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その後のkikulog [kikulog]

その後のkikulogですが、
「ニセ科学とつきあうために(2010版)」というページができました。
http://www.cp.cmc.osaka-u.ac.jp/~kikuchi/nisekagaku/
そして、同じ名前の「ニセ科学とつきあうために(2010版)」という新しいエントリーもできました。
http://www.cp.cmc.osaka-u.ac.jp/~kikuchi/weblog/index.php?UID=1291292308
これは、非常に興味深い内容です。
面白いのは、いわゆる「マイナス・イオン」や「血液型と性格」を実質的に認めてしまっていることです。[ひらめき]
つまり、「血液型と性格」の否定側からいうと、実質的な敗北宣言と言っていいでしょう。
逆に肯定側からいうと、実質的な勝利宣言ともいえます。
そのせいかどうか、エントリーのコメントが少ないだけではなく、コメント中に「マイナス・イオン」や「血液型と性格」に関係するものは(少なくとも現在は)ありません。
正直でいいと思います。[わーい(嬉しい顔)]

例えば、「ニセ科学とつきあうために(2010版)」と、それ以前のもの、例えば、「ニセ科学入門」(2004年2月)での「血液型と性格」を比較してみると、面白いことがわかります。
2004年版では、いわゆる「血液型性格判断」には、明確な定義があります。つまり、「能見説」イコール「血液型性格判断」ということです。
 血液型性格判断のニセ科学性については語り尽くされているといっていいのだが、わかりやすい例なので、簡単にまとめておく。
 血液型性格判断の歴史は古く、1927年に古川竹二が出した学説まで遡る。もっとも古川学説は現在の血液型隆盛とは基本的に関係ない。現在の血液型性格判断に直接つながるのは1971年に出版された能見正比古の著書である。能見は学者ではなく、血液型に関する学術論文を書いたわけでもなさそうだ。その代わり、能見と息子の俊賢は血液型に関する多くの一般書を出版している。
しかし、奇妙なことに、2010年版では、「血液型性格判断」に正確な定義が見当たりません。うがった見方をすれば、「能見説」は否定できなくなった、とも考えられます。
もっとも、「血液型性格判断については特に説明を要しないでしょう」とあるので-ちょっと考えにくいのですが-単にスペースの関係で省いたのか、あるいは説明が面倒なのもしれません。
ただ、明確に変わった点もあります。それは、統計的に有意な差(大きくないにしても)があることを、実質的に認めたことです。
2004年版では、こうあります。
血液型に関して「心理学の調査では性格との関連が見つからなくても、実は微かな関係がある可能性は否定できないのではないか」という質問をされることがある。それはもちろんその通りで、よくよく研究してみると弱い関係があるということになるかもしれない。研究する価値もあるだろう。
しかし、一般に言われる血液型性格判断はそのような微妙な関係ではなく、「あなたはA型でしょう」とコンパの席で指摘できるほどにはっきりした関係を主張していることに注意するべきである。したがって、上の質問は血液型性格判断とはなんの関係もない。
ここでは、統計的に有意な差があることを認めていません。
ところが、2010年版では、統計的に有意な差(弱い関係)を実質的に認めてしまっています。
血液型性格判断が誤りである理由は、あくまでも血液型から性格が判断できるほどの強い関係は発見されていないからです。性格「判断」に使えない程度の弱い関係はあってもよい。いや、原理的には強い関連があってもよかったのですが、それは心理学者の研究によって否定されたということなのです。
では、「能見説」は強い関係なのか?
実際の能見さんのデータを見てみると、差はせいぜい10~20%程度ですから、元々血液型から性格が判断できるほどの強い関係が発見されている、とは能見さん自身も言っていないのです。
たぶん、それが「能見説」の言及が消えた、最大の原因でしょう。

いわゆる「マイナス・イオン」も同じです。
2004年版では明確に否定しています。
 マイナスイオンはニセ科学であるにもかかわらず、どういうわけか大手家電メーカーがこぞって参入して一大ブームとなった。現在は終息に向かいつつあるようだが、ニセ科学に参入した家電メーカー は”大手”なりの責任をきちんととる気があるのだろうか。…
 マイナスイオンが身体にいいとされる根拠は『医学領域 空気イオンの理論と実際』(木村・谷口)という文献に求められる。ところが、これがなんと第二次大戦前の本、もちろん現在では省みられることのない学説である。多くの通販カタログなどでこの文献が引用されているが、発表年を表示していないところを見ると、後ろめたいところがあるのに違いない。…
 結局、マイナスイオンはニセ科学の中でも悪質な部類に属する確信犯的なものだったわけである。まきこまれた大手家電メーカー(特に掃除機の吸い込み口に トルマリンを練りこんだ某メーカーなど)の開発者には同情を禁じえない。
ちょっと気になるのは、「発表年を表示していないところを見ると、後ろめたいところがあるのに違いない。」という記述です。ということは、2010年版の「血液型性格判断」で「能見説」の言及が消えたのは、「後ろめたいところがあるのに違いない。」ということになるのでしょうか?
ところで、2010年版では、打って変わって、実質的にいわゆる「マイナス・イオン」を認めてしまっています。
マイナスイオンは最大限好意的に捉えたとしても「科学的にはまだ検証されていないもの」としか評価できないものだったわけです。それをあたかも科学的根拠があるかのように売るのはニセ科学と呼ばれてもしかたないでしょう。
現在は、マイナスイオンに代わってさまざまな名前のイオン商品が売られています。発生法を特定したり、「吸い込むと健康にいい」という効能を期待させなくなったのはいいことでしょう。ただ、家庭環境とはかけ離れた非常に極端な条件での実験をもとに、「インフルエンザ・ウィルスが死滅」などの宣伝がされているのは問題です。家庭内で普通に使用したらどうなのか、それがきちんと確かめらなくてはならないはずです。
つまり、「家庭内で普通に使用したらどうなのか、それがきちんと確かめらなくてはならないはず」ということは、少なくとも、研究室レベルでは効果がある、ということでしょう。言い換えれば、『家庭環境とはかけ離れた非常に極端な条件での実験をもとに、「インフルエンザ・ウィルスが死滅」などの宣伝がされている』ということです。
要するに、「ニセ科学に参入した家電メーカー は”大手”なりの責任をきちんととる気があるのだろうか。」というのはちょっと言い過ぎだったということです。これも正直でいいと思います。[わーい(嬉しい顔)]
なお、『日経エレクトロニクス』によると、「効能を期待させなくなった」のは、薬事法の関係で好ましくないということで、必ずしも効能がないからではないようです。まぁ、私は薬事法は素人なので、本当にそうなのかどうかは知りませんが…。
【追記】
ところで、2010年版の「マイナスイオン」では、『日経エレクトロニクス』(2009年11月2日号 イオン健康家電の正体)への言及もないようです。
http://abofan.blog.so-net.ne.jp/2009-11-18
これまた、ひょっとして「後ろめたいところがあるのに違いない。」ということになるのでしょうか?
念のため、kikulogのエントリーでは、『日経エレクトロニクス』が取り上げられているようなので、菊池さんが読んでいない、というのはちょっと考えにくいのですが…。
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