ゲノム解析でわかった稲作伝来の歴史! [ゲノム解析で古代史]
日本の古代史に興味がない人はいないでしょう。
しかし、いままで日本の古代史は、各地の遺跡や中国の歴史書などに基づく推測にとどまっていました。
なぜなら、日本で文字が使われるようになったのは、早くても5世紀頃からで、文字による記録が残っていないからです。
出典:ことばの疑問
非常に残念というしかありません…。
話は変わりますが、昔から私は歴史は暗記物だと思い込んでいて、ほとんど興味がありませんでした。
それが、井沢元彦氏の「逆説の日本史」を読んでからは、以前とは考えが180度変わったのです。
彼の分析の最大の特色は、いままでの歴史学に欠けていた、宗教と通史をプラスした視点です。
まさに「目から鱗が落ちた」でした!
このときに、歴史は決して暗記物ではなく、その時代の人間の赤裸々な生き様を明らかにするものだということを実感したのです。
井沢氏が言われて最も喜ぶ言葉は、そのとおり「目から鱗が落ちた」とのこと。
しかし、彼の代表的な著書である「逆説の日本史」は、タイトルどおり従来の歴史観を覆すことも多いためか、歴史学者からはまともに評価されていません。
それどころか、強烈な批判や、反対に全く無視されることも少なくないのです。
既存の学会は相当閉鎖的で、部外者からの意見や批判を嫌うからでしょう。
しかし、最近ではこういう状況が激変しつつあります。
理由は、ゲノム解析と言われる、生物の遺伝子=DNAを分析する技術のめざましい進展です。
この最新技術で、数千年前の縄文人のDNAさえ解明が可能になり、地域別、時代別などの多面的な分析が進められることにより、古代史のダイナミックな姿が次々に明らかになってきました。
以前とは比べものにならない精度で、極めて科学的に精緻な分析が可能になってきているのです。
出典:縄文人の核ゲノムから歴史を読み解く
このハイテクは、既存の歴史学だけではなく、考古学にも大きく波紋を広げています。
たとえば、日本への稲作技術の伝来ルートは、長らく地理的に近い朝鮮半島経由(下の図では1と2)と思われてきました。
これは、主に従来の考古学的な分析によるものです。
出典:お米のはなし 国際農林業協働協会(JAICAF)
しかし、農学者の佐藤洋一郎氏がイネのゲノムを分析した結果、この説は必ずしも正しくないことがわかりました。
再び「目から鱗が落ちた」です
出典:拙Twitter
細かい経緯は省き、シンプルに説明しておきます。
中国、朝鮮半島、日本の水稲在来品種を分析したところ、a~hの8つの遺伝子が見つかりました。
○中国(原産地) a~hの8つの遺伝子
○朝鮮半島 bを除く7つの遺伝子
○日本 aとbだけ
出典:お米のはなし 国際農林業協働協会(JAICAF)
a遺伝子は中国には高頻度で分布していませんが、朝鮮半島と日本には高い頻度で分布しており、朝鮮半島を経てきたと推測できます。一方、b遺伝子は朝鮮半島の在来品種には見当たらず、中国大陸から直接日本に達するルートを経てきたと思われます。つまり、水稲と水田稲作技術は、朝鮮経由と中国から直接の2ルートで渡来したのです。
出典:佐藤洋一郎「稲の日本史」角川ソフィア文庫 2018年
なお、佐藤氏はその後の著書で、朝鮮半島経由を否定しています。
出典:拙Twitter
しかし、この内容は従来の定説を覆すものであるため、考古学者の池橋宏氏らによって強烈に批判されたそうです。
ポイントは次のとおりです。
1. 縄文土器のイネモミ跡は疑問である
2. プラント・オパールおよび花粉分析によるイネの検出をどう見るか
3. 縄文時代に畑作農耕の可能性はない
4. 縄文農耕の考古学的証拠は
5. 熱帯ジャポニカの想定は正しいか
出典:お米のはなし 国際農林業協働協会(JAICAF)
この批判は明らかにおかしいのです。
批判の主力である池橋宏氏らは「考古学者」です。しかし、佐藤洋一郎氏は「農学者」です。学問的にどちらを信用するといえば、当然後者の佐藤氏でしょう。
典型例は1と2です。
次は、池橋氏らの批判のポイントです。
1. 縄文土器に付着していたものはイネモミではない
2. プラント・オパールおよび花粉は、当時のものではなく、後世のコンタミネーション(汚染)によるものである
そこで、池橋氏らに批判されている岡山県古代吉備文化財センターのサイトを確認してみました。
説明を読めばわかるように、「農学の専門家による鑑定」「土器の土の中からイネのプラント・オパールが発見」とあります。ですから、上の1と2は明らかに言いがかりです。池橋氏らは考古学者であり、農学者などによる専門的な分析結果を覆すほどの知見を持っているはずがありません。
また、年代についても、以前は朝鮮半島の2500年ほど前の稲作の遺跡が、日本で発見された遺跡より古かったのです。しかし、上の岡山県の遺跡の年代は3000年ほど前なので、朝鮮半島の遺跡より古いのです。
そして、この3000年前という年代は、国立歴史民俗博物館が、他の遺跡でも炭素14測定法で確認しています。
出典:朝日新聞 2003年5月20日
これだけの資料が揃っていれば、日本の稲作は必ずしも朝鮮半島経由だけでないことは明らかです。
ところが、Wikipediaの稲作の項目を見ても、いまだに「論争が続いている」ことになっています。
推測ですが、これは未だに(考古学者を中心に?)強硬な反対があるからでしょう。
なぜ、ここまでやっきとなって、以前より科学的に精度が高いはずの結果を否定するのでしょうか?
