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季刊 理科の探検 2015年4月号 特集「ニセ科学を斬る!リターンズ」の間違い《続》 [理科の探検]

前回の続きです。

季刊 理科の探検 (RikaTan) 2015年 04月号

季刊 理科の探検 (RikaTan) 2015年 04月号

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 文 理
  • 発売日: 2015/02/26
  • メディア: 雑誌

この記事は―言い方は悪いのですが―極論すれば「捏造」です!
確かに「捏造」というのは穏やかな表現ではありませんし、普通なら言いすぎだと思われて私が疑われるだけ損なので、なるべく使いたくはありません。
しかし、彼は“血液型性格診断”どおりに統計データに差が出ているという事実を―意図的・確信犯的に―隠している可能性がかなり大きいようなのです。
言い換えれば、結果を「捏造」(あるいは隠蔽)していることと同じです。私の乏しい語彙では、他にうまい言葉が見当たりません。
え~っ、まさか?本当かな?と疑問を持つ読者(当然の疑問だと思います)のために、原文を引用しながら説明していきます。
というか、私もここまで意図的な「捏造」をしているとは全然考えていませんでした。ついさっき、彼の科研費の報告書を読むまでは…。[もうやだ~(悲しい顔)]

最初に、この記事の「血液型性格判断」の定義を示しておきます。
まず、血液型性格判断を定義しておきましょう。ここでは「血液型がわかれば性格がわかる」程度のこととしておきます。
この定義には少々疑問もありますが、とりあえずこれはいいことにします。[たらーっ(汗)]
では、実際にはどう調査すればいいのでしょうか? 彼によると、
血液型と性格の間に関係があるかどうかを調べる最も直接的な方法は、大勢の人々の血液型と性格を調べ、血液型ごとに特徴的な性格があるのかどうかを解析する、というものです(当たり前ですね)。
そのとおりですね。では性格の定義はどうなっているかというと、
最もシンプルな方法は、アンケートを取り、自分の性格をどうみなしているかを訊くことです[注:後述の科研費の報告書では「性格の自己申告」とあります]。
では、その結果はどうだったのか?
決定的ともいえる研究が、1991年に発表されています1)。その要点だけ紹介します。…
1) 松井豊「血液型による性格の相違に関する統計的な検討」1991、立川短大紀要、24、51-54
この研究は、私が知る限り2番目に大規模な調査であり、JNNデータバンクの1980/82/86/88年に行われた世論調査の結果を分析したものです。サンプルは毎年約3,000人なので、全体では約12,000人となっています。質問は24項目あり、4年間で統計的な有意な差を示した唯一の項目「物事にこだわらない」について、このように説明しています。
血液型性格判断によると、「物事にこだわらない」はB型的な性格だそうですが、実際にはどうだったでしょうか。…
最も「物事にこだわらない」性格となる血液型が、調査ごとに違うのです。これは、この項目の差が有意だったことが、偶然に過ぎないことを示しています。…
最も違いの大きな性格項目でこうなのですから、血液型と性格の間には関係は見られない、という結論になるわけです。
このように、彼の結論は、統計データを分析した限りでは「血液型と性格の間には関係は見られない」ということです。

しかし、その後には微妙な記述が続きます。「予言の自己成就」によって、実際の統計的な差が生まれているのではないかということなのです。予言の自己成就というのは、例えば、B型は本当は「物事にこだわらない」のではないのですが、血液型の本などで本当にそうだと思い込む現象です。結果的に、アンケート調査を行うと、本当にB型は「物事にこだわらない」という結果が出るというものです。
実は、本当にそうなっているのではないか、という調査結果があります2)3)。1980年からの10年間について調べてみると、A型の人は「世間が思うA型の性格」に段々なってきている、というのです。まだまだデータにばらつきがあり、確定的とは言えないと思いますが…。
2) 山崎賢治、坂元章「血液型ステレオタイプによる自己成就現象-全国調査の時系列分析-」1991、日本社会心理学会第32回大会発表論文集、288-291
3) 山崎賢治、坂元章「血液型ステレオタイプによる自己成就現象-全国調査の時系列分析-」1992、日本社会心理学会第33回大会発表論文集、342-345
ところが、元論文にはこうあります。
・血液型と性格の自己報告との間の相関は、弱いが認められた。
・さらに、一般の人々の性格の自己報告は、大学生の血液型ステレオタイプに合致していることがわかった。
つまり、元論文によると、血液型と性格の自己報告には、弱いが統計的には[血液型ステレオタイプ=血液型本どおりの]関係があるということです。ここで不思議なのは、1)と2)3)のデータは基本的に同じものだと彼が書いていないことでしょう。具体的には、1)はJNNデータバンクの1980/82/86/88年の4年分、2)3)は同じJNNデータバンクの1978-88年の11年分です。つまり、1)の4年分の少ないデータでは差がわからなかったものが、2)3)でデータを11年分に増やして再分析したら差が出たということになります。しかし、彼によると、なぜか、
1) 4年分のデータ→血液型と性格の間には関係は見られない
2)3) 11年分のデータ→まだまだデータにばらつきがあり、確定的とは言えない
となるようです。1)の4年分では差がないことが「確定した」ものが、なぜか2)3)で11年に増やしたらデータにばらつきあるのでので「確定的とは言えない」というのです。常識的に考えても、データを増やして結果が確定しないなら、1)の「血液型と性格の間には関係は見られない」という結果も「確定的とは言えない」となるはずです。皆さんも不思議に思いませんか?[がく~(落胆した顔)]

