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心理学者の側は「血液型と性格との関連を否定したい」 [新聞・雑誌]

血液型と性格に造詣が深い渡邊芳之さん[帯広畜産大学、現日本パーソナリティ心理学会理事長]ですが、心理学の「血液型と性格」について、2016年にこう書いています。

Psyochology Review2016.7.PNG

日本の心理学においてもっとも多く追試されたのは,心理学がみずから主張したのではない「血液型性格関連説」である(佐藤・渡邊,1992;最近では縄田,2014)。しかしこの場合には心理学者の側に「血液型と性格との関連を否定したい」という強い動機づけがアプリオリにあり,じっさい追試(で関連が再現されないこと)によってそれが否定されるという結果になっているので,これも本来の意味での追試とは呼びにくい。

念のため、この「心理学評論」は発行元の心理学評論刊行会のサイトによれば「日本で唯一の心理学のレビュー雑誌」ですし、その雑誌に日本パーソナリティ心理学会理事長が直々に執筆しているのですから、心理学会全体の雰囲気が「血液型と性格」に否定的な態度であるということは明々白々なわけで、ここまであからさまに書かれているのには、ちょっと驚きました。

念のためですが、「関連が再現されている」ことは明らかですが、学会の公式の立場として認めることはできないのでしょう…。

なお、関連部分の全文は次の通りです。


2.デモンストレーションとしての心理学データ
 ここまで,心理学における再現可能性を低めるさまざまな要因とその含意について簡単に検討した。さて,こうした要因が心理学の実験や調査の結果の再現性を低めるようになったのは最近のことではなく,ずっと以前からそうだったはずだが,それが今まであまり問題にならず,最近になって急に問題にされるようになったのはなぜだろう。そのひとつの原因は,心理学がこれまで追試にあまり熱心でなかったことである。
 自然科学の多くの分野では新しい重要な知見が報告されると,関係する研究を行っている世界中の研究室で追試が行われて,繰り返し再現された知見だけが事実として残っていくことが多い。少し前には常温核融合が(渡辺,2001),最近ではSTAP 細胞(De Los Angeles et al., 2015)が,そうした追試に耐えられずに否定されるという運命をたどっている。いっぽう,心理学で重要な知見が報告されても,そのように世界中で追試されるということはこれまであまりなかった。別の研究の中で先行研究の知見が再検討され,検証されることはあるが,そのときには研究対象も,データの収集方法も分析方法も先行研究とは異なっていることが多く,追試としてのその結果の解釈にはさまざまな問題が生じる(三井,1981)。卒業研究など教育の文脈で行われる追試は比較的多いが,その結果は公式には報告されない。
 追試されないならば,その再現性が問題になることもないので,これまで心理学の再現可能性はほとんど問題にされなかった。皮肉なことに,日本の心理学においてもっとも多く追試されたのは,心理学がみずから主張したのではない「血液型性格関連説」である(佐藤・渡邊,1992;最近では縄田,2014)。しかしこの場合には心理学者の側に「血液型と性格との関連を否定したい」という強い動機づけがアプリオリにあり,じっさい追試(で関連が再現されないこと)によってそれが否定されるという結果になっているので,これも本来の意味での追試とは呼びにくい 2)。

2) Bem (2011)の「予知研究」とその追試(Ritchie, Wiseman,& French, 2012)をめぐる一連の出来事も,研究が主張する知見が心理学者の常識や他の心理学的知識と整合しないことで追試の対象になった,という点でわが国における血液型性格関連説の追試と類似した性質を持っている。また,そうした試みが結果として心理学の研究方法そのものへの疑問や批判につながった(佐藤・渡邊,1992)という点でも類似していると言える。

【出典】
渡邊芳之 (2016) 心理学のデータと再現可能性 (特集 心理学の再現可能性)
心理学評論(Japanese Psychological Review), 59(1)98-107.
http://team1mile.com/sjpr59-1/wp-content/uploads/2016/07/watanabe.pdf


コメント(8) 

コメント 8

ssfs

本エントリは、偏見を正当化するような主流派の物言いを問題視しているのだと思います。久々に明大のトンデモサイトを訪ねたら、管理者とやり取りがあったので拝見。あのダメな管理者はマイナスイオンの健康効果が偏見というか無意味なことに全く気付いていないようですね。テーマを矮小化して居丈高に語ることがいかに愚かしいかまじめに考えてもらいたいです。まず無理でしょうが。
by ssfs (2017-09-04 01:24) 