私が思うに、考古学は「文系」の学問なので、ゲノム解析のような理系の最新ハイテクについて行けないからでしょう。
実際に、いくつか大学の考古学専攻のシラバスを調べたところ、「文系」のため数学の単位は必須ではありません。
ゲノム解析には、確率・統計や線形代数(主成分分析などの多変量解析)の知識が必須になりますが、数学の基礎知識がない人には少々とっつきずらいことも確かです。
これは決して推測でなく、私と議論した考古学専攻?の方が、ほとんど基礎知識がないことで明らかです。
出典:拙Twitter
引用はしませんが、上のYouTubeを速攻で「俗説」と決めつけた人(考古学者?)がいるのには驚きました。
別な例を出しておきます。
出典:拙Twitter
※なお、下の図が正しいとすると、以前の佐藤氏はc遺伝子はわずかですが存在するといっていたようです。最近の本には書いてないので、訂正したのでしょうか?
出典:https://twitter.com/MitaJama/status/1486728159920013312
心理学とAIは相性がいいはずですが、見たことがないこととそっくりですね…
血液型と性格と同じじゃないですか!
大変残念な結果になってしまいました…。
しかし、いままで日本の古代史は、各地の遺跡や中国の歴史書などに基づく推測にとどまっていました。
なぜなら、日本で文字が使われるようになったのは、早くても5世紀頃からで、文字による記録が残っていないからです。
出典:ことばの疑問
非常に残念というしかありません…。
話は変わりますが、昔から私は歴史は暗記物だと思い込んでいて、ほとんど興味がありませんでした。
それが、井沢元彦氏の「逆説の日本史」を読んでからは、以前とは考えが180度変わったのです。
逆説の日本史1 古代黎明編/封印された「倭」の謎 (小学館文庫)
- 作者: 井沢元彦
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2012/11/19
- メディア: Kindle版
彼の分析の最大の特色は、いままでの歴史学に欠けていた、宗教と通史をプラスした視点です。
まさに「目から鱗が落ちた」でした!
このときに、歴史は決して暗記物ではなく、その時代の人間の赤裸々な生き様を明らかにするものだということを実感したのです。
井沢氏が言われて最も喜ぶ言葉は、そのとおり「目から鱗が落ちた」とのこと。
しかし、彼の代表的な著書である「逆説の日本史」は、タイトルどおり従来の歴史観を覆すことも多いためか、歴史学者からはまともに評価されていません。
それどころか、強烈な批判や、反対に全く無視されることも少なくないのです。
既存の学会は相当閉鎖的で、部外者からの意見や批判を嫌うからでしょう。
しかし、最近ではこういう状況が激変しつつあります。
理由は、ゲノム解析と言われる、生物の遺伝子=DNAを分析する技術のめざましい進展です。
この最新技術で、数千年前の縄文人のDNAさえ解明が可能になり、地域別、時代別などの多面的な分析が進められることにより、古代史のダイナミックな姿が次々に明らかになってきました。
以前とは比べものにならない精度で、極めて科学的に精緻な分析が可能になってきているのです。
出典:縄文人の核ゲノムから歴史を読み解く
このハイテクは、既存の歴史学だけではなく、考古学にも大きく波紋を広げています。
たとえば、日本への稲作技術の伝来ルートは、長らく地理的に近い朝鮮半島経由(下の図では1と2)と思われてきました。
これは、主に従来の考古学的な分析によるものです。
出典:お米のはなし 国際農林業協働協会(JAICAF)
しかし、農学者の佐藤洋一郎氏がイネのゲノムを分析した結果、この説は必ずしも正しくないことがわかりました。
再び「目から鱗が落ちた」です
出典:拙Twitter
細かい経緯は省き、シンプルに説明しておきます。
中国、朝鮮半島、日本の水稲在来品種を分析したところ、a~hの8つの遺伝子が見つかりました。
○中国(原産地) a~hの8つの遺伝子
○朝鮮半島 bを除く7つの遺伝子
○日本 aとbだけ
出典:お米のはなし 国際農林業協働協会(JAICAF)