他にも、彼の説明用の資料を見ると「誤差」がなぜ「σ」になるのか不思議なのですが、長くなるのでここでは省略します。誤差の計算をするなら、普通は「信頼区間」を使うので、信頼度95%なら±1.96σになるはずなのですが…。ひょっとして、天文学では誤差はσとしているようなので、それをそのまま使っているのでしょうか?[たらーっ(汗)]
【追記】
なお、誤差を計算してみると、1)の文献の結果は、安定して差が出ていると考えても不都合はありません。これは、2)3)の「血液型と性格の自己報告との間の相関は、弱いが認められた」、そして後述の彼の科研費の研究結果「安定して血液型ごとに性格の自己申告について有意な差が出る」とも一致しています。
■彼の計算→“誤差”は1%程度
大雑把に言うと、誤差は1%程度
  標準偏差σ≒√N≒100 (N: データの個数)
  誤差:σ/N≒0.01=1%
  (100人→10%、1万人→1%、100万人→0.1%)
[http://phys.koshigaya.bunkyo.ac.jp/~masa/lecture/pseudoscience/slide130417.pdf]
[http://naosite.lb.nagasaki-u.ac.jp/dspace/bitstream/10069/22932/2/nagasama_slide091102.pdf]
■本来の計算→誤差は数%
サンプル数が1回につき約3,000ですから、1つの血液型ではその1/4となって約750になります。このデータは、0と1との2つの値を取る2項分布ですから、平均を0.5と仮定して計算してみると、標準偏差は概算で√0.5×0.5÷750=0.0183です。ですから、データの誤差は信頼度95%では0.0183×1.96≒0.0359になりますね。となると、平均すると3.6%程度の誤差があることに…。ただ、これはあくまで平均からの誤差ですから、実際にはプラス側とマイナス側で倍の7.2%程度という結果を得ることができました。あれ?、これだけサンプル数が多くても、結構な誤差があるものですね。
[http://www010.upp.so-net.ne.jp/abofan/matsui.htm]
以上を総括すると、たとえ彼の説明に少々奇妙な点があっても、意図的な「捏造」という感じはしません。単なる解釈の違いだろうと感じていました。彼の科研費の報告を読むまでは…。

どうやら、彼は“血液型性格診断”どおりに統計データに差が出ているという事実を―意図的・確信犯的に―隠していたようなのです![ちっ(怒った顔)]
次が問題の研究報告書[本]です。

科学研究費助成事業(科学研究費補助金)研究成果報告書
教員養成課程における科学リテラシー構築に向けた疑似科学の実証的批判的研究
A demonstrative and critical study on pseudo-science for scientific literacy construction at teacher education course
2010年度~2011年度
代表者 武藤 浩二 MUTO, Cosy
研究分担者 長島 雅裕 MASAHIRO, Nagashima
[https://kaken.nii.ac.jp/d/p/22650191.ja.html]
[https://kaken.nii.ac.jp/pdf/2011/seika/C-19/17301/22650191seika.pdf]
《研究概要》
本研究では、疑似科学が用いられた学校教育の実態等を調査するとともに、最近の大規模調査データを用いた血液型と性格に関する解析を行った。…また血液型と性格に関する解析では、過去の研究結果を拡張することができたとともに、21世紀以降のデータでは、安定して血液型ごとに性格の自己申告について有意な差が出ることが判明した。
驚くべきことに、この報告書では「21世紀以降のデータでは、安定して血液型ごとに性格の自己申告について有意な差が出ることが判明した。」と断定しているのです。彼は分担研究者ですから、この研究は実質的には彼が中心となって行ったと考えるべきでしょう。
こうなると、2)3)でデータを11年分に増やして再分析したら差が出たと書かなかったのは、単なる解釈の違いでなく意図的に隠した、と考えるしかありません。更に奇妙なのは、2)3)のデータは基本的に1)と同じで単純に年数を増やしたもの、という説明が記事中に一切ないことです。これも、スペースの関係で省略したのではなく、おそらくこれも意図的に隠したのでしょう。なぜなら、この記事はA4判で丸々6ページもあるので、データの説明を書くぐらいのスペースは十分確保されているからです…。[ちっ(怒った顔)]

実に驚きました。だから「疑似科学批判」はダメなんだ…といった、多くの人の実感を裏付ける結果になってしまい、私としても非常に残念というしかありません。[ふらふら]
私のこの推測が本当でないことを祈るばかりです。
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腸心理学

先月NHK特集で腸内細菌叢についてやってました
マウスの腸内細菌を入れ替えると性格も入れ替わるという話がでてきました
A型とB型の腸内細菌を入れ替えると性格が入れ替わるのでしょうか?
性格が腸内細菌に影響されるなら血液型ごとに腸内細菌叢に違いがあるのかもしれません
腸内細菌叢は免疫によって違いがあるはずです
血液型によって免疫力に差があったはずですよね?
血液型と腸内細菌いろいろ関連があるのではないかと思っています
by 腸心理学 (2015-03-10 16:21) 

ABOFAN

おっしゃるとおりです。この話は、「血液型ヨーグルト」で知られる東北大の齋藤先生が詳しいです。細菌も、血液型別によって差があるとのことです。もっとも、日本人に2割ぐらいいる非分泌型の人は、胃腸に血液型物質が分泌されないので、どうなるんでしょうかね?
by ABOFAN (2015-03-11 00:00) 

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