SSブログ

定期検査と新規制基準適合性検査・審査は別物 [北海道大停電]

前回に引き続き、備忘録として書いておきます。

a906b9ad7ce072f85b785598d775f30f_s.jpg

私の不勉強で以前に池田信夫氏に指摘されたように、「定期検査」(現行の原子炉等規制法では第43条の3の15「施設定期検査」)と「新規制基準適合性検査・審査」は別物です。[たらーっ(汗)]

理由は、「科学的議論」としてのトリチウム水と北海道大停電《まとめ3》に書いたとおりになります。

では、定期検査で実際にどんなことをやっているかと調べたのですが、どうもよくわかりません。
私が一番わかりやすかったのは、池田信夫氏の解説【GEPR】原発はなぜ再稼動できないのかに紹介されている安念潤司氏の論文です。

余談ですが、この論文の概要には、

今日、日本国内の大部分の発電用原子炉が定期検査中であることになっているが、定期検査中であっても、原子炉の運転を停止しなければ実施できない工程が終了すれば、運転を再開することに法律上の支障は何ら存在しない。現下の停止状態は、法的根拠に基づくものではなく、単なる「空気」である。

とあります。論文の内容は相当に難解ですが、この概要(だけ…)はわかりやすいですね。[たらーっ(汗)]

では、本題に戻ります。


この論文の114ページから115ページにかけて、2009年5月から行われた中国電力島根原子力発電所1号機の第28回定期検査の具体的な検査項目と検査方法がコンパクトに紹介されています。その内容は次のとおりです。

⑴ 原子炉本体
 原子炉圧力容器の蓋を開放し,炉内構造物および燃料の点検を行い,その健全性を確認する。また,原子炉圧力容器の溶接部については,非破壊検査および漏えい検査を行い,その健全性を確認する。
⑵ 原子炉冷却系統設備
 非常用炉心冷却装置を含む原子炉冷却系統設備の点検手入れを行うとともに作動試験等の機能検査を行い,その健全性を確認する。また,配管の溶接部については,非破壊検査および漏えい検査を行い,その健全性を確認する。
⑶ 計測制御系統設備
 制御棒駆動装置および核計測装置等の点検手入れを行うとともに作動試験等の機能検査を行い,その健全性を確認する。
⑷ 燃料設備
 燃料取扱装置および燃料プール冷却装置の点検手入れを行うとともに作動試験の機能検査を行い,その健全性を確認する。
⑸ 放射線管理設備
 放射線管理用計測装置および換気設備の点検手入れを行うとともに作動試験等の機能検査を行い,その健全性を確認する。
⑹ 廃棄設備
 廃棄物処理設備等の点検手入れを行うとともに作動試験等の機能検査を行い,その健全性を確認する。
⑺ 原子炉格納施設
 可燃性ガス濃度制御系および窒素ガス制御装置等の点検手入れを行うとともに作動試験等の機能検査および全体漏えい率検査を行い,その健全性を確認する。
⑻ 非常用予備発電装置
 非常用ディーゼル期間及び発電機の点検手入れを行うとともに自動起動試験等の機能検査を行い,その健全性を確認する。
⑼ 蒸気タービン
 タービン本体,復水器の点検手入れを行うとともに作動試験等の機能検査を行い,その健全性を確認する。

つまり、基本的には「機器」の検査というわけです。確かに、これは私のイメージと一致しています。
機器の検査には、稼働中にできないものも含まれているので、いったん原発の稼働を停止する必要があります。
残念なことに、元々のソースは中国電力のホームページとあるのですが、既に削除されてしまったのか発見することができませんでした。

現在でも内容は変わっていないはずなので、「定期検査」と「新規制基準適合性検査・審査」が同時期の場合もありますが、基本的には別物ということになります。そもそも、この2つは内容も基準も違うものなのです。

参考までに、この論文からスケジュールも拝借します。

shimame3.JPG

これまた残念なことに、元々のソースは中国電力のホームページらしいのですが、発見することができませんでした。やはり削除されてしまったのでしょうか。
もう一つ残念なことがあります。この論文執筆当時の2014年には「新規制基準適合性検査・審査」をするかどうか未定でしたが、翌年の2015年3月18日に島根原発1号機は廃止が決定しています。

ただし、廃止が決まってしまっても、燃料の貯蔵機能などの「定期検査」が2018年1月18日から開始されています。
廃止する原発には「新規制基準適合性検査・審査」は不要(原子炉等規制法第43条の3の14ただし書き)ですから、島根原発1号機はそもそもこの申請をしていません。このことからも「定期検査」とは別物であることは明らかです。

SHIMANE2.png

【参考資料】

原子炉等規制法からの抜粋

(発電用原子炉施設の維持)
第43条の3の14 発電用原子炉設置者は、発電用原子炉施設を原子力規制委員会規則で定める技術上の基準に適合するように維持しなければならない。ただし、第43条の3の33第2項の認可を受けた発電用原子炉[廃止の認可を受けた原発]については、原子力規制委員会規則で定める場合を除き、この限りでない。
(発電用原子炉の廃止に伴う措置)
第43条の3の33
2 発電用原子炉設置者は、廃止措置を講じようとするときは、あらかじめ、原子力規制委員会規則で定めるところにより、当該廃止措置に関する計画(次条において「廃止措置計画」という。)を定め、原子力規制委員会の認可を受けなければならない。

(2018.9.25 7:50追記)
参考までに、原子力規制委員会のサイトから、九州電力玄海原発4号機の「施設定期検査終了証」を示しておきます。ここには、第43条の3の16第2項(新規制基準)は書いてないようです。

九州電力(株)に玄海原子力発電所第4号機の使用前検査合格証及び施設定期検査終了証を交付
原子力規制委員会は、原子炉等規制法第43条の3の11第1項及び第43条の3の15の規定に基づき九州電力株式会社玄海原子力発電所第4号機の使用前検査及び施設定期検査を行っていました。←第43条の3の16第2項(新規制基準)なし
sendai-teikikensa.png
(追記終了)

余談ですが、以前議論したNPwrAGWさんは、意図的に相手に何かを誤解させようとする傾向があるようで、参考までにtogetterの画像を示しておきます。

福島県の放射線量-市町村別の最高値:9月22日
https://togetter.com/li/1269875

NPwrAGW9.png

(2018.9.25 8:20追記)
双葉町のサイトを探しても、なぜかあるのは「山田 山田農村広場」で「山田 山田商店脇」の放射線量率測定結果は発見できませんでした(そもそも「山田」の測定場所は1カ所のみ)。また、2017年(平成29年)12月18日に測定したという記録もないようです。このデータはどこのデータなのでしょうか?

双葉町内及び応急仮設住宅等の環境放射線量率測定結果
yamada2.png

(2018.9.25 10:40追記)
2017年12月18日のデータは、双葉町が(おそらく)手作業で測定した結果のようです。確かに、この日だけ測定地点が大幅に増えていますが、2018年9月22日には「山田 山田農村広場」のデータしかないようです。

福島県放射能測定マップ
yamada3.JPG


コメント(0) 

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

Facebook コメント