a遺伝子は中国には高頻度で分布していませんが、朝鮮半島と日本には高い頻度で分布しており、朝鮮半島を経てきたと推測できます。一方、b遺伝子は朝鮮半島の在来品種には見当たらず、中国大陸から直接日本に達するルートを経てきたと思われます。つまり、水稲と水田稲作技術は、朝鮮経由と中国から直接の2ルートで渡来したのです。
出典:佐藤洋一郎「稲の日本史」角川ソフィア文庫 2018年
なお、佐藤氏はその後の著書で、朝鮮半島経由を否定しています。
出典:拙Twitter
米の日本史-稲作伝来、軍事物資から和食文化まで (中公新書)
- 作者: 佐藤 洋一郎
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2020/02/18
- メディア: 新書
しかし、この内容は従来の定説を覆すものであるため、考古学者の池橋宏氏らによって強烈に批判されたそうです。
ポイントは次のとおりです。
1. 縄文土器のイネモミ跡は疑問である
2. プラント・オパールおよび花粉分析によるイネの検出をどう見るか
3. 縄文時代に畑作農耕の可能性はない
4. 縄文農耕の考古学的証拠は
5. 熱帯ジャポニカの想定は正しいか
出典:お米のはなし 国際農林業協働協会(JAICAF)
この批判は明らかにおかしいのです。
批判の主力である池橋宏氏らは「考古学者」です。しかし、佐藤洋一郎氏は「農学者」です。学問的にどちらを信用するといえば、当然後者の佐藤氏でしょう。
典型例は1と2です。
次は、池橋氏らの批判のポイントです。
1. 縄文土器に付着していたものはイネモミではない
2. プラント・オパールおよび花粉は、当時のものではなく、後世のコンタミネーション(汚染)によるものである
そこで、池橋氏らに批判されている岡山県古代吉備文化財センターのサイトを確認してみました。
説明を読めばわかるように、「農学の専門家による鑑定」「土器の土の中からイネのプラント・オパールが発見」とあります。ですから、上の1と2は明らかに言いがかりです。池橋氏らは考古学者であり、農学者などによる専門的な分析結果を覆すほどの知見を持っているはずがありません。
また、年代についても、以前は朝鮮半島の2500年ほど前の稲作の遺跡が、日本で発見された遺跡より古かったのです。しかし、上の岡山県の遺跡の年代は3000年ほど前なので、朝鮮半島の遺跡より古いのです。
そして、この3000年前という年代は、国立歴史民俗博物館が、他の遺跡でも炭素14測定法で確認しています。
出典:朝日新聞 2003年5月20日
これだけの資料が揃っていれば、日本の稲作は必ずしも朝鮮半島経由だけでないことは明らかです。
ところが、Wikipediaの稲作の項目を見ても、いまだに「論争が続いている」ことになっています。
推測ですが、これは未だに(考古学者を中心に?)強硬な反対があるからでしょう。
なぜ、ここまでやっきとなって、以前より科学的に精度が高いはずの結果を否定するのでしょうか?
私が思うに、考古学は「文系」の学問なので、ゲノム解析のような理系の最新ハイテクについて行けないからでしょう。
実際に、いくつか大学の考古学専攻のシラバスを調べたところ、「文系」のため数学の単位は必須ではありません。
ゲノム解析には、確率・統計や線形代数(主成分分析などの多変量解析)の知識が必須になりますが、数学の基礎知識がない人には少々とっつきずらいことも確かです。
これは決して推測でなく、私と議論した考古学専攻?の方が、ほとんど基礎知識がないことで明らかです。
出典:拙Twitter
引用はしませんが、上のYouTubeを速攻で「俗説」と決めつけた人(考古学者?)がいるのには驚きました。
別な例を出しておきます。
出典:拙Twitter
※なお、下の図が正しいとすると、以前の佐藤氏はc遺伝子はわずかですが存在するといっていたようです。最近の本には書いてないので、訂正したのでしょうか?
出典:https://twitter.com/MitaJama/status/1486728159920013312
心理学とAIは相性がいいはずですが、見たことがないこととそっくりですね…
血液型と性格と同じじゃないですか!
大変残念な結果になってしまいました…。
2022-01-29 10:29
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