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牧田寛氏の論考と現実との大きなギャップ《北朝鮮製新型ミサイル》 [北海道大停電]

1年ほど前の北海道大停電について、牧田寛氏のハーバーオンラインの記事についてコメントを書きました。
そうしたら、ピーク時には、まさかのSo-netブログのアクセスでトップになったのには驚きました。

で、最近、この記事のアクセスが妙に多いなと思ったら、牧田寛氏は今回「北朝鮮製新型ミサイル」のセンセーショナルな記事を書いていたのです。

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2019.09.11 北朝鮮製新型ミサイルの画期的性能は日本の防衛に何をもたらすのか?

この記事のポイントですが、問題の新型ミサイルの命中精度は極めて高く、日本の原発(たとえば大飯原発)は簡単に破壊できるため、万一攻撃された場合には大惨事が発生するというものです。確かに、彼の指摘が本当なら真剣に対策を考えるようでしょう。

しかし、そんな話は誰もしていません。なぜなら、この記事は、誰にでもわかる初歩的なミスのオンパーレードだからです(苦笑)。

もっとも、この記事の間違いは、北海道大停電よりはるかにわかりやすいです。
そこで、私的な備忘録として書き留めておくことにします。

【ごく初歩的なミス1】命中精度が極めて高い?

牧田氏によると、

イスカンデル系SRBMの性能を引き継ぐとされるKN-23は、命中精度をしめす半数必中界(CEP:半数が着弾する半径、例えば10発撃てば5発がCEP内に着弾する)が、5~7mと精密誘導巡航ミサイル並みの極めて優れた値とされています。

とあります。しかし、これはベストな状態の話で、現実に日本に飛んでくる場合には、この精度が保証されるわけではありません。

他のサイトを見てみると、

CEP(半数必中界)は、INS、グロナス併用で30m以内、光学センサー誘導では数mとされる。

とあります。

INSは慣性誘導装置、グロナスはロシア版GPSなので、これらは「標準装備」です。
光学センサーというのは、レーザー光線による誘導ということですから、現実には北朝鮮から日本に届くレーザーでもなければあり得ません。もちろん、そんなことは不可能です。
つまり、このミサイルの命中精度を示すCEP(半数必中界)は、牧田氏の言う「5~7m」ではなく、現実には「30m程度」ということになります。

もっとも、大飯原発の格納容器は直径45m程度ですから、精度が30mなら結構な確率でミサイルが命中しそうですが、実はそうではないのです。

この点を次に説明します。

【ごく初歩的なミス2】大飯原発を余裕で破壊できる?

牧田氏によると、大飯原発の構造は次のとおりです。

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大飯原子力発電所3,4号炉の格納容器は、外径45.6m、高さ65.6m、胴部が厚さ1.3m、ドーム部が厚さ1.1mのプレストレスト・コンクリートであり、更に内側を厚さ6.4mmのライナープレート(金属板)で内張りされています。

鉄筋コンクリート(RC)とプレストレスト・コンクリート(PC)の違いはありますが、1.8mの厚さのRCを2~9倍の余裕度で貫通するKN-23は、1.1mのPCを余裕で貫通すると考えて良いでしょう*。
<*改標2型PWRのPCCVには、密度のたいへんに高いコンクリートが使われている。従って、運動エネルギーが小さい軽量弾頭には持ちこたえる可能性はある>

これらの記述は、他のサイトと照合しても正しいようです。

では、ミサイルが格納容器を貫通して、弾頭が格納容器の内側で爆発するとどうなのでしょう?
牧田氏によると、

格納容器が貫通されると、内部で500kgまたは250kgの弾頭が炸裂し、格納容器内部を破壊されます。原子炉は、運転中に格納容器内部で数百キロの高性能爆薬が爆発することなど全く想定していませんので、100~300kgの高性能爆薬の内部爆発には耐えられません。原子炉は、想定を遙かに超えたきわめて甚大な打撃を受けることとなります。
大飯3,4と、同型の玄海3,4は、第二世代原子炉としてもたいへんによく出来た優れた原子炉ですが、双発大型航空機の突入には、燃料火災を除き耐えられると思われるものの、弾道弾の直撃では打ち抜かれ、破壊されます。

私は、この図を見たときに妙な感じがしました。
そこで、他のサイトで確認してみたところ、なんと肝心の「原子炉本体」(原子炉容器=次の図ので囲んだ部分)が描かれていないことに気が付きました。
原子炉のない原子力発電所なんて、原発とは言えないことはもちろんです。[あせあせ(飛び散る汗)]

次の図は、関西電力の大飯原発のサイトからです。

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残念ながら、この図には「原子炉容器」の大きさが書いてありません。
同じ加圧水型原発である川内原発のサイトによると、

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原子炉容器は、重さ約330トン、直径約4メートル、長さ約12メートル、厚さ約20センチメートルの鋼鉄製・円筒形の容器です。

とあります。原子炉容器の大きさは直径4m、長さが12mとのことなので、これを精度30mのミサイルで狙ったら、まぁほとんど当たらないと考えるのが普通でしょう。

つまり、北朝鮮の新型ミサイルが原子炉に命中する確率は意外と小さいことになります。

それだけではありません。

厚さ1m以上のコンクリートで出来ている格納容器を貫いたミサイルが、そのまま直進して見事原子炉本体に命中すると考える人は…まぁ例外でしょう。[むかっ(怒り)]
また、仮に格納容器を貫通したとしても、首尾よく「重さ約330トン、直径約4メートル、長さ約12メートル、厚さ約20センチメートルの鋼鉄製・円筒形の容器」である原子炉容器を破壊できる…かどうかは、わざわざ考えるまでもないでしょう。[むかっ(怒り)]

北海道大停電のときもそうなのですが、なぜ牧田氏の論考がここまで間違っているのか、私にはまったく理解出来ません。[あせあせ(飛び散る汗)]
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