and Denisova decrypted (PLOS ONE)

この論文の著者は、どうやらcisABを理解してないらしく、無理矢理A型かB型に当てはめ、こんな図を描いています。

専門家に確認したところ、このPLOS ONEの論文の方が正しいとのことでした。
整理した内容については、お手数ですが最後の訂正文をご覧ください。

journal.pone.0254175.g001.PNG

この図を見てはたと思いつきました。

以前に紹介した論文、

ヒトのA型遺伝子はB型遺伝子とO型遺伝子の組換えで誕生した…という論文
ヒトのA型遺伝子はB型遺伝子とO型遺伝子の組換えで誕生した…という論文【続】

では、A型遺伝子はB型遺伝子とO型遺伝子の組換えで誕生したとありますが、↑のcisABの塩基の突然変異で1つだけ変わると、

・Vindija 33.19はB型になります。
・AltaiとChagyrskaya 8はA型になります。

そして、cisABよりは、A型やB型の方が免疫力が強いのは明らかなので、いったんA型やB型ができてしまえば、淘汰圧に打ち勝ってA型やB型が増えることは確実です。

こう考えると、すべての事実に辻褄が合ってきます。

面白いことに、Blood groups of Neandertals and Denisova decrypted (PLOS ONE) には、北野さんの論文(ヒトのA型遺伝子はB型遺伝子とO型遺伝子の組換えで誕生した…という論文 )が参考文献に出てきますが、最初に紹介したOxrordの論文には出てきません。

なんで?

【2023.7.10訂正】

専門家に確認したところ、Oxford大学の論文は間違っており、訂正文↓も出しているとのこと。

https://academic.oup.com/mbe/article/38/12/5835/6383596

そして、この訂正文も間違っており、前出のPLOS ONEの論文↓が正しいのだそうです。

Blood groups of Neandertals and Denisova decrypted (PLOS ONE)

journal.pone.0254175.g001.PNG

なお、ABO血液型は複対立遺伝子のため、2本の染色体にそれぞれ遺伝子があります。
よって、人数は正しくは8人ではなく、2本の染色体×4人=8本でした…[バッド(下向き矢印)]

ということで、

・AltaiはAAのA型
・Vindija 33.19はBOのB型
・ChagyrskayaはAOのA型
・DenisovaOOのO型

が正しく、

1. ネアンデルタール人3人は、A型が2人(AA1, AO1)、B型が1人(BO)
2. デニソワ人1人はO型(OO)

という結論になります[たらーっ(汗)]

【2023.7.18追記】

↑の論文より前に、ネアンデルタール人2人がO型だったという論文が出ていたそうです。

Genetic characterization of the ABO blood group in Neandertals

皆様、情報提供ありがとうございます。

【2023.9.17追記】

その後、丸魚さんから、ネアンデルタール人の1人はcisABではないかと9/6付けでコメントをいただきました。
問い合わせてみましたが、確たる結論が出ないので、当面は両論併記にしたいと思います…[たらーっ(汗)]

コメント(12) 

コメント 12

この文章をみるとcisAB型からA型とB型が進化したということですか?

by (2023-07-09 13:16) 

ABOFAN

サンプルが少ないので断言はできませんが、このデーからはそう考える方が自然かと…。
by ABOFAN (2023-07-09 15:35) 

ありがとうございます。
by (2023-07-09 17:00) 

ニャー

https://abofan.blog.ss-blog.jp/2023-05-13
をみると、A型がB型とO型の組換えで誕生したのは26万年前。
plosoneで血液型が解読されたネアンデルタール人とデニソワ人は5万年くらい前なので、ネアンデルタール人にA型がみつかっても不思議ではないと思います。

by ニャー (2023-07-13 18:18) 

エンペラー

ネアンデルタール人の血液型を最初に調べた論文はおそらくこれです。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/pmc2629777/
ネアンデルタール人2人でO型がみつかっています。
2人だけで何が分かると思うかもしれませんが、これは統計学の常識で、最初に一個だけ調べたものはその後高い頻度であることがだいたいわかります。
ネアンデルタール人はO型の頻度がかなり高かったと予想されます。

by エンペラー (2023-07-18 17:40) 

ABOFAN

にゃーさん、エンペラーさん、ありがとうございます。
O遺伝子は、現代人と同じく半分ぐらいありそうですね。
余談ですが、1000ゲノムプロジェクトでは、「標準」の遺伝子型が決まっているのですが、調べたらO型でしたw
by ABOFAN (2023-07-18 21:01) 

丸魚

この2つの論文はオックスフォードの方が正しいですね。

オックスフォードの論文の訂正文ではO(B)型がO1型だったと訂正しているだけで、この論文全体が間違ってるというものではありません。この訂正文も間違っていると書いてありますが、どこがどう間違っているのですか?

逆にplosoneの論文は無茶苦茶です。この論文では、一塩基欠失がなくて配列がなんとなくA型のものはA1型と無理矢理当てはめています。一塩基欠失がなくてA型的な配列なものではO2型があり、オックスフォードの論文にある通りです。plosoneの論文はネアンデルタール人をA1型、B型、O1型に無理矢理当てはめていて、稀なタイプのO2型やB(A)型などが考慮されていません。

そもそも、オックスフォードの論文はmolecular biology and evolution(mbe)に載っていて、plosoneと比べて全然信頼性が違います。plosoneのインパクトファクターは3.7
でmbeは8800です(2022年)。plosoneは多少内容がしょーもなくても載ってしまいます。

オックスフォードの論文については斎藤成也先生も触れていました。(下の動画20分10秒から)

https://www.youtube.com/watch?v=qdri1zVMNNE

なのでオックスフォードの論文により

ネアンデルタール人

O1/B(A)
O1/O2
O2/O2

の3人

デニソワ人

O1/O1

の1人

が確認されたということです。

by 丸魚 (2023-09-06 12:16) 

ABOFAN

ありがとうございます。
確かに斎藤先生がそうおっしゃっていますね。
もう一度確認してみます。
by ABOFAN (2023-09-06 21:09) 

丸魚

よろしくお願いします。
by 丸魚 (2023-09-06 22:41) 

ABOFAN

どうも結論が出なそうです。
申し訳ありますが、当面は両論併記にしたいと思います。
by ABOFAN (2023-09-17 10:37) 

丸魚

分かりました。
確認ありがとうございます。
by 丸魚 (2023-09-17 12:50) 

ABOFAN

非常に残念です。自分で分析してもいいのですが、相当時間がかかりそうですので…。
by ABOFAN (2023-09-18 07:44) 

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