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『「モード性格」論』の謎(続) [既刊情報]

サトウタツヤ+渡邊芳之さんで『「モード性格」論』という本があります。
この中で、著者の主張が以前と大きく変わってしまっている部分が謎だったのですが、ひょっとして大村政男さん(2005年の日本応用心理学会公開シンポジウム)の影響なのかもしれません。

「モード性格」論―心理学のかしこい使い方

「モード性格」論―心理学のかしこい使い方

  • 作者: サトウ タツヤ
  • 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店
  • 発売日: 2005/11
  • メディア: 単行本


と以前に書いたのですが、わかりにくいようなので、もう少し詳しく説明しておきます。
渡邊さんには申し訳ないのですが…。
まず、111ページからです。
彼ら[注:能見さんなどの肯定論者]によれば、それらのデータ[注:能見さんなどの肯定論者のもの]は、すべて血液型と性格との関係を、それも「血液型性格学」の仮説通りに示しています。もしこれが事実であれば、血液型性格判断には、その仮説を科学的に証明するのに十分なデータが伴っていると判断していいでしょう。
そして、それらのデータとして、
佐藤達哉+渡邊芳之+尾見康博さん 『心理学論の誕生』 2000年 pp211 渡邊[芳之氏] そんなことだから、血液型性格判断のデータが統計的に有意★50だったりするとアタフタするんだよ。
★50 一部の心理学者が統計的手法で血液型性格判断を否定しようとしたため、血液型性格判断賛成陣営も統計を勉強し始め、最近では実際に有意差の出る(つまり血液型と性格に関連があるという)データを提出しはじめている。…
とあります。
また、(以前は否定論者だった)心理学者の大村政男さんは、血液型と性格については(統計的に)「関係がある」と言っています。
そして、能見さんのデータも(少なくとも一部は)認めています。
再説:衆議院議員に血液型の特徴が見られるか(I)
日本心理学会第72回大会発表論文集 2008年
動物行動学者 竹内久美子に応える(1)
 大村政男(日本大学)藤田主一(日本体育大学)浮谷 秀一(東京富士大学)
 →首相にO型が多い(有意差あり)
これでは、どう考えても、血液型と性格に関係があるとしか読めません。
しかし、113ページには、これらとは全く逆に、統計的に差がないという主張が書かれています。
そこで用いられるのが「推測統計学」という方法です。 : 血液型と性格とに関係があるかを調べるならば、人間全体(母集団)から10人なり100人なり1000人なりのサンプルを抽出して、そのサンプルにおいて血液型と性格の関係を調べます。 もし、サンプルの100人では血液型と性格にある程度の関係が見られたなら、今度は「母集団」では実際には関係がないにもかかわらず、この人数のサンプルだけ偶然にそれだけの関係が生じる確率」を計算します。そして、その確率(危険率)が十分に低い(ふつうは5%以下)と言えるときに、その結果は統計的に有意(意味がある、ということ)であり、母集団でも血液型と性格に関係があると推測します。こうした数学的な手順のことを「統計的検定」といいます。
そして、その結果は、というと、
たしかに、テスト得点の一部に血液型による差が見いだされた例もあるのですが、そうした差は血液型性格判断の主張するような血液型の性格特徴とはまったく一致していないことが多く、また、テストの種類やサンプルによってまったく矛盾する結果が得られている場合もあります。(pp 119)
では、『「モード性格」論』のポイントを再度引用しておきます。
1. こうした研究[統計による性格検査と血液型との関係]からは血液型と性格の明確な関係は全く見いだされませんでした。(pp 119) 2. [能見正比古さんの著書による血液型の特徴による自己]評定と性格との間に血液型性格判断で言うような関係は見られませんでした(pp 120) 3. その他の[統計データによる]研究からも、血液型と性格との関係が確認できるような証拠は全く得られていません。(pp 120)
なるほど、これは大村政男さんの影響だったのですね、たぶん。
それなら納得です。
ちなみに、『「モード性格」論』の1年後の論文でも、
上村 晃弘、サトウ タツヤさん 疑似性格理論としての血液型性格関連説の多様性 日本パーソナリティ心理学会 パーソナリティ研究 Vol. 15 (2006) , No. 1 (2006) pp.33-47
と、同じようなことを述べています。
ちなみに、こちらでは、もっと率直に、
大村は否定論の代表格であったが,この番組[注:TBS 超スパスパ人間学!]で肯定的結果を報告して関連説に関心のある人々を驚かせた。
と書いています。
よっぽどショック[失恋]だったんでしょうねぇ、きっと。
そのせいなのかどうか、最近の心理学者の多くは、意図的に(?)統計データの話は避けているようです。
データの差が出ている場合は、分析・考察の部分にキレがありません。
やっぱり、ショックなんでしょうねぇ…。
もっとも、そのうちまた変る、という可能性もありますが、どうなのかな?
はて?
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コメント 1

url

お疲れ様です。
今日も楽しく拝見させていただきました。ありがとうございます。来週もまた来ますんでまた楽しいブログを見せてくださいね
by url (2012-06-15 16:57) 

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