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季刊 理科の探検 2015年4月号 特集「ニセ科学を斬る!リターンズ」の間違い《続々々》科研費研究前と研究後の比較 [理科の探検]


季刊 理科の探検 (RikaTan) 2015年 04月号

季刊 理科の探検 (RikaTan) 2015年 04月号

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 文 理
  • 発売日: 2015/02/26
  • メディア: 雑誌

前回の続きです。

今回は、科研費の研究成果報告書について調べてみました。
・2008年度以降は、冊子形態の報告書は原則廃止
・代わって、電子媒体による簡易な報告書を提出
[https://rnavi.ndl.go.jp/research_guide/entry/theme-honbun-205003.php]
ということのようで、報告書はCiNiiにあるPDFのものだけのようです。

もっとも、そうなると、あの報告書の内容は“疑惑”だらけです。
なぜなら、科研費の研究成果報告書なら、調査対象のサンプル数と調査年を書かないということは絶対にあってはならないことだからです!
少なくとも、血液型と性格に関する研究では、私の知る限りサンプル数や調査年を書かないのは、少々怪しげな「占い系」のデータに限られます。普通の女性雑誌の「血液型占い」のアンケートなら、サンプル数や調査年は明記してあるのが普通ですから…。[がく~(落胆した顔)]

そこまでしても絶対に科研費の報告書に情報を公開したくなかったということは、サンプル数や調査年を書くこと自体が、執筆者にとっては極めて都合の悪い―致命的な―マイナスの影響をもたらす、と推測しても決して間違いではないでしょう。
となると、サンプル数が約20万人、トータルの調査年数が約30年という私の推測は、「中(あた)らずと雖(いえど)も遠からず」と言っていいのではないでしょうか?

この裏付けを取るために、長島雅裕さんの疑似科学のプレゼン資料を調べてみました。
問題の科研費の研究は2010年度から2011年度にかけて行われたものです。
まず、この研究以前のプレゼン資料(2009年度)を次に示します。

[CD]血液型性格判断と「信じる心」 [2009年度 情報社会と科学]

nagashima2009-1.PNG[http://naosite.lb.nagasaki-u.ac.jp/dspace/handle/10069/22932]

p5にはこうあります。
大規模な統計的研究により、血液型と性格の間に相関は見られないことが示されている。

さて、科研費の研究(2010~2011年度)以後のプレゼン資料(2013年度)はこちらです。

[CD]法政大学人間環境セミナー 2013.5.18 疑似科学と疑似科学と社会

nagashima2013-1.PNG
[https://www.yumpu.com/xx/document/view/15050509/mnagashima20130518][http://phys.koshigaya.bunkyo.ac.jp/~masa/lecture/pseudoscience/MNagashima20130518.pdf] →リンク切れのため追記(2016.3.6)

このプレゼン資料(p6)では、2009年度のp5の記述が消えて、こう変わりました。
相関の有無の問題ではなく、日常生活で「使える」ぐらいの強い相関があるかどうか
一言で言うと、コアとなる表現が
相関は見られない→相関の有無の問題ではなく
と変わったことになります。なお、他のページの記述にはほとんど変化が見られません。

ところで、それ以外の思いがけない変化も発見しました。
上の2つの資料をじっくり比較するとわかりますが、2009年度のプレゼンで否定されているのは「血液型と性格」ですが、2013年度のプレゼンで否定されているのは「血液型と性格」ではなく「血液型性格判断」なのです。
どちらも同じように感じられるかもしれませんが、両者は似て非なるものなので注意してくださいね。

なぜなら、「血液型と性格」に多少は関係があったとしても、必ずしも「血液型性格判断」が妥当とは限らないからです。長島さんの言うように、日常生活に使えるような性格の差が存在しないなら「血液型性格判断」はできません。
これはどういうことかというと、2009年度には血液型と性格には「相関がない」と断言していたのですが、2013年度には多少の「相関はある」ということを―明言はしていませんが実質的に―認めたということです。だから、否定するのは「血液型性格判断」であって「血液型と性格」ではないわけです。

#その意味では、長島さんは意外に正直なのかもしれませんね。[たらーっ(汗)]

ということですから、科研費の研究の概要での「21世紀以降のデータでは、安定して血液型ごとに性格の自己申告について有意な差が出ることが判明した」、そして本文中の「血液型による違いが統計的に明確に有意であることが示された」という分析結果は、それ以降に発表された資料などには反映されているものと考えられます。

#しかし、奇妙なことに、この記述変更の最大の原因となったと思われる、長島さん自身の科研費の研究は全く紹介されていません。

その後に発表された「理科の探検」2015年4月号を読んでみても、確かに2009年のプレゼン資料にある「大規模な統計的研究により、血液型と性格の間に相関は見られないことが示されている」と全く同一の記述は発見できませんでした。

#もっとも、この記事でも、長島さん自身の科研費の研究は全く紹介されていません。

以上のことから、自ら科研費を使って2010~2011年度に行った「血液型性格判断」を否定するための研究は、そのサンプル数と調査年を公開するのが不都合なだけではなく、この研究の結果自体が不都合だと自ら認めていることになります。

いやはや、どうも。[たらーっ(汗)]
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