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村上宣寛さん『性格のパワー』(続き) [新刊情報]


性格のパワー 世界最先端の心理学研究でここまで解明された

性格のパワー 世界最先端の心理学研究でここまで解明された

  • 作者: 村上宣寛
  • 出版社/メーカー: 日経BP社
  • 発売日: 2011/06/16
  • メディア: 単行本


前回のエントリー
[http://abofan.blog.so-net.ne.jp/2011-08-14]
に続いて、血液型の部分を取り上げます。
ではでは。[ダッシュ(走り出すさま)]

で、この本の書評に、タイトルに反して、前著より大幅にパワーダウン(笑)というのがあります。
逆に、性格心理学の入門書としては、良書といえるでしょう。
[http://finalvent.cocolog-nifty.com/fareastblog/2011/07/post-41be.html]

ちなみに、血液型人間学に関しても、大幅にパワーダウンしています。[たらーっ(汗)]
血液型の発見の歴史や、古川学説はそれなりに説明していますが、能見さんの「血液型人間学」に直接言及しているのは、第2章の次の部分だけです。
その後、古川学説の追試が次々に行われたが、否定的結果が多かった。そして、1933年の日本法医学界総会で古川学説は正式に否定された。
この古川学説を焼き直して大衆書の形で蘇らせたのが能見正比古で、その息子の能見俊賢が跡継ぎである。もちろん、血液型と性格の関連性を実証するデータは1つもない。詳しくは、村上宣寛『心理テストはウソでした』(講談社+α文庫、2008年)を見ていただきたい。(p47 血液型人間学の登場)
この文章は少々おかしいです。というのは、「1933年の日本法医学界総会で古川学説は正式に否定された。」のは事実ですが、調べてみると当時の心理学会では必ずしも否定されていません。そんなことは、村上宣寛さんならよくご存じのはずで、なぜ「しかし、心理学会では必ずしも否定されていません」と書かなかったのか、サッパリわかりません。
ちなみに、当時の心理学の文献で(私が調べた限り、独自の研究でかつある程度の分量があるもののうち、1ページ以下とか、レビューのみのものは除くと)学術誌に掲載されたのは、6件だけです。古川さん自身のものを除くと4件ですから、正味は4件ということになります。
この4件ですが、賛成は2件、反対は2件となります。

古川説の再検討
[http://www010.upp.so-net.ne.jp/abofan/furukawa.htm]

これでは、どう見ても、否定されたとはいえないでしょう。
まさかとは思いますが、調査していないということなのでしょうか?
これまた、ちょっと考えられないことですが…。
戦前の日本法医学会から否定されたが、心理学会では必ずしも否定されなかったなら、はたして「古川学説は正式に否定された。」と言えるのかどうかは、常識的に考えて、かなり疑問です。
それに、当時は今のような統計的検定はありませんから、少なくとも「統計的に否定された」というのなら、明らかにウソです。
はて?


また、「もちろん、血液型と性格の関連性を実証するデータは1つもない。」とありますが、これはウソです。念のため、最後の参考文献のリストを見てみると、案の定、最近の心理学の論文はチェックしていないようです。

私の調べた論文のリストはこちらです。
心理学の定説が180度変わった!(結論2009年版)
[http://abofan.blog.so-net.ne.jp/2009-10-25]

つまり、明らかに調査モレだということになります。
本当に大丈夫なんでしょうか?

次にも、意味不明の記述が続きます。
血液型人間学も明白な事実、血液に四つの型があるという事実から出発した。四つの型という点では古代の四気質論と対応付けが可能なので、思弁的に対応付けが行われた。その後、血液には無限に近い数多くの型が存在することがわかったが、四つの型の解釈仮説の修正は困難なので、既存の解釈にさまざまに追加する形での修正が行われた。もちろん、解釈の正しさについて、現実のデータで検証が行われたわけではない。(p49 類型論の否定と肯定)