ABOFAN

>あのダメな管理者はマイナスイオンの健康効果が偏見というか無意味なことに全く気付いていないようですね。

いや、まさかそこまで頭が悪いとは思えません(苦笑)。
ただ、博士号を取るには、教授の言うことを聞かなければならないので、しょうがないんでしょうね。
もっとも、そうなると「学問の自由」は実質的にないことになります。文系は大変ですね。
by ABOFAN (2017-09-04 20:40) 

ABOFAN

ついでに、池田信夫さんのブログとブログマガジンから、まさに今回の彼の態度をぴったり説明できる文章があったので、少々長いのですが引用しておきます。

池田信夫 blog
日本の知識人を育てた「会読」
http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/52001870.html

大学で教師も学生もうんざりするのは、大教室でやる「講義」だ。
(中略)
このように非生産的なのは、日本の大学が教育の場ではなく、立身出世の手段だからである。これは日本だけではなく、中国では儒学は科挙で立身出世する手段だったので、学校はすべて科挙の予備校だった。解釈は宋代の朱子学で固定され、あとはひたすら四書五経とその既存の解釈を丸暗記する能力が求められたので、儒学は「御用学問」になって硬直化し、学問としては衰退した。
ところが日本の武士は科挙を輸入しなかったので、儒学は立身出世とは無関係の「遊び」になった。

以下は、このブログの続きの内容で、池田信夫ブログマガジン2017年9月4日号からです。

自由な討論の中で、能力(特に語学の才能)さえあれば、「下士」の子であっても塾のリーダーになれる私塾か、武士の才能を解放した。
(中略)
だが明治の学制令では、冒頭に「学問は身を立つるの材本」と謳われ、福沢の[福翁自伝で]言う「実際の仕事に縁がない」学問は失われた。帝国大学を頂点とする、公立学校は立身出世の道具となり、官学として権威の源泉となった。福沢の設立した慶應義塾もその流れには逆らえず、帝大の亜流になってしまった。
by ABOFAN (2017-09-04 20:40) 

ssfs

ほら、やっぱり駄目な奴だったでしょ。あんなサイトがまともになるはずじゃないでしょう。

>どうか具体的にご指摘ください。

自分がどんな不毛なことをやってるのか想像もできない輩が国の予算を浪費しているだなんて、考えたくもないことです。
by ssfs (2017-09-19 02:40) 

ABOFAN

>ほら、やっぱり駄目な奴だったでしょ。あんなサイトがまともになるはずじゃないでしょう。
あら、見てたんですね(笑)。ダメなのも、まともにならないことも分かっていますが、完全に100%ダメではないという希望はまだ捨てていません…。
>>どうか具体的にご指摘ください。
>自分がどんな不毛なことをやってるのか想像もできない輩が国の予算を浪費しているだなんて、考えたくもないことです。
ていうか、研究室で科研費はもらっちゃったし、 返すわけにもいかないので、表彰もされたし、内容が無茶苦茶でも続けるしかないのではないかと思います。
そもそも、私の“反論”ぐらいで止めちゃったら彼は博士号も取れないじゃないですか。少なくとも今後2年半は頑張るしかないでしょう。
とはいっても、JISを全く無視するなんて、さすがに超○力の研究をしているだけあるなぁ、と妙に感心してしまいました(笑)。
そういえば、内部のルールかどうかしりませんが、彼は最低でも10日に1回は返事しないといけないようなので、少なくともあと50回はやりとりできます。ニセ科学批判がダメダメだと業界筋に大々的に宣伝するために、せいぜい税金を有効に活用したいと思っています。
by ABOFAN (2017-09-19 21:55) 

ssfsさまへ

こんなところでくすぶっていないで、是非、件のサイトへ乗り込んでください。
 これだけいろいろと言ってるんですから、できないはずはないですよね?
 それとも単なるチキンですか? …それもありそうではありますが。
 ちなみに、ABOFANさまはssfsさまについてどう思われますか? (なかなかオープンにできないのかも知れませんが。ご迷惑ではないのでしょうか)
by ssfsさまへ (2017-09-20 23:21) 

ABOFAN

わざわざssfsさんが乗り込むまでもなく、私にさえ反論できないのだから、もう十分なのではないのでしょうか?
まさかとは思いますが、「JISは非科学的」だから認めないとでも?
by ABOFAN (2017-09-23 09:22) 

ABOFAN

追伸 件のサイトですが、ますます混迷が深まっているような気がしますが、いかがでしょうか?
by ABOFAN (2017-09-30 16:13) 

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