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「二重構造説」への疑問 [ゲノム解析で古代史]

自分のための備忘録です。

threepinnerさんの元ツイートは次のとおりです。 さて、現時点では、日本人のDNA構成で主流となっている学説は「二重構造説」です。
この説は、現代日本人のDNAは、それまで狩猟採集生活をしていた縄文人のDNAと、3000年前頃から、水田稲作技術を持って半島や大陸から渡来した弥生人のDNAとの「二重構造」になっているというものです。
オリジナルは、埴原和郎氏の「日本人の成り立ち」(1990年)にあり、1990年代に主流になったそうです。

日本人の成り立ち

日本人の成り立ち

  • 作者: 埴原 和郎
  • 出版社/メーカー: 人文書院
  • 発売日: 1995/11/01
  • メディア: ハードカバー

出所 斎藤 成也 国立遺伝学研究所
学術俯瞰講義 「いのち」のシステムを解き明かす ゲノムから読み解く 日本人の起源

以下に、二重構造説が妥当だと主張するBiBiさんのTweetを示します。 ただ、上の篠田氏の「二重構造説」ですが、「今の日本人の場合は9割方は弥生時代以降に大陸からやってきた人たちの遺伝子」なら、常識的には「二重構造」とは言わないと思います。
BiBiさんも書いているように、「Y染色体における現代日本人のうち本土人の縄文人由来遺伝子は35%」ですから、篠田氏の10%とは3倍以上も違うのです…。 BiBiさんに言われて気が付いたのですが、「新版日本人になった祖先たち DNAから解明するその多元的構造」(2019年)にある篠田氏のY染色体説明は、見事に間違っていました。

新版 日本人になった祖先たち―DNAが解明する多元的構造 (NHKブックス No.1255)

新版 日本人になった祖先たち―DNAが解明する多元的構造 (NHKブックス No.1255)

  • 作者: 篠田 謙一
  • 出版社/メーカー: NHK出版
  • 発売日: 2019/03/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

そのためなのか?その後の『人類の起源-古代DNAが語るホモ・サピエンスの「大いなる旅」』(2022年)では、なぜかこの説明は「省略」されています。
人類の起源-古代DNAが語るホモ・サピエンスの「大いなる旅」 (中公新書, 2683)

人類の起源-古代DNAが語るホモ・サピエンスの「大いなる旅」 (中公新書, 2683)

  • 作者: 篠田 謙一
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2022/02/21
  • メディア: 新書

結局、現代日本人のDNAについては、まだまた謎が多いということなのでしょうね。

以下は、篠田氏の主張の変遷の経緯となります。

次のように、「新版 日本人になった祖先たち」(2019年)には、現代日本人のY染色体は縄文人とは違うとあります。

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その根拠となる発表 礼文島船泊縄文人の核ゲノム解析(2016年)

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なぜこんな初歩的なミスをしたのかは謎ですが、ハプログループの名称が頻繁に変わっているため、何か勘違いをしたのかもしれません。

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Wikipediaにもあるように、現代日本人の3割程度が持っている、Y染色体ハプログループD1a2a系統は縄文系である、ということになります。
下にあるように、北海道・礼文島の縄文人人骨である船泊5号のY染色体はD1a2a系統となります。

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