この文章には、参考文献が紹介されていないので、チェックしようがありません。[むかっ(怒り)]
私が知る限り、「四つの型という点では古代の四気質論と対応付けが可能なので、思弁的に対応付けが行われた。」という事実はありません。
それどころか、事実は全く逆です。ここは、血液型人間学のパイオニア、能見さん自身の要約でお届けしましょう(能見正比古 O型は人間は権力志向型なんだって-血液型性格学 別冊宝島6 『性格の本-もうひとりの自分に出会うためのマニュアル』 宝島社 S52.8)。
最大の原因は、従来の常識的性格観に、 とらわれすぎたせいである。人々はすぐ性格に類型をつくりたがる。私も、O型はこれこれのタイプ……という決め方をしようと焦っていた。そんな類型をつくり得るほど、性格の本質は、とらえられていないのである。さらに日常に使われる性格用語を、それぞれの血液型にあてはめようとしては、失敗した。性格をあらわす言葉と思われているのは、じつは、表面に出た見た目の行動の断片をいうにすぎないものが多い。見た目が静かだったり考えこんだりしていろと内向的、大声で笑ったり騒いだりすると、外向的だなどという、大ざっぱなものが多いのだ。昼寝をしている姿を見て、ライオンは、おとなしい性格というようなものである。
また、こんな記述もあります。
類推結果の妥当性(正しさ)に注意を払わないのが疑似科学の特徴である。体液が三種類あるから気質も三種類あるとはいえないし、ABO式で血液型を四種類に分けたとしても、性格が四種類あるわけではない。(p49-50 類型論の否定と肯定)
村上さんは、いったいどんな血液型本を読んだのでしょうか?

次に行きます。
知識の汚染
被験者が調査目的についての知識を持っている場合、その知識が調査結果をゆがめる現象がある。例えば、メイオウらが占星術の大規模な調査研究を行ったところ、得点差は小さかったが外向性について占星術の予測と一致した。ところが、アイゼンクは占星術の知識がほとんどない子供を調査対象者にして大規模調査を行ったところ、星座と性格との関係は否定された。筆者も血液型人間学の調査を行った時には、調査目的を悟られないように配慮した。この種の配慮は不可欠である。(p51)
なぜか、別の項目で、同じような説明もあります。
サンプル・バイアス
母集団の性質をよく代表するように均等にサンプリングする必要がある。理想はランダム・サンプリングである…血液型人間学の提唱者、能見正比古は『血液型でわかる相性』の読者アンケートを使ったという。読者アンケートは、血液型人間学に興味をもち、知識を吸収し、共感を覚えた人たちだけが返送するし、興味のない人は返送しない。だから、読者アンケートには最初から大きなバイアスが入っている。(p53)
要するに、「血液型人間学」の知識を持っている人を調査すれば、血液型人間学のとおりに結果が出るということでしょう。実際にも、そんな結果が出ています。

山岡重行さん 血液型性格判断の差別性と虚構性 
[http://abofan.blog.so-net.ne.jp/2009-12-14]

山岡さんの推測では、「血液型人間学に興味をもち、知識を吸収し、共感を覚えた人たち」はどのぐらいいるかというと、全体の60%以上です。[わーい(嬉しい顔)]
ということは、いくら村上さんが「血液型人間学の調査を行った時には、調査目的を悟られないように配慮した」としても、現実的に、この60%以上のサンプルを排除するのは不可能ということになります。実際、私が知る限り、村上さんはそんなことはしていません。
また、ランダム・サンプリングをすれば、この「血液型人間学に興味をもち、知識を吸収し、共感を覚えた人たち」がサンプルにいるので、山岡さんが実証したとおり、全体のデータなら必ず差が出ることになります。
要するに、心理学者のデータは、必ず血液型人間学のとおりに結果が出るということです。[ひらめき]
繰り返しになりますが、実際にそんなデータが、最近の心理学の論文には報告されています。

心理学の定説が180度変わった!(結論2009年版)
[http://abofan.blog.so-net.ne.jp/2009-10-25]

ですから、
もちろん、血液型と性格の関連性を実証するデータは1つもない。詳しくは、村上宣寛『心理テストはウソでした』(講談社+α文庫、2008年)を見ていただきたい。(p47 血液型人間学の登場)
は明らかにウソということになります。[パンチ]
この点は、以前に『心理テストはウソでした』のときに質問したのですが、明確な回答はいただけませんでした。
[http://www010.upp.so-net.ne.jp/abofan/murakami.htm]

ちなみに、この本の執筆で村上さんが「利用した文献[本]の厚みは1メーター弱の高さになった(はじめに p2)」とのことです(素晴らしい!)が、残念ながら私が今まで紹介した文献を読んでいる形跡はありません。

やはり血液型を否定するのは相当厳しいようですね…。[たらーっ(汗)]

ちなみに、私が血液型で読んだ文献[眼鏡]は、最低数メートル、たぶん10メートル以上はあると思います。
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