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「血液型人間学批判」の朱子学的理解 [新刊情報]

このタイトルは、特に若い読者には理解不能かもしれません。
が、井沢元彦さんや山本七平さんの読者なら、私がわざわざ指摘するまでもなく、なるほど~、と納得してもらえると思います。
朱子学は、明治維新のバックボーンですから、知らず知らずに我々の考え方に影響しているのです。

逆説の日本史17 江戸成熟編 アイヌ民族と幕府崩壊の謎

逆説の日本史17 江戸成熟編 アイヌ民族と幕府崩壊の謎

  • 作者: 井沢元彦
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2011/02/14
  • メディア: 単行本

井沢元彦さんによると、朱子学の悪影響は大きく分けて3つあるそうです。
その第一は、…新しい自体への柔軟な対応が出来ないということだ。…先祖つまり今とはまったく違う前提で生きていた人々の決めたルールを、「祖法」という形で絶対化するからである。なぜ、絶対化するかといえば儒教では「孝」すなわち「親に対する忠義」が何よりも優先するからだ。子孫がみだりに新しい方を作るのは、孝に反するからダメということになる。
『逆説の日本史17』 pp.282
なるほどねぇ~。
これを「血液型人間学批判」に当てはめるとこうなります。
能見正比古さんが提唱した、新しい考え方である「血液型人間学」への柔軟な対応は出来なくなります。
例えば、戦前の心理学会で否定されたという人もいますが、それはどう考えてもおかしいのです。なぜなら、当時は統計的検定という便利な手法がなかったので、統計的に否定しようがないからです。現に、当時のデータを調べてみると、それなりに統計的に有意な差が出ています。
ですから、少なくとも、戦前に統計的に否定された、というのは間違いです。つまり、否定論者は否定されたという「祖法」を絶対化しているわけです。
その第二は、これが日本人が意識していない朱子学の最大の欠点だが、歴史を捏造してしまう、というものだ。…現実よりも理想を重視する朱子学の下では「実際あったこと」は無視され、「あるべき姿」が歴史として記述されることになる。それは身もふたもない言い方をすればウソということで、つまり歴史の捏造になってしまうのだ。
『逆説の日本史17』 pp.282-283
これも現実にあります。すでに書きましたが、否定論者は「戦前の心理学会で統計的に否定された」とように、歴史を“捏造”してしまうのです。こんなのは、単純ミスと思う人もいるかもしれませんが、決してそうではありません。
それは、心理学者(複数)によって書かれた「血液型人間学批判」を読むとわかります。まぁ、歴史の捏造とまでは言えないにしても、事実と正反対の印象を与える記述になっています。
ここでは、あえて特定の心理学者の名前は出しませんが、ビックリするほどひどいのです。
その第三の「毒」は、外国人も「夷(えびす)」、つまり野蛮人と決めつけ、その文化を劣悪なものとして無視することだ。
『逆説の日本史17』 pp.283
これまた、実例に事欠きません。あえて書くこともないでしょうが、ちょっとだけ。
ある心理学者は、血液型ステレオタイプを持っている人(「血液型人間学」を“信じている”人)は、気分にムラがあるが人づきあいが好きで、複雑な思考判断をするよりは権威に従って生きていこうとするのんきな人たち、とコメントしています。
また、別な心理学者は、血液型は、星占いや手相と近いとも結論づけています。
それなら、統計を無視する否定論者はどうなるんでしょう?

実は、昔々に読んだ山本七平さんの本に「科学の朱子学的理解」[注:近思録的理解だったかも…]とあったのですが、やっと意味がわかりました。いやぁ、お恥ずかしい話です。[たらーっ(汗)]

念のため、現在では「統計的に有意な差がある」ことを否定する人はほとんどいなくなりました。
さすがに、本当に朱子学を信じていたわけではないようです。[わーい(嬉しい顔)]
いわゆる、「マイナス・イオン」批判も、同じ文脈で解釈してもよさそうです。